ふと、いつの間にか部屋の中が明るくなっていることに気づいた。
おれはこれまで見ていた端末から目を離して窓を確認する。カーテンの隙間から白い光が差しこんでいて、やっぱり朝になっていると息をつく。
ベッド端に寝転がるおれの隣には、まだすやすやと寝息を立てる名前。同じベッドで、同じ布団を被って。名前は眠り、おれはランク戦の記録を確認したり戦術の復習をしたり、というのも珍しいことではなくなった。
「……名前」
試しに、小さな声で名前を呼んでみるも反応はない。たまに端末の目覚ましより先に目を覚ますのだが、今日はまだ起きる気配がない。
手元の端末はまだランク戦の記録を途中で止めているので、手っ取り早く名前の枕元にあった端末を借りることにする。時間を確認すれば……目覚ましが鳴るまでそれほど時間はない。まぁ、それならあと少しの辛抱だと名前の端末をベッド端へ追いやり、おれは自分の端末へと意識を戻す。
――うぅん、なかなか早くて対応するのは難しそうだ。もう一回、同じところを見るか。
操作をして、眺めてを数回繰り返し終えた頃。いよいよ目覚ましが鳴った。
名前は「んん……」と唸りながらも手を自分の枕元へとやる。普段ならそこが端末の置いてある位置だ。けれど今日は、おれが端へと移動させてしまったから、探る手は空振りばかり。
「名前」
「ん〜……」
名前を呼ぶも眠いようで、聞こえているんだかいないんだかわからない返事。
それでも端末の音の聞こえてくる方向がいつもと違うことには気づいたのだろう。目は開けないまま、手が伸びて――おれの背中をポン、と叩く。
「んん……? ん……」
ポン、ポン、と何回か叩かれたあと、手は昇っておれの頭へ。わしゃり、わしゃ、と名前の指先が遠慮なくおれの髪を探る。
「……起きろ」
「ん……眠い……」
ようやく返事らしい返事があったが、経験上これはまだ寝ぼけている。無意識に発している程度の呟きだから、あんまり意味はない。
そのあと名前の指先はおれの耳に触れ、頬を滑り、かくりと落ちておれの腕へ。手の甲に指先が届いて、ひたりと重ねられた頃――面倒になったおれは勝手に名前の目覚ましを止めることに。
「名前、起きたか?」
「……ん……」
これは全然ダメそうだ。だが、うるさい音がなくなったからだろうか、名前は途端に動かなくなった。少しすればまた、すぅと寝息を立てはじめる。
名前の手はおれの手に重なったまま。なんだかかわいくて、ふぅと息をつく。
「まぁ、この目覚ましは一番早いやつだもんな」
名前の端末の目覚ましは何回か鳴るように設定してある。今のはあくまで一番早起きのもので、遅刻ギリギリまではそれなりに時間が……あるといえばあるのだ。まぁ、さすがにおれもいる手前、そこまで寝かせてしまったら怒られてしまうだろう。だから、もう少し早く起こしはするけど。
「昨日は寝るのが遅かったもんな」
「ん〜……」
「しょうがないから、あともうちょっとだけ寝かせてやる」
話しかけるのをやめれば、大人しく眠り続ける名前。温かい手がまだおれの手に重なっていて心地がいいし、あともう少しくらいは寝かせてやろうと決める。
おれは空いている手でもう一度ランク戦の記録の再生をはじめた。今日はいい朝だな。いつもより寝坊している名前を横に、次の目覚ましが鳴る時を楽しみに待つことにした。
よくある朝の話
(お題ガチャ:https://odaibako.net/gacha/1221で出たものに萌えすぎて書きました)(目覚まし時計を止めようとしているが、寝ぼけて遊真の頭をぽすぽす叩いている名前。起きた遊真が代わりに止めてくれた。)