「さあナマエさん、どうする?
ウェザーボール!」

ナタネさんの指示を受けて、ロズレイドが再び火球を形成する。
私は地面に墜落してしまったフワンテを見つめながら、その一瞬を待っていた。

地面にうずくまっていたフワンテの体が、きらりと光る。その瞬間、痺れに歪んでいた彼の瞳が、ぱちりと見開かれた。

ナタネさんが短く絶句したのと、
ロズレイドがウェザーボールを放ったの、
さらに、痺れの消えたフワンテが軽やかに飛び上がったのが、全く同時の出来事だった。

「クラボの実か、いい判断ね」

ナタネさんの言う通り、私は以前ロゼリアに麻痺させられたことを教訓にして、フワンテにクラボの実を持たせていた。
麻痺が完全に取れたフワンテが、再びウェザーボールを軽々かわす。

「フワンテ、しっぺ返し!」

そのままウェザーボールの作った気流を利用してロズレイドに急接近して、その頬ををぺちりと叩き、「風おこし!」

そこでナタネさんはふっと笑った。
フワンテのスピードでは、風おこしは当てられないからだ。ロズレイドも三度目の風おこしを悠々とかわす――はずだった。

風おこしは、ロズレイドに命中した。
ロズレイドは悲鳴をあげて吹き飛ばされる。ナタネさんも驚きの表情を隠せないようだ。オレンジ色の瞳を大きく見開いて、ふわふわと舞うフワンテを見つめる。

「この子、軽業使いなんです!」

私の言葉を聞いて、ナタネさんはなるほどと言うように一度大きく頷いた。
特性により、道具を消費することで素早さが大きく跳ね上がったフワンテは、縦横無尽に空を飛び回ってロズレイドを翻弄していた。

「フワンテ、気合い溜め」

ナタネさんは、追い詰められているはずなのに何故かとても楽しそうに笑っていた。

「ロズレイド、ウェザーボールもソーラービームもかわされる。マジカルリーフで打ち勝つのよ」

ロズレイドはナタネさんの言葉に、大きく強く頷いた。

「ロズレイド、マジカルリーフ!」
「フワンテ、風おこし!」





「ズバリ、完敗だわ」

そう言ってナタネさんは微笑んだ。

「それだけポケモンを育てるの、大変だったでしょ?」

私はそれにやや考え込んでから、ぽつりとこう答えた。

「……私、大変だと思ったことないかもしれません」

旅もバトルも、ただただ楽しかった。

するとナタネさんは、あはははは、と豪快に笑って言った、「なるほど、それがあなたのポケモンへの愛情ってわけね」

彼女はマントの内側から、一つのバッジを取り出す。
菱形の三つ並んだ緑色のバッチ。

「フォレストバッチよ。あなたに進呈します」

私はそれを、バッチケースに丁寧にしまう。
並んだふたつのバッチを見て、私は残る6人のトレーナーとのバトルを思って胸が高鳴るのを感じた。

不安は無かった。
ナタネさんに認めてもらったポケモンへの愛情を大切に注ぎながら旅を続けて行きさえすれば、きっと大丈夫。

胸に抱えたゴースが、嬉しそうに一声鳴いた。

「あなたとポケモン、絶対に強くなる。あたしにはわかるよ。これからもがんばってね!」

私は優しく微笑むナタネさんに深く礼をしてから、ハクタイジムを後にした。


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