14
得体の知れないポーンであるルークに『よい』について質問をされて明らかに返答に困っていたマルコは、スイッと顔を逸らした先で若い男がゴブリンの群れに襲われている姿を見つけた。
話をはぐらかすまたと無い好機だとばかりに逡巡する間も無くマルコは剣を引き抜く。
「ルーク、あいつを助けるよい」
「あ、お待ちください覚者様!」
制止する声に従うわけも無く駆け出したマルコに、ルークは慌てて後を追った。
「くそっ! こいつら!」
ゴブリンに囲まれていた男は、身体を守るように両腕を交差して身動きが取れずにいた。それを良いことにゴブリン達は「グギャギャッ!」「キーキー!」と意気揚々に棍棒を振り回して男に襲い掛かっていた。
大きな棍棒を振り翳して男に殴り掛かろうとするゴブリンに殴られる激痛を覚悟した男は、全身に力を入れて身を屈めて目を瞑り歯を食い縛った。
ガキィィン!!
「グギャッ!?」
「え……?」
想像していた痛みが襲うどころか金属質の音が直ぐ側で鳴り響いたことに不思議に思った男は恐る恐る顔を上げた。
自分に向けて振り下ろされたはずの棍棒は、剣によって受け止められ、それどころか「ガキンッ!」と大きな音を上げて弾き飛ばされていた。
棍棒を持っていたゴブリンは、弾かれる勢いのままにバランスを崩してゴロンと後ろに倒れた。慌てて体勢を取り直そうとしたゴブリンだったが、男の前に立ちはだかる者の姿を見るや否や顔色を変えた。
「オマエハ!」
「ったく、お前ェらは相手が弱けりゃとことん強気だな」
「「「バケモノ!!」」」
「え?」
「はァ!? てめェらに化け物呼ばわりされたかねェよい!!」
化物呼ばわりするゴブリン達に声を張ってマルコは反論した。そして、襲われていた男がゴブリンと助けてくれた男とを交互に視線を向けていると、
「覚者様の敵は我が敵なり!!」
「グギャッ!?」
「!」
新たな男が杖を翳してゴブリン達に容赦無く攻撃を仕掛けた。杖先で蓄えられた魔力によって放たれた炎の弾丸がゴブリン達を襲う。
「ニゲロー!」
ゴブリン達は堪らずに蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
杖を持った男が「ふぅ…」と息を吐くと背中にある鞘に杖を納め、襲われていた男を助けた男の元に駆け寄って「覚者様、お怪我はございませんか?」と凛々しい顔付きで問い掛けていた。
「あ、あァ……、ご、ご苦労さん」
「いえ、覚者様をお守りするのが私の務めでございます。早速、お役に立てて光栄でございます」
微かに笑みのようなものを浮かべた魔法使いの男。夕日に照らされてか歯がキラリと輝いたように見えた。
一方、覚者と呼ばれた男は頬をヒクリと引き攣らせた微笑を浮かべるだけで、それ以上何も答える気は無いようで、小さくかぶりを振って溜息を吐いていた。
覚者と呼ばれた彼はどうもこの魔法使いの男が苦手なようだ――ということを、襲われていた男は何となく察した。
相手がかなり引いてることを気付いてすらいない哀れな状況にある魔法使いの男。
それはまるで一方通行の片恋のようで……。
襲われていた男は魔法使いの男にちょっぴり同情した。
「怪我は無ェか?」
「あ、あァ、これぐらい、大したことないさ」
唇を切って血を流していたが、手の甲でそれを拭いながら男は答えた。そして、少し汚れた衣服をパンパンと叩きながら荷物を肩に担いだ。
「おれはレイナード。行商をやってるんだ」
「行商?」
「あァ。だが今日は生憎売り物は無いがね……。あいつらにブッ壊されたからな」
レイナードはそう言って少し悔しそうな表情を浮かべたが直ぐに笑みへと変えた。
「でも…、まァ、あんたが来てくれて助かった。ありがとよ」
「偶々通り掛かった所で良かったよい」
「礼は直ぐにできないが……」
「いや、礼なんて気にする必要は無ェよい」
「そうか? あ、なら、今度会った時には良いアイテムや武器を提供するよ」
「あァ、そりゃあ助かるよい」
「じゃあ、おれは行くよ」
レイナードはマルコやルークに軽く頭を下げるとマルコ達が来た方角――カサディス村に向けて歩き出した。が、レイナードの足取りは重たそうに見える。
その背中をしばし見つめていたマルコは、何となく心配して声を掛けた。
「一人で大丈夫かい?」
「あァ、説得力が無いかもしれないが、これでも旅には慣れてる方だから同じ轍は踏まないさ! 安心してくれ!」
