花巻
「みてみて」
デジカメから見えるのは、今目の前にある景色。
「いいんじゃね?」
「花巻は?」
「俺?」
俺は携帯で少し撮るくらいだから、柏手が俺の手元を覗き込む。
「あ、これもいい」
学校でいる時よりも近い距離に、正直いろいろ考えるわけですよ。俺だってオトコノコですし?
そんなこと柏手は思い付くことも気付くこともなくあっさり離れていくんだけど。
くそ。何がとは言わねぇけど、俺ばっかりみたいで腹立つ。
「花巻、ホタルブクロ探そう!」
「どんなやつだっけ?」
「下向きにちょんちょんって咲いてるやつ」
「わかんねーよ」
「え、わかるべ」
なんとなく頭のなかにそれらしいやつは出てきたけどは果たしてこれであってるのか。
「あ、」
柏手はまたなにか見つけたらしく、またデジカメを構えた。
つーかあちい。毎年なんでこう飽きることなく暑いんだか。そんで柏手もなんでそんなに写真が好きなのか。そんなこと言ったら「なんでバレー好きなの」とか聞かれそうだから聞かねぇけど。
青葉山の向こうにはデカい入道雲がある。
それがなんとなく夏っぽいと思って携帯を構えた。
「花巻ー置いてくよー!」
「置いてくんじゃねーよ」
1枚撮って携帯をポケットに突っ込むと、いつの間にか小さくなってる柏手と距離を積めた。
「お前勝手に進んでいくなや」
「突っ立ってる花巻が悪いんじゃない?」
「いや、俺悪くねーべ」
「バレたか」
「バレるわ」
柏手の使い古されたデジカメは、よく見れば所々塗装が剥げてる。それが目立たないのはシルバーの塗装だからだろう。
いつだったか他に色がなかったのか聞いたことがある。柏手は当たり前のように色なんてなんでもいいとか言ってたかな。
「お前たまにここ来たがるよな」
「うん」
「なんかあったか」
「んや、今日はなんとなく。高校最後の思い出作り」
「最後って、」
最後と言うには早すぎる。まだ文化祭もあるし、他のイベントだってあるだろ。
「最後だよ。だって春高行くんだよね」
言われて血が冷えた気がした。
最後ってなんだよ。
「別れねぇぞ」
「は?」
俺はこれで最後にするつもりなんてこれっぽっちもない。
「春高行くけど、お前とも別れねぇからな」
「え、ちょっと待って。なんでそうなったの?」
「だから最後とか言うなや」
こっちは結構ガチで言ってるのに、柏手は吹き出しやがった。
「なにが面白いんだよ」
「いや、花巻勘違い」
「は?」
だってお前最後って言ったべ。なにが勘違いなんだよ。
「休みは全部部活につぎ込むでしょ?だからこうして出掛けられるのは最後かなぁって思ったの」
なんだよ、それ。
「おま、マジ焦らせんなやー」
「私もびっくりしたから。急に別れるとかなんとか言い出すんだもん」
「俺は別れねぇっつったの」
「そうですねぇ。私もそんなこと言ってないけどね」
「そうだな」
あーくそ、早とちりとかダセェ。
「とにかくさ、花巻はバレーちゃんと勝っておいでね」
「おう」
「先のことなんてそれから考えよう」
先のこと。そんなの全然見えねぇけど、柏手との未来があるようにって考えてるんだからそれで充分なのか?
「なぁ」
「なに?」
「時間作るからさ、その時はデートしてもいいべ?」
「やだ」
「は?なんでだよ」
「それで負けたらやだ」
「言い訳にしねぇよ」
「私がやだからやだ」
なんなんだよ。あんなむっさい中にいたら彼女に会いたくなるに決まってるだろ。
「あ、じゃあこれならいいだろ?」
「どれ?」
「名前で呼んでくんね?」
「花巻?」
「じゃなくて、名前」
「…え、なんで」
「付き合ってんだからいいべ」
「だって、今更だべ」
なんだ、恥ずかしがってるのか?
「な、鳴子」
「いいけど、急じゃない?」
「逆に遅すぎなくらいだろ。松川なんてその日のうちだったべ」
「あそこは特殊じゃない?」
「あー、そうかも…じゃない。名前」
「そらせなかったか」
そらそうとしてやがったのか。んなこと簡単にさせるかよ。
「ほら、呼んでみろよ」
「…いっせー」
「今松川いいから!」
つーか俺より松川が先かよ!
「た、たかひろ」
名前なんて初めて呼ばれたからか、グッとくるものがある。松川お前すげぇな。
「ま、まぁいいんじゃね?」
「なにそれ!もう呼ばない!」
「は?!これからは名前で呼べよ!」
「やだ!春高で勝たなきゃ呼ばない!」
ほー。言ったな?
「覚えとけよ?ぜってー勝って名前で呼ばせるからな」
「覚えてるからせいぜい勝ってきなさいよ」
勝ったら名前呼びプラス慣れなくて恥ずかしがる柏手とか最高かよ。これで勝てないとかふざけろよって話しだ。
「それまで名前呼びの練習しとけよ」
「上等」
明日からまた練習するか。
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「みてみて」
デジカメから見えるのは、今目の前にある景色。
「いいんじゃね?」
「花巻は?」
「俺?」
俺は携帯で少し撮るくらいだから、柏手が俺の手元を覗き込む。
「あ、これもいい」
学校でいる時よりも近い距離に、正直いろいろ考えるわけですよ。俺だってオトコノコですし?
そんなこと柏手は思い付くことも気付くこともなくあっさり離れていくんだけど。
くそ。何がとは言わねぇけど、俺ばっかりみたいで腹立つ。
「花巻、ホタルブクロ探そう!」
「どんなやつだっけ?」
「下向きにちょんちょんって咲いてるやつ」
「わかんねーよ」
「え、わかるべ」
なんとなく頭のなかにそれらしいやつは出てきたけどは果たしてこれであってるのか。
「あ、」
柏手はまたなにか見つけたらしく、またデジカメを構えた。
つーかあちい。毎年なんでこう飽きることなく暑いんだか。そんで柏手もなんでそんなに写真が好きなのか。そんなこと言ったら「なんでバレー好きなの」とか聞かれそうだから聞かねぇけど。
青葉山の向こうにはデカい入道雲がある。
それがなんとなく夏っぽいと思って携帯を構えた。
「花巻ー置いてくよー!」
「置いてくんじゃねーよ」
1枚撮って携帯をポケットに突っ込むと、いつの間にか小さくなってる柏手と距離を積めた。
「お前勝手に進んでいくなや」
「突っ立ってる花巻が悪いんじゃない?」
「いや、俺悪くねーべ」
「バレたか」
「バレるわ」
柏手の使い古されたデジカメは、よく見れば所々塗装が剥げてる。それが目立たないのはシルバーの塗装だからだろう。
いつだったか他に色がなかったのか聞いたことがある。柏手は当たり前のように色なんてなんでもいいとか言ってたかな。
「お前たまにここ来たがるよな」
「うん」
「なんかあったか」
「んや、今日はなんとなく。高校最後の思い出作り」
「最後って、」
最後と言うには早すぎる。まだ文化祭もあるし、他のイベントだってあるだろ。
「最後だよ。だって春高行くんだよね」
言われて血が冷えた気がした。
最後ってなんだよ。
「別れねぇぞ」
「は?」
俺はこれで最後にするつもりなんてこれっぽっちもない。
「春高行くけど、お前とも別れねぇからな」
「え、ちょっと待って。なんでそうなったの?」
「だから最後とか言うなや」
こっちは結構ガチで言ってるのに、柏手は吹き出しやがった。
「なにが面白いんだよ」
「いや、花巻勘違い」
「は?」
だってお前最後って言ったべ。なにが勘違いなんだよ。
「休みは全部部活につぎ込むでしょ?だからこうして出掛けられるのは最後かなぁって思ったの」
なんだよ、それ。
「おま、マジ焦らせんなやー」
「私もびっくりしたから。急に別れるとかなんとか言い出すんだもん」
「俺は別れねぇっつったの」
「そうですねぇ。私もそんなこと言ってないけどね」
「そうだな」
あーくそ、早とちりとかダセェ。
「とにかくさ、花巻はバレーちゃんと勝っておいでね」
「おう」
「先のことなんてそれから考えよう」
先のこと。そんなの全然見えねぇけど、柏手との未来があるようにって考えてるんだからそれで充分なのか?
「なぁ」
「なに?」
「時間作るからさ、その時はデートしてもいいべ?」
「やだ」
「は?なんでだよ」
「それで負けたらやだ」
「言い訳にしねぇよ」
「私がやだからやだ」
なんなんだよ。あんなむっさい中にいたら彼女に会いたくなるに決まってるだろ。
「あ、じゃあこれならいいだろ?」
「どれ?」
「名前で呼んでくんね?」
「花巻?」
「じゃなくて、名前」
「…え、なんで」
「付き合ってんだからいいべ」
「だって、今更だべ」
なんだ、恥ずかしがってるのか?
「な、鳴子」
「いいけど、急じゃない?」
「逆に遅すぎなくらいだろ。松川なんてその日のうちだったべ」
「あそこは特殊じゃない?」
「あー、そうかも…じゃない。名前」
「そらせなかったか」
そらそうとしてやがったのか。んなこと簡単にさせるかよ。
「ほら、呼んでみろよ」
「…いっせー」
「今松川いいから!」
つーか俺より松川が先かよ!
「た、たかひろ」
名前なんて初めて呼ばれたからか、グッとくるものがある。松川お前すげぇな。
「ま、まぁいいんじゃね?」
「なにそれ!もう呼ばない!」
「は?!これからは名前で呼べよ!」
「やだ!春高で勝たなきゃ呼ばない!」
ほー。言ったな?
「覚えとけよ?ぜってー勝って名前で呼ばせるからな」
「覚えてるからせいぜい勝ってきなさいよ」
勝ったら名前呼びプラス慣れなくて恥ずかしがる柏手とか最高かよ。これで勝てないとかふざけろよって話しだ。
「それまで名前呼びの練習しとけよ」
「上等」
明日からまた練習するか。