妄想の種は現実にあり
「つうかさ、なんでお前そんなに白チビのパンツが見たいわけ?」
「……それさぁ、遊真君以外に聞かれるのすんごい恥ずかしいんだけど」
「今更じゃん?」

 米屋君は頬杖をつきながらもつまんなそうに私の様子を眺めている。いや、ちょっとまって改めてまじまじと聞いてくる人いなかったからめちゃくちゃ恥ずかしい。どうしよう、どうにか誤魔化せないものだろうか。

「えーと、ほら、やっぱ好きな人のことは色々知りたい、みたいな」

 無言。ジト目。うわぁこれ絶対信じてない顔だ。なんで?好きな人の色々を知りたいって恋する乙女としてわりと市民権を得てるよね?と、どぎまぎしながらも米屋君と睨みあっていると、突如第三者の声が響く。

「ふぅん。お前、おれ以外には嘘つくんだ」

 ひぃ、と引きつった声をあげてしまう。我ながら今どうやって声出したんだ怖い。なんて現実逃避しても無駄なもので、いつの間にかこの会話に割って入ってきた遊真君は、米屋君と挨拶を交わしながらも平然と同じテーブルの席に腰を下ろす。

「なんだ、やっぱり嘘じゃん?」
「全部が嘘じゃないけど、本音は違うと思うよ」

 にんまりとした米屋君の笑顔。平然としている遊真君。わーもうなにこれ!こんなの完全に私が不利じゃないか!なにこれ!!っていうかだって、遊真君がいることによって私もう嘘つけない!ここで嘘をついたら私は私の誓いを裏切ることになってしまう!絶対絶命!

「で、何でお前はおれのパンツにこだわるんだ?」
「……い、今じゃなきゃ駄目ですか……」
「お前と白チビ二人にしたらどんなセクハラするかわからねーしなー」

 なんと…とうとう遊真君には対私用のセコムがつくようになってしまったのか…!どうしようどうしようと思うけど、これ、逃げるべきだろうか。そんな私を無表情で眺めながらも、遊真君はちなみに、と付け足す。

「もし逃げたり言わなかったりしたら、お前のこと嫌いになるかも」
「ひぃい言います!ちょっと心の準備だけさせてください!!」

 どうしよう今ここで言わないと遊真君の信用を失ってしまう。けどここで言ったら私の社会性が保てないんじゃないのそれはそれで。もうなるようになれ、と願うしかない。できれば社会的に生きていられますように。一縷の望みにかけて私はおそるおそる欲求の理由を口にする。

「……あの、やっぱり好きな人がいると妄想とかするじゃないですか」
「ほう?」
「どんな告白が、とか付き合えたらデート、とか」
「ふんふん」
「そうやって妄想広がってるとやっぱりこう、あっはんな展開も妄想しちゃうじゃないですか」
「なるほど?」
「だから妄想の補完のために遊真君のパンツが知りたいなっていう理由です!」

 あぁ言った。言ってしまった!
 できればこんな恥ずかしい理由は一生私の中に秘めておきたかった。二人の反応やいかに、と恐る恐る二人の表情を伺うと。なんとも間抜けな呆け面。我に返ったのか、先に口を開いたのは米屋君だった。

「は?お前それだけのために白チビのパンツ見たいって言ってたのか?」
「それだけってなに!?私からしたらすごい重要なところなんだけど!?」
「妄想って自分で言ってるなら好きに想像したらいーじゃん。トランクスでもボクサーでも」
「妄想には一欠片でもいいから現実味がないと駄目なの!そうじゃないと遊真君の妄想じゃなくなっちゃうでしょ!!」

 はぁ、とわかってくれたのかそうでないのかどちらともつかない溜息。米屋君の言うことも一理あるんだけど、あるんだけど!好きにできるから妄想なんだけど!やっぱりこういう理由じゃ駄目だろうか、っていうか私がおかしいんだろうっていうのは今更な話。
 それは当然としてこれを遊真君がどう受け取るのかっていうのが目下最重要事項だ。どんな感想を抱かれるのか、というか言ったところで余計嫌われる可能性を増やしているだけじゃないか。そう思って落とされる言葉を待っていると、いよいよ遊真君の重い口が開く。

「……お前、思ったより可愛いところあるんだな」
「ひぇっ!??!?!」
「おー、まさかの好感触じゃん?」
「なんかもっとヤバイのかと思ってたからそれはそれでびっくりしたぞ」
「なーオレも。どうだ?白チビちょっとは見せてやる気になった?」
「いやそれは全然」
「なんと!?!?!?!?」

 遊真君凄い小悪魔だね!?!?ほんの数秒の間に私を有頂天まで吹っ飛ばしたと思ったら、最後の最後で一気に地面にたたき落としたね!振り回されるのもご褒美です!!
 けれど思ったより最初の破壊力がやばかった!可愛いって声色が何度でも脳内でエンドレスエコーしてるよ!これはもう今晩の妄想がさらに豊かになりますね資料をありがとうございました!!けど、けど!

「私はそろそろ色々限界なので帰りたいです!」
「うん、いいよ。じゃあな」
「ばいばい遊真君!米屋君もありがとう!」
「おー、お礼を言われるほどでもー」

 いやもう米屋君とのやりとりがなかったらこんな展開は望めなかっただろうからね!でも羞恥心がマックスなので限界です!私は帰ります!


妄想の種は現実にあり

(咲かせてみせましょ恋の花!)

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