花巻

私の機嫌は最高潮に悪い。
この季節は気圧の関係で頭痛が止まらない上に、今日はおまけの女の子デーときた。なにそれ辛い嬉しくない。お腹を抱えて机に突っ伏して不機嫌丸出しで休み時間を過ごしてる。
友達はわかってくれるからほっといてくれるけど、隣の席のアホはそうもいかない。

「お前今日の目付きヤバいけど」
「知ってる」
「なんかあったのか?」
「ちょっと黙って私今日ムリ」

目付きがヤバいことも機嫌がヤバいことも自覚してるから今更言わなくていいよ。そんなこと言われても逆にイライラする。

「…なに」

不意に頭に重さを感じた。
それが手であることは明らかで、ついでにその手が花巻の手であることも明らか。

「いや、マジで辛そうだからさ、なんかできねぇかなと思って」

アホだけど、花巻は嫌なやつじゃない。あと悪いやつでもない。

「…言いづらかったらいいけどさ、アレだったりする?」

悪いやつではないけど、やなやつだった。

「そうだよ」

なんで当ててくるんだよ。花巻はデリカシーないな。男子はみんなそんなもんなのか?

「暖めた方がいいんだろ?保健室は?」
「蒸し暑いのに湯たんぽとか抱えたくない」
「でも辛いよりいいだろ」
「汗かきたくない」
「イマサラ」
「うるさい」

こんなやつなのに頭を撫でる手がやたら優しくて、つい話をしてしまう。

「どんくらい痛いの?」
「人によるけど、私はそんなに酷くないよ。今回は偶然酷いけど」
「へー。よく動けねぇって聞くけど」
「みんながそうだったら、クラスの女子は平均して月に3日くらい休んでることになるよ」
「そうなんだ」

平均とか適当だけど、本当に酷いならたぶんそうなるんじゃないかな。もしそうなったら、なかなか女子のこと覚えられなさそう。

「私は普段が軽いから、急にこうなるとダメなんだよね。ホント無理。やだ。死にたくなる」
「生き残るために痛いのに死にたくなるとか」
「ウケるよね」

あーもー。内臓が動いてる。痛い。でも花巻と話してる方が気が紛れる。

「ねぇ花巻」
「うん?」
「私花巻に撫でられんの嫌いじゃないかも」
「そりゃドーモ」

手が大きいからかな。
そもそも撫でるのめっちゃうまい。加減が絶妙。花巻の意外な特技発見した気分。

あ、ちょっと眠くなってきた。

「なぁ」
「んー?」
「また撫でて欲しかったら俺に言えよ?いくらでも撫でてやるからさ」

なんだそれ。子供じゃないんだから、撫でてほしいときなんてないって。

「ふふ、うん。その時は花巻に言うね」

でも花巻に撫でられるのは嫌いじゃないから、また辛いときはお願いしようかな。

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