「おい、寝てるのか?」
そう声をかけてみても、名前はうるさそうな顔をして眉をよせるだけだ。いくら玉狛支部の食堂とはいえ、誰がくるかもわからない部屋のソファでこれだけ堂々と寝ているとは。
部屋の電気がついたままで薄い毛布がかけられている様子を見るに、こなみ先輩やしおりちゃんと一緒だったのだろうか。それでいて寝てしまった名前を、とりあえずは寝かせておいたという状況か。いずれ戻ってくるつもりか、そのうち起きるだろうと見越してか。
疑問はつきないが、ともかく。さすがにこのままにしておくのは、おれの気がすまない。
「名前、寝るならベッドいくぞ」
「……んん……いぃ……」
ふむ、今のはどっちだろうか。行かない、という意味のいいか。あるいはわかった、という意味のいいか。
さすがに彼女をこのまま無防備に寝かしておくのは居心地が悪い。別に玉狛支部のやつらが信頼できないとかそういう話ではなく、ただ、おれが嫌なだけだ。
かといって、泊まるからと名前にあてがわれた部屋はしおりちゃんかこなみ先輩どちらかと一緒だった。名前がソファで寝るから、とかなんとか話していた記憶がある。玉狛支部の人数が増えたことと、おれやオサムが部屋を借りっぱなしなのが原因なのだが。今そこに入ればしおりちゃんかこなみ先輩が寝ているかもしれない。さすがに、女子が寝ている部屋に入るのもどうか。
「……名前」
「……ぅ……」
起きれば話が早いんだけどな。そう薄い期待を込めて名前を呼ぶが、唸るばかりで瞼が上がる気配がない。疲れているのだろうか、さすがに起こすのも悪い気がしてきた。
だとしたらおれが一緒にいればいいだろうか。どうせ夜は暇なわけだし、今日はここで名前を見守りながら、というのも悪くはない。ソファから落ちないかとひやひやはしそうだが、おれが傍にいればどうとでもなるだろう。
「……ん……ゆぅま……?」
「……お、起きたか?」
うっすら、ほんの僅か瞼を持ち上げておれを呼ぶ名前。けれどすぐに目を閉じて、眩しかったのかソファに顔を擦りつけながら毛布に包まってしまう。
「おい、起きたならベッド行くぞ」
「……つれてって……」
――ほう? なるほど、そうきたか。
すぅ、と寝息が聞こえてからはまた静かになってしまった。寝ぼけていただけだろうか。もしかしたらまだ夢うつつかもしれんが、いずれにせよ起きるという選択肢は名前にないらしい。
あげく、おれに連れていけときたもんだ。確かにソファでは寝づらいだろう。一生懸命足を折り曲げて毛布に包まりながらソファの上に乗っているわけで。さっき起きたのは部屋が明るかったのもあるだろうし、ソファの居心地が悪いというのもあるだろう。
なにより本人の希望だ。応えてやらなきゃ彼氏の名がすたるというもの。
「しょうがないから、連れてってやる」
毛布ごと抱きあげれば、眠いからか自然とおれに身体を預けてきた名前。特に抵抗する気もないようなので、おれはしっかりと抱きかかえて食堂を出る。もちろん、電気を消すのも忘れずに。
さすがに皆も寝ているだろうから、なるべく物音を立てないよう静かに二階へ。そうして少し廊下を行った先の――おれの部屋へ手をかけて。僅かに軋んだ音が響いたが、そのまま扉が閉まる。
「おれのベッドは高いぞ?」
担がれるがまま大人しくしていた名前をゆるりとベッドに下ろした。ふかり、身体の重みに合わせて沈んだベッド。名前は寝心地が変わったからか、少しして身じろぎをしながら手足を気持ちよさそうに伸ばす。
「さて、どうしたもんか」
暗いおれの部屋に安心したのか、はたまた毛布の中が苦しかったのか。いよいよひょこりと名前の頭が出てくる。穏やかな寝顔は完全に安心しきっている様子で、溜息ひとつ。
「ま、これくらいはおだちんでいいだろ」
おれはそう断ってから、寝ている名前にそっとキスだけしてやったのだ。
おれだけが悪いわけじゃない
(受けがソファで無防備に寝ているのを発見した攻めの行動、のツイで滾った結果がこれだよ!!)