サプライズコール
『今日も休みか?』

 しゅぽん、と米屋君からのメッセージが浮き上がる。“も”ってなんだろうとぼんやりとした頭で考えるけど、深く考えることもせずにうん、と一言返信を送る。少しして『冬休みは明日からだぞー』と戻ってきた。

「また、本部でね、っと」

 ぴこん、とメッセージを送って端末を投げた。ちらりと時計を見ればもう既に授業は始まってる時間のはず。今日は短縮授業の後に終業式だ。もう冬休みが始まるとなると暇だなぁ。

「……、だる……」

 熱は大分下がって微熱程度のものだ。だけどどうにもだるさが抜けなくて学校へは欠席連絡をした。はぁ、と息を吐いて布団でごろごろと横になる。

「……とりあえず、寝よ……」

 何もする気はおきなくてそのまま布団の中で目を閉じる。だるさもあいまってぼんやりとまどろめば、思ったよりすぐに私は眠りに落ちていた。


§


 ――ふ、と意識が浮上する。

 時計を見れば丁度お昼時だ。ご飯は何があったかとのそり身体を起こすと、チカチカと通知が光っていてスマホに手を伸ばす。

「……ん、誰だろ、この番号……」

 見慣れない番号からの着信が見えたがそれはひとまずおいて、メッセージ欄に迅さんからの通知がひとつ。

『メガネ君にお前の番号教えたから』

 迅さん……一応個人情報は事後承諾じゃなくて事前確認して下さいよ……。まぁそれは後で言っておくとして、相手が三雲君ならまぁいいだろう。でも、三雲君がどうしてわざわざ私の番号をと考えていると、丁度知らない番号からの着信画面に切り替わる。多分これが三雲君なんだろうと私はそれに応答した。

「もしもし。三雲君?」
『残念。おれだよ』
「……へ?」

 電話の向こうで少し慌てたように空閑! と咎める三雲君の声がする。まさかと察した瞬間どぐりと心臓が唸ったのを深呼吸して落ち着かせた。どうして、と考えてそういえばこの二人は同じクラスだと聞いていた気がする。丁度お昼休みだし一緒にお昼でも食べていたのだろうか。

「空閑君、携帯持ってたっけ?」
『いや、オサムの借りて……っ、ぉぃ』
『ぃぃ……すみません、水沢先輩具合悪いのに……』
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」

 会話の途中で少しもめるような会話があったけど、真っ先に体調を心配してくれる三雲君になるべく明るい声で答えれば、すみません、と謝罪を重ねる三雲君。

『空閑が先輩と連絡とりたいらしくて迅さんに番号を伺ったんです。体調を崩してるとも聞いたので一度だけかけたんですけど、出なかったので今日はやめようと空閑には言ったんですが……』

 電話の後ろで空閑君が、大丈夫って言ったぞ? と言っている。此方から二人の様子が聞こえるように、今電話を持っていない空閑君にも、私と三雲君の会話は聞こえているようだ。とにかく三雲君の一生懸命な説明のお陰で事情はなんとなくわかった。

「さっき起きたんだ。もう大丈夫だから気にしないで」

 すみません、と三度目の謝罪に気にしてないよ、と再度重ねる。空閑君の後始末をする三雲君もなかなか大変な役回りだ。そうして頭も段々と冴えてくるとはて、とひとつ疑問が浮かぶ。

「それで、空閑君は何の用だって?」
『あ、水沢先輩がいいなら代わりますが……』
「私は平気だよ」

 三雲君の通話代が心配だけど、と言おうと思ったが、告げるより早く空気の擦れる音が聞こえて電話を代わっているんだと気付く。大人しく待っていると空閑君がもしもし、と声をあげた。

『レプリカが和音ちゃんと話したいんだって』
「うん、何?」
『だから、放課後和音ちゃん家に行ってもいい?』

 へ、と一瞬呆けた声が出る。
 電話の向こうでも何言ってるんだ空閑! と声を荒げる三雲君。少し電話から離れてなに? と不満気な声を三雲君に返す空閑君は、病人の家にあがるなんて失礼だろう! と三雲君にマナーを説かれている様子。
 どうしようかと思っていたら和音、と第三者の声が響いた。

『この前の件で1つ推論を立てた。早く伝えた方がいいと思うが、体調が思わしくないならこちらが出向こうと思ったのだ』

 レプリカの声を聞いてやっと空閑君の意図を理解する。そうはいっても家に招き入れるのはちょっとまだ心の準備が出来ていない。話の内容はあまり聞かれたくないが支部でも話せる場所はあるだろう。

「もう大分元気だから夕方には玉狛に行くよ。二人にもそう伝えて?」
『了解した。待っている』

 応答するや否やぷつ、と通話が切れた。さすがレプリカ。用件もわかりやすいし終われば速やかに通信終了。もしかして一番病人として気遣ってくれたのレプリカじゃないの?

「はぁ、じゃあ起きるか」

 とりあえずはきちんとご飯を食べて頭を起こそう。ついでだから昨日今日でぐしゃぐしゃになった部屋を片付けて、夕方には玉狛にいける支度をしなければ。

「……びっくり、したなぁ」

 残念、なんて言われてどくりとした。むしろそっちの方が大当たりだ、なんて。
 ぱちんと頬を叩く。自制の効かない浮ついた気持ちを少しでも落ち着かせる為に。恋愛かどうかは今の時点ではわからないけど、特別なのは認めるしかなさそうだ。

「……今は、そこまでにしとこう」

 さて、と深呼吸して私は動き始めた。やるべきことを、やろう。



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サヨナラの引力

 

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