シロナさんとシンオウの神話について話しながら空を飛んでいると、あっという間にコトブキシティに着いた。
シロナさんはミオシティまで送ろうかと言ってくれたけれど……、まだ歩いたことのない218番道路を自分の目で見てみたかったので、その提案はせっかくだけど断ることにした。
シロナさんは少し残念そうに笑って、それから私の旅の安全を祈ってくれた。
「じゃあまたね!」
シロナさんを乗せたトゲキッスが軽やかに舞い上がる。その背中はコトブキシティの夕焼け空に溶けて、あっという間に消えていった。
私はその姿がすっかり見えなくなるまでシロナさんとトゲキッスを見送ってから、今日はもう休むべく、ポケモンセンターへと向かった。
翌朝、私は気持ちを新たにタウンマップで道を確認する。
見たところ、218番道路はコトブキシティとミオシティを繋ぐ短い道路のようだった。だから私は、うまくいけば今日のお昼にはミオシティについてのんびりできちゃうかもしれないね、なんてゴーストと笑い合っていたのだが。
実際に218番道路に出た私は、それが甘い目論見であったことを思い知った。
目の前には、ミオシティの北側から218番道路を縦断してシンジ湖の近くにまで深く切れ込む湾が形成されており、私の行く手をすっかり遮ってしまっていたからだ。きょろきょろと辺りを見回してみるが、橋のようなものは影も形もない。
タウンマップで確認したときは、この水域は川かなにかで、今までがそうだったようにきっと橋が架かっているだろうと思ったのだが……。それは私の思い違いだったようだ。
さて、どうやってミオシティに行けばいいんだろう。
コトブキシティ側の陸地から湾に伸びる桟橋の端に立って、爽やかな朝の潮風に吹かれながら途方に暮れる。そんな私を助けてくれたのは、若い釣り人のユタカさんだった。
湾に点々と浮かんでいる小島のうち、桟橋に一番近い場所で釣り糸を垂れていた彼は、釣れないひまつぶしにこちらに勝負を挑んできた。
彼のギャラドスとバトルをした後、彼は困り果てた私に旅人として最も初歩的なアドバイスをくれた。
「レリックバッジは持ってるか? 波乗りを使うといいぞ!」
そうだ、波乗り!
ホエルコやラプラスに乗って水上を優雅に進む旅人の様子は、故郷のナギサの海でも見かけたことがあった。私はそれを思い出しながら、つい先日シロナさんのおばあさんから貰ったばかりの秘伝マシンを取り出して、早速ゴルダックにそれを使ってみる。
すると、ゴルダックは器用に背中を水面に出して泳ぎはじめた。なるほど、その背に乗れということらしいが……私とゴルダックの体格差では、ラプラスよろしくその背に座るには少し広さが足りない気がする。
釣り人のユタカさんは戸惑った様子の私を見て、ゴルダックの波乗りの方法について教えてくれた。
「サーフィンの要領で立ち乗りするのが、ゴルダックの波乗りのセオリーだな! サーフィンだ、わかるか?」
常に大きな声ではっきりと話す彼に少し気おされながら、私はおずおずと頷いた。以前、テレビで見たことがある。遠い南の島国では、マンタインに乗って波に乗り、華麗にジャンプを決めるスポーツがあるのだという。南国らしい陽気な太陽の下で、様々な国籍の人たちが楽しそうに波に乗っていたのをよく覚えている。
だが……きっとコツがいるはずだ。私にできるだろうか?
「よかったら波乗りのコツを教えようか?」
私の不安を察したのか、ユタカさんは快活に笑いながらそう言ってくれた。「釣りのひまつぶしにもなるしな」と、私が罪悪感を覚えないように気遣いの一言も添えてくれる。
私は少し考えて、ユタカさんの提案に甘えさせてもらうことにした。
「よし、そうと決まれば、まずは練習の準備だな!」
「準備、ですか?」
「ああ。付いて来な!」
彼は相棒のギャラドスに乗って小島からこちら側にわたってくると、コトブキシティに向けて歩き始めた。
「コトブキにある釣具屋が、波乗りの初心者向けの教室をひらいてるんだ」
釣りを極める人たちは、釣りのポイントを探すために波乗りを使って水辺を移動する。そのために、一部の釣具屋では波乗りの教室が開かれているのだということを、彼は道中で教えてくれた。そしてその波乗り教室は、釣り人だけでなく駆け出しのトレーナーも対象にしているのだという。
「コツさえつかめば、波乗りは怖くない。一緒に頑張ろう!」
どこまでも真面目で人の好さそうなユタカさんに、私は感謝を込めながら深く頭を下げた。
「はい。よろしくお願いします!」
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