夜久
「あれ?」
分かりやすい疑問系の声が聞こえて、ほとんど無意識に視線が流れた。
「あ、夜久じゃん」
「やっぱり柏手かっ」
視界に入ったのは中学の時の同級生だった。
気さくで友達が多かった夜久とは、ものすごい仲が良かったわけではないけどそれなりに話していた。私側の気持ちなんて誰も知らないことだけど。
「柏手の学校ってこっちの方だっけ?」
それでもお互いの進路はまったく知らない。
私は男子の進路なんて誰1人として聞いてないから当然なんだけどね。
「俺音駒なんだけど」
「え、隣じゃん」
「マジで?」
まさか隣の高校にいたとは思わなかった。
距離では音駒がよかったんだけど、進路の決め手は制服だった。ダークグリーンのチェックスカートがかわいかったんだもん。あとリボンが緑な所が気に入ってる。
「家もそんな遠くなかったよな?」
「あー、そうだったかも」
ぶっちゃけ夜久の家がどこかなんてほとんど覚えてない。でも、中学の学区内だからそう遠くないはずと検討をつけての返事だ。
「よく今まで会わなかったなー」
「ね。もう3年の秋だよ?」
「この道通学で使ってるの?」
「普段使ってないかな。最寄りまでの道じゃないし」
「なるほど。最寄りが違ったら会わないか」
「それに私バイトしてたからね」
「どこで?つーか部活は?」
「この通りにあるカフェ。高校では部活やってない」
「そうか」
部活はもういいかなって。いっぱい頑張ったのも、悔しかったのも、楽しかったのと一緒に仕舞っておく。
「部活辞めてたんだな」
「女子高生らしくしたかったから」
「部活やってると遊ぶ暇もないしな」
「バイトしてたからあんまり変わんなかったよ」
「まだ続けてるのか?」
「や、受験があるから春に辞めたんだ。今日はちょっと息抜きに寄ってたの」
「へぇー」
たいして仲良くもない中学の同級生を心配できるなんてすごいと思う。普段からそんなに心配ばっかりしてないよね?禿げちゃうんじゃない?
「そういえば夜久ジャージなんだね」
「部活あったからな」
「え、引退してないの?」
「最後の大会が1月にあるんだ」
なにそれ。
「あの、言っちゃ悪いのかもしれないけど、受験…」
「大丈夫だって!」
「そう…」
私だったら絶対ムリ。そんなギリギリまで部活と受験の両立なんてできっこない。
「それよりさ、もうすぐ文化祭だろ?」
「うん」
「音駒の文化祭呼ぶから」
「へ?うん」
友達もいるし行こうかとは思ってたけど、まさか夜久に呼ばれると思わなかった。
「あ!アドレス教えろよ!」
「え?ああ」
今時アプリのID交換なのに交換したのはアドレスと電話番号。これにどれ程の意味があるのかは、あまり考えたくない。
「文化祭近くなったら連絡するな」
「うん」
これは、考えたらダメなやつな気がする。いや!それこそダメなやつなの?深読みしすぎるのは自意識過剰だよね、うん、止めよう。久しぶりに会ったからとりあえず交換するアレだよね。
「じゃあちょっと買うもんあるから」
「あ、じゃあまた」
「おうっまたな」
そう思いたいのに、夜久の表情をみると勘違いしそうになる。もうやめたのに、思い出しそうになる。
もう1回、ちゃんと仕舞わないと…
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「あれ?」
分かりやすい疑問系の声が聞こえて、ほとんど無意識に視線が流れた。
「あ、夜久じゃん」
「やっぱり柏手かっ」
視界に入ったのは中学の時の同級生だった。
気さくで友達が多かった夜久とは、ものすごい仲が良かったわけではないけどそれなりに話していた。私側の気持ちなんて誰も知らないことだけど。
「柏手の学校ってこっちの方だっけ?」
それでもお互いの進路はまったく知らない。
私は男子の進路なんて誰1人として聞いてないから当然なんだけどね。
「俺音駒なんだけど」
「え、隣じゃん」
「マジで?」
まさか隣の高校にいたとは思わなかった。
距離では音駒がよかったんだけど、進路の決め手は制服だった。ダークグリーンのチェックスカートがかわいかったんだもん。あとリボンが緑な所が気に入ってる。
「家もそんな遠くなかったよな?」
「あー、そうだったかも」
ぶっちゃけ夜久の家がどこかなんてほとんど覚えてない。でも、中学の学区内だからそう遠くないはずと検討をつけての返事だ。
「よく今まで会わなかったなー」
「ね。もう3年の秋だよ?」
「この道通学で使ってるの?」
「普段使ってないかな。最寄りまでの道じゃないし」
「なるほど。最寄りが違ったら会わないか」
「それに私バイトしてたからね」
「どこで?つーか部活は?」
「この通りにあるカフェ。高校では部活やってない」
「そうか」
部活はもういいかなって。いっぱい頑張ったのも、悔しかったのも、楽しかったのと一緒に仕舞っておく。
「部活辞めてたんだな」
「女子高生らしくしたかったから」
「部活やってると遊ぶ暇もないしな」
「バイトしてたからあんまり変わんなかったよ」
「まだ続けてるのか?」
「や、受験があるから春に辞めたんだ。今日はちょっと息抜きに寄ってたの」
「へぇー」
たいして仲良くもない中学の同級生を心配できるなんてすごいと思う。普段からそんなに心配ばっかりしてないよね?禿げちゃうんじゃない?
「そういえば夜久ジャージなんだね」
「部活あったからな」
「え、引退してないの?」
「最後の大会が1月にあるんだ」
なにそれ。
「あの、言っちゃ悪いのかもしれないけど、受験…」
「大丈夫だって!」
「そう…」
私だったら絶対ムリ。そんなギリギリまで部活と受験の両立なんてできっこない。
「それよりさ、もうすぐ文化祭だろ?」
「うん」
「音駒の文化祭呼ぶから」
「へ?うん」
友達もいるし行こうかとは思ってたけど、まさか夜久に呼ばれると思わなかった。
「あ!アドレス教えろよ!」
「え?ああ」
今時アプリのID交換なのに交換したのはアドレスと電話番号。これにどれ程の意味があるのかは、あまり考えたくない。
「文化祭近くなったら連絡するな」
「うん」
これは、考えたらダメなやつな気がする。いや!それこそダメなやつなの?深読みしすぎるのは自意識過剰だよね、うん、止めよう。久しぶりに会ったからとりあえず交換するアレだよね。
「じゃあちょっと買うもんあるから」
「あ、じゃあまた」
「おうっまたな」
そう思いたいのに、夜久の表情をみると勘違いしそうになる。もうやめたのに、思い出しそうになる。
もう1回、ちゃんと仕舞わないと…