川西

「わー!ごめん!お待たせー!」

待ち合わせ場所にはすでに川西が待ってた。

「なに?走ったの?」
「そりゃあ走るよ!川西の貴重な休みをもらったのにバス乗りそこねて遅刻してるんだから」
「別に気にしなくていいのに」
「いや、するから」

走ったから暑い。普段から化粧なんてしないから崩れるものはなにもないけど。

「体力ないくせになにやってんだよ」
「うるさいなぁ」
「ほら、落ち着いたら行くべ」

しっかし、川西スタイルいいからフッツーの服でイケメン風になるからすごいわ。イケメンではないけど。
うちの学年でイケメンって言ったら白布くんになるのかな。あんまりよく知らないけど。

「なに?なんか変?」

しまった、ついガン見してたか。

「いや。なんにも変じゃない」
「ならいいけど」
「よし!行けるよ」
「じゃー行くか」

そう。今日は映画を見るために駅まで出てきたんだ。
今日の目当ては人気アニメの実写化。実写化なんて大事故しか起きないことが多いけど、これは大丈夫だろうと踏んでる。推しキャラがどうとか言うのは諦めて、今回は作風重視で見ることにしたから。
だって2次元は3次元にはなりえないから。

「実写化はマジ勘弁してほしいけどさ、監督があの人なんでしょ?」
「そうそう。キャストもいつもの人引っ張ってきてるし、全力でふざけるから作風としては崩れないと思う」
「でもなぁ、身長がさ」
「そこは仕方なくねぇ?」
「いっそバレー部でやる?」
「逆にデカすぎるだろ」
「それもそうだ」

川西もかなり高い。180超えてるよね?白布くんもそれくらいあるのかな?

「女子って映画とか友達と見たいもんじゃねぇの?」
「友達は実写マジ無理って。つーか川西は友達じゃないの?」
「お?俺友達?」
「友達でしょ」
「マジか」
「なに?不満?」
「いや、全然」

なにそれ。納得はしてない感じの返事なんだけど。まぁいいけど。川西になに思われても気にしないけど。

「あ、席空いてるかな?」
「もう取ってある」
「準備よくない?」
「それだけ楽しみにしてたってこと」

私も楽しみではあったけど、映画って予約とれたんだ。そもそもそこを知らなかった。

「おいくら?」
「あー…いや、いいや」
「よくないよ。そこはちゃんとしないと」
「じゃあ差し入れ持って応援来てよ」
「そんなのでいいの?」
「いいの」

んん?それって川西が損してるんじゃない?

「あちーし早く行くぞー」
「あ、うん」

まぁいいや。後でちゃんと考えよう。

「うあー、涼しー」

映画館に入った瞬間の冷房に癒された。
女子っぽくないのはわかってる。でもほら、川西だって同じ感じだし、大丈夫大丈夫。

「なんか食う?」
「私見ながら食べられないんだよね」
「隣で食ってても大丈夫?」
「うん」

あ、飲み物は買おう。
CMでも言ってるけど、夏は意識して水分とらなきゃだからね。

「川西、お会計一緒でよろしく」
「なんか買うのか?」
「うん、ジュース欲しい」
「お前走ってたもんな」
「そうそう」

小銭を川西に渡すと、なんか微妙な顔された。なんで?

「パンフ買う派?」
「今回は検討する」

気に入るようなことがもしもあれば、もう1回見ればいいし。その時に買っても遅くはない。

「入る?」
「うん」

どうやらなかなか見やすいところをとってくれたらしく、見るにはあんまり疲れないけど、川西の身長でここって大丈夫?後ろの人が見えないとかない?
そう思って見れば「姿勢悪いから」なんて返事が返ってくる。
…それはそれでよくないと思う。

夏の乳酸菌飲料に癒されながら周りの声を聞いていたら、川西から声がかけられた。

「この際だから言っておくけど」
「んー?」
「俺、柏手のこと友達だと思ったこと1回もないから」

…なんと。だからさっき微妙な反応だったのか。

「今日だってデートのつもりできてるから」

…あれ?

「柏手はそんなつもりじゃないってわかってるけどさ、やっぱり期待とかするわけなんですよ。そんなカワイーかっこで?遅れてるからって急いでくれて?」

ちょっとまって。情報過多なんだけど。

「自惚れるのはキツいからさ、宣言しとくわ」
「かわに」
「俺、お前のこと好きだから」

まるでタイミングを計ったように暗くなり、返事はできず。
この状況で返事なんて考えてもなかったけど。だってそんなの知らなかったし、そんなこと言われたら映画どころじゃないんだけど。あと映画館ってこんなに隣と席近かったっけ?川西がデカいからそう感じるだけ?

今わかってるのは、映画の内容なんて少しも頭に入らないだろうなってことと、映画終わったらどうしようってことだけ。

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