ヒカリちゃんは、コンテストに参加するのは今日が三回目なのだという。
コンテストにはノーマル、グレート、ウルトラ、マスターの4つのランクがあって、それぞれのランクで優勝をしないと、次のランクには上がれないらしい。ヒカリちゃんは、前回のノーマルランクの大会で優勝したので、今日はグレートランクに挑戦するのだという。三回目でもうグレートランクだなんて、すごい。私がそう言うと、ヒカリちゃんは「そんなことないよ」と照れたように笑った。

「お母さんみたいなコーディネーターになるために、もっと頑張らないと!」

そのためにまずは今日の優勝を狙うヒカリちゃんは、私に「応援よろしくね!」とウインクを残して、ステージの方へ駆けて行った。





ヒカリちゃんのステージは圧巻だった。
第一審査はポケモンのビジュアルと個別パフォーマンスで点数を競うのだが、彼女のパチリスがボールから現れた瞬間、なんというか、ホール内の雰囲気が変わった。客席のみんなをパチリスの一挙一動に釘付けにしてしまう、そんな魅力的なパフォーマンスだったのだ。
パチリスが最後に力いっぱい放電をすると、青い電撃がぱちぱちと弾けて、私たちの目と耳を楽しませた。会場は割れんばかりの拍手に包まれ、ヒカリちゃんとパチリスはその真ん中で優雅に一度お辞儀をした。

第一審査通過者4名によるトーナメント形式のコンテストバトルは、会場をさらに白熱させた。
ヒカリちゃんのポッチャマは、本当に華麗で可憐だった。相手の攻撃を踊るようにかわし、宝石のように美しいバブル光線を放ち、しおみずを噴き上げて会場中にきらきらとした飛沫を散らして観客を魅了した。
相手の攻撃に合わせてポッチャマに的確な指示を送るヒカリちゃんは、普段私がそうするよりも大きく、そして美しい軌跡で動くので、まるでポッチャマと一緒に踊っているみたいだった。
ポケモンだけでもだめ。コーディネーターだけでもだめ。彼らの呼吸が合ってはじめて美しいパフォーマンスができるのだということが、ヒカリちゃんを見ていると手に取るようにわかる。

ヒカリちゃんとポッチャマはそのまま快進撃を続け、なんとグレートランク初挑戦にして、優勝を獲得してしまったのであった。





私が「おめでとう」と言うと、ヒカリちゃんは私にがばっと抱き着いて、「ありがとう!」と声を弾ませた。

「初めてのグレートランクで緊張してたんだけど、ナマエちゃんが髪飾りを届けてくれたおかげで、緊張も忘れちゃった! おかげで自分らしく演技ができた」

ヨスガシティに来るの、ずいぶんと遅くなってしまったけれど、本番前のヒカリちゃんに思い出の髪飾りを渡すことが出来たから、これはこれでよかったのかもしれない。私は遅くなってごめんなさいの言葉を飲み込んで、そっと彼女の背中に腕を回した。そして、彼女の頭で輝く銀の髪飾りを見ながら、「こちらこそ、ステキな演技をありがとう!」と声を弾ませた。





それから私は、自分のステージが終わり控室で私服に着替えたヒカリちゃんに誘われるまま、今日のメインステージであるマスターランクのコンテストを観賞した。
コンテストバトルの決勝戦は、紫色のドレスをまとった妙齢の女性と彼女のムウマージの圧巻のパフォーマンスによって締めくくられ、会場の興奮はコンテストが終わってからもしばらくは冷めそうになかった。

「あのムウマージのサイケ光線、すごかったわ!」

会場を後にしても、ヒカリちゃんの脳裏にはあのムウマージの動きが焼き付いて離れないらしい。
確かに、あのムウマージはすごかった。ポケモンを魅せる技の出し方はもちろん、その鮮やかな立ち回りと戦術は、コンテストをしない私のバトルにも大いに参考になるくらい見ごたえのあるものだったのだ。

「あたしもあんな風にポケモンの魅力を引き出せるようにならなくちゃ!」

拳をぎゅっと握って宣言したヒカリちゃん。彼女はそれから白いマフラーをなびかせてくるっとこちらに向き直ると、「ナマエちゃん、今日は本当にありがとう!」と言って、ぺこりとお辞儀をしてくれた。

「そんな、私の方こそ、ヒカリちゃんのおかげで楽しかった!」

ヒカリちゃんが優勝するところも見られたし、マスターランクのコンテストバトルはこれからの参考になったし、なにより。ヒカリちゃんと仲良くなれて、本当によかった。
今度は私が「ありがとう」言ってぺこりとお辞儀をすると、どちらからともなく笑いが弾けた。

「また会う時にはあたし、あのムウマージみたいなコンテストバトルができるようになってるからね!」
「私も、今よりずっと強くなってる!」

私たちは笑顔のまま、お互いの手を強く握りあった。旅先でできた友達との約束って、こんなに心強いものなんだな。そう思いながら私はヒカリちゃんの手のあたたかさを思い出に刻んで、そっと手を離した。

「じゃあ、あたし、次の街に行くね」
「うん」

駐輪場に止めていた自転車にまたがったヒカリちゃんが、最後に「またね」と手を振る。私も大きく手を振り返して、ヒカリちゃんが見えなくなるまで見送った。
さみしさは、ほとんどなかった。だってまた会う約束をしたから。――ヒカリちゃんに負けないように、私も強くならなくちゃ。


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