福永

「しょうちゃん!七夕祭り行こう!」

無口なしょうちゃんは動作だけで肯定してくれた。

「しょうちゃん部活だよね。終わる頃お迎えに来るね。私あれ食べたいんだ、ラムネ屋さんにある砂糖菓子」

お喋りな私と正反対なしょうちゃんはよりいっそう無口に見えるらしい。よく「福永にも話させてやれ」なんて言われるけど、私がずっと喋ってる訳じゃない。そこは勘違いしないでほしいんだね。

「あ!あとさ、見た?」

これだけでなんのことかわかってくれるしょうちゃんは、頷いた後指を3本立てた。

「えー、私5番目が好きだった」

解説すると、お笑い番組のこと。
人と笑いのツボがずれてるから、ほとんどの人とは話が合わない。だけどしょうちゃんは私がどうしてそれを面白いと思ったのかわかってくれるからすごい。伊達にお笑い好きじゃないってやつだと思う。

「練習はいつもと同じくらいに終わるよね。図書室で本読んでるね」

部活でもあんまり目立たないけど、しょうちゃんは部活が楽しくて仕方ないんだと思う。たまに思い出し笑いしてるから絶対そう。何が面白かったのか教えてくれればいいのに、教えてくれないんだよね。
ああ、でも

「やっぱりしょうちゃんはすごいよね!私好きだなー」

バレー部の人達はしょうちゃんのことをちゃんとわかってくれてるから、私も安心して応援できる。試合の時よく応援に来てる女の子とも仲良くなった。

「鳴子」
「!なに!しょうちゃん!」

しょうちゃんから話しかけられるのはひさしぶりで、名前を呼ばれるなんてもっとひさしぶり。つい叫ぶように返事をしてしまったけど、しょうちゃんは気にしないだろう。

「そう言うことは、言ったらダメ」

なんのことかわからなくて首をかしげた。
私何を言った?

「俺は鳴子のそういうところ知ってるからいいけど、他のやつは勘違いする」
「何を?」
「好きって、簡単に言ったらダメ」

それか!

「誰にでも言ったりしてないよ!」
「それでもダメ」
「えー!」

なんでダメなの!

「私しょうちゃんにしか言わないよ」
「…それでいいけど、あんまり言ったらダメ」

そればっかり!しょうちゃんは意味わかってないんだ!絶対そうだ。

「七夕、なにお願いする?」

バレーのことかな?それともお笑いのことかな。あ、受験もあるから勉強のことかも。

「鳴子は?」

ちょっと考えたあと、しょうちゃんは私を見た。思い付かなかったのかな?

「ナイショ!」

私は教えられない。だって織姫と彦星には、しょうちゃんにちゃんと伝わりますようにってお願いするんだから。

「じゃあ俺も内緒」
「うーん、仕方ないかぁ」

しょうちゃんにだけ言わせるのもずるいもんね。仕方ない。

「危ないから、あんまり早く来ないで、明るい所で待ってて」
「うん!」

しょうちゃん待ってる間、アプリで星座がどこに見えるか調べとこーっと。

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