レイナードは振り向いてそう答えた。
微笑を浮かべたマルコが「気を付けてな」と声を掛けると、レイナードは手を振ってそのままカサディス村へと歩いて行った。
「では、我々も宿営地へ参りましょう」
ルークがマルコにそう声を掛けると振り向いたマルコは少し考え込んでから口を開いた。
「ルーク」
「はい、何でしょう?」
「さっきのあれは魔法ってやつか?」
「えぇ、そうです」
「確か魔法を使うのは……」
「あ、はい。ジョブにより戦闘における能力が変わります。私の場合はメイジになります」
「メイジ?」
「はい。杖を主な武器として攻守両方の魔法を操る魔法使いの基本職を『メイジ』と呼びます」
「へェ…。基本職ってェことは他にもあるってェことかい?」
「はい。ある程度の修練を得れば上級職であるソーサラーに就くことが可能となります」
ルークがゴブリンに放った魔法は、ファイアーボールと呼ばれる炎属性の基本魔法だ。
腕を組んで片手を顎に当てながら先程見た光景を思い返したマルコは、何となく末弟の姿が瞬間的に脳裏に浮かんで懐かしい記憶が蘇り微笑を零した。――っと、暢気に浸ってる場合じゃ無ェ。
直ぐにハッとして我に返ったマルコは、「コホンッ!」と一つ咳払いをして気を取り直した。
「ジョブってェと、おれは何になるのかわかるかい?」
「はい。覚者様は現在『ファイター』でございますね」
「ファイター?」
「はい。剣と盾を携え、カウンターを駆使した接近戦を得意とし、攻守のバランスに長けた戦場の要となる戦士です」
少し眉を顰めたマルコは、戦士ってェ柄じゃねェんだがと無意識に首筋に手を当てて小さく息を吐いた。
「おれはその辺のことがあまり詳しく無ェからよい、何なら宿営地までの間に簡単で良いから教えてくれねェか?」
「あ、はい、喜んで!」
異世界の人間とは言えこの世界で生きている以上はこの世界の理は絶対で、それは異世界の人間にも適用されるものなのだと察した。
この先、必ず必要となるだろう知識を予め蓄えておく必要があると考えたマルコは、苦手だとしながらも聞けば素直に何でも教えてくれるルークに、基本的な知識を学ぶべく積極的に話を聞きながら宿営地を目指すことにした。
「このジョブってェのは変更できるのか?」
「えぇ、可能です」
「へェ…。どうやってそれができるんだい?」
「例えば宿屋の主人にジョブの変更依頼をすれば簡単に変更可能でございます」
「な…!? そ、そんな簡単に変更できるのかよい!?」
「はい、そうですが……。そこまで驚かれることなのでしょうか?」
「……」
どこか訓練施設のようなところで基本的な知識や経験を積んで初めて職を変えることができるものじゃないのか――と、キョトンとするルークを前にしてマルコは困惑した。
「宿屋の主人と言ってもライセンス管理を任された方に限るみたいですが」
「ライセンス管理?」
「特殊な力を持ったアイテムを管理されているそうで、それにより能力の成長レベルを変更調整できるそうです」
そう、だよなァ……。と、何かよくわからないがホッとしたマルコは納得したように頷いた。
でなければ、この世界における宿屋の主人って何者なんだという話になる。ある意味で王や兵士より最重要人物は宿屋の主人だなんて可笑しいにも程がある。
「変更は直ぐにできるのか?」
「いえ、基本職となるレベルをある程度まで上げなければできないそうです。私はまだ下級職のメイジを極めておりませんので、人伝に聞いた話ぐらいにしかお教えできませんが……」
「成程な……」
暫くは『ファイター』としての基礎能力を上げることになるのか。元より格闘が基本だから別にそれは良いかとマルコは思った。
「なら、ライセンス管理を任された宿屋の主人ってェのは」
「領都の宿屋にいらっしゃいます。そこでは荷物も預かって頂けますし、この先の旅路では色々と重宝することになるかと。ですので、宿屋の主人とは友好な関係を築いておいて損はございません」
「そ、そうかい……」
最重要人物は宿屋の主人だなんて可笑しいにも程がある――は、どうやら可笑しくは無いようで、この世界における宿屋の主人なる位置付けは、重宝がられる程に高い位にあるのだと、これまでの認識を変える必要がある。
旅に出る直前にカサディス村の宿屋の主人をぞんざいに扱った記憶が蘇ったマルコは眉間に皺を寄せた。
恐らくライセンス管理なんて任されてはいないだろうが、それでも――と、若干ではあるが罪悪感を抱いて頭をカリカリと掻いた。
とりあえず宿営地で情報を集めた後、とりあえず領都に向かう。で、とりあえず竜王なる者と会って話をする。それが終ったら一先ずカサディス村に戻ろう。
そんな旅路プランが頭の中で自然と組み立てられた。
そして――
日が落ちて辺りが暗くなる頃に宿営地に到着した。
「目的地に着きました。ご苦労様です」
ルークが労いの言葉を掛ける一方で、宿営地の門前で見張りをしていた兵士達がマルコに気付くと、何も言わずに門を開けたことにマルコは少し驚いた。
何も言わずに兵士達を一瞥して宿営地の中へと歩を進めると、
「あの男が例の……?」
「ドラゴンと戦ったらしい」
「胸に大きな傷……噂どおりだ」
「不思議な力を持ってるらしい」
等々、背中越しにそんな会話が聞こえて来た。
カサディス村で起きたドラゴンの襲撃の件は、どうやら瞬く間に広がったらしい。それはドラゴンを相手に逃げずに戦いを挑んだ男の風貌も込みだったようで、マルコを見るや否や直ぐに「覚者である」と判断して門を開けたのだと納得した。
宿営地の中はテントや櫓等が多く設営されており、武器を持つ者達がそこかしこに居る。ただ、鎧兜を身に付けている兵士だけでは無く、ルークと同様に旅路の様相をした者達が性別関係無くちらほら見掛ける。
恐らく鎧兜を身に付けた者達は領都の兵士で、それ以外はルークと同じポーンだと認識して間違いは無さそうだ。
『ようこそ…。私の声が、届いていますでしょうか?』
周りを見渡していたマルコは、大気を震わせるように大きく響く声が聞こえて足を止めた。
何だ?と、少し眉を顰めたマルコは、傍を歩くルークに目を向けた。
しかし、ルークには聞こえていないのか「私の知る通り――」と相変わらずマイペースで喋っている。だがそれはルークだけでは無い。宿営地にいる誰もが平然としていて、誰もこの声に気付いていない様子だ。
おれにしか聞こえてねェのか……。
ドラゴンの類か何かかと一瞬思ったが声音が違う。とりあえずこの現象についてどう思うか聞こうとルークに声を掛けようとした時、喋りつづけていたルークは「付近に”リム”があったはずです」と言った。
「……リム?」
その言葉に妙な引っ掛かりを覚えたマルコは思わず反芻した。
「覚者様、ご案内致します。私に付いて来てください」
「あ、おい!」
マルコの問いに答えないままルークは足早に歩き出した。眉間に少し皺を寄せて小さくかぶりを振ったマルコは、ルークの後を追って宿営地の真ん中に位置する一際大きく立派なテントの前に辿り着いた。
ルークは迷う事無くテントの中に入ろうとした。それを待てとマルコが咄嗟に手を伸ばしてルークの腕を掴み引き留めた。
「どうされました?」
さも不思議そうに首を傾げるルークに、マルコはどうもこうも無ェと首を振った。
このような如何にも公の兵士宿地なる場所に、海賊である自分がいること自体あり得ないことだ。
この世界に『海軍』は無いが、領都の兵士達を見ていると似たような立場の者達であることは明白で、ここ宿営地は言うなれば海軍基地といったところだろう。
わかっていたとは言えども元来海賊であるマルコは、やはり気持ちがザワついて落ち着かないのだ。『声』の件も気にはなっているが、あまりここで目立つような行動はしたくないと思うのは当然で、当たり前のようにテント内に足を踏み入れようとするルークの行動に焦ってしまうのは仕方が無いことだ――が、ルークはそんなマルコの心境など知る由も無い。
「ですから、中に」
「いや、中に何かあるんだろうが、勝手に入ったりしたら色々と不味いんじゃねェのかよい」
制止の言葉にも構わずに中に入ろうとするルークに説得を試みていたマルコに「覚者様でございますね?」と声が掛かった。
「!」
振り向いて見れば、兵士のように鎧兜を身に纏うわけでも無く、ポーン(と思われる)のように旅の様相をしたわけでも無い。どこか王宮で卓上の仕事をしていそうな出で立ちをした男がマルコの元へと歩み寄って来た。
「お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください」
「ッ…、良いのか?」
「えぇ、ここは指令本部となりますが…、中央にあるリムストーンが覚者様を呼び掛けておいでです」
「!」
男の言葉にマルコは目を丸くした。そして、ルークに顔を