202番道路でサンドイッチを食べようと木陰に腰を下ろした瞬間、高い声が私の耳を貫いた。
「あ! トレーナーさんみっけ!」
声のした方を見遣れば、向こうの木陰から女の子がスカートを翻しながら凄い勢いで駆けてくる所だった。
「わたしは、ミニスカートのルミ。さあ、勝負しましょー!」
ボールを構えた彼女が、トレーナーに相応しい勝ち気な笑みで私にそう言った。
……トレーナーとのポケモンバトル。野生のポケモンとは、たくさん闘った。ゴースのこともだんだんわかってきた。自分が成長できたのか知りたい。ゴースとのコンビネーションを試してみたい。体中の血がたぎるのを感じながら、私は出しかけていたサンドイッチを仕舞い、モンスターボールを握りしめて立ち上がる。
「私はナギサシティのナマエ。受けて立ちます」
ボールの中でゴースがいきり立っているのがわかる。早く飛び出したくてうずうずしているのね、わかるよ、その気持ち。
お互いの挨拶が済んだら、後はボールを放るだけ。私が高くボールを投げ上げると、ゴースは待ってましたと言わんばかりに飛び出してきた。相手はビッパを繰り出してきた。ゴースとビッパの睨み合い。
先に動いたのはゴースだった。大胆不敵にも相手に近付き、持ち前の素早さを発揮して一瞬で距離を取る。それに釣られて、相手は指示を先出しした、「ビッパ、しっぽをふる!」
ルミさんには悪いけれど、ビッパは昨日から何匹も倒してきた。その得意技も弱点も、よく心得ている。
しっぽをふるは気にする必要はない。どちらにしろ、相手の攻撃は絶対に当たらないのだから。
「ゴース、怪しい光!」
混乱を誘われたビッパは近くの木の幹に向かって体当たりを始めた。
どっしりとした木がずうん、と揺れて、木の葉や木の実がはらはらと落下する。あんなに立派な木をあれだけ揺らすなんて、すごい威力だ。私は敵ながらそれに感心してしまった。
「ああビッパ、しっかりしてよー!」
ルミさんの悲鳴に近い声が上がる。
私はゴースに覚えさせた、ノーマルタイプに対して有効な唯一の技を指示した。
「ゴース、恩返し!」
ゴースが白い光を纏って相手に向かって突き進んで行く。
ばしん、と鈍い音がして、ビッパは大きく弾き飛ばされる。そのまま目を回してしまった。
「わあー、ビッパぁ!」
彼女はビッパに駆け寄り、その状態を確認してからビッパをそっとモンスターボールに収める。
彼女は私とゴースに向かって歩み寄ってきて、屈託のない笑みでにこりと笑ってこう言った。
「負けちゃった!」
はい、と手渡された賞金を受け取って、私も彼女に微笑みかける。
「ビッパとはたくさん闘ってたから……」
私が少し有利だったのだと思う。
しかしルミさんはそれは関係ないよと言うように、ふるふると首を横に振った。
「よーし、次はまだナマエが見たことないポケモン捕まえて、私が勝つからね!」
彼女はまた勝負しようね! と言いながら手を振って、マサゴタウンへの道を駆け戻って行った。
私はルミさんが見えなくなってから、ゴースをぎゅっと抱きしめてふたりで勝利を喜んだ。
私たち、強くなっているよね。これからも頑張ろうね。たくさんの感情を込めて微笑みかければ、彼も得意げな笑みを私に披露してくれた。
お昼ごはんのサンドイッチは、格別においしかった。
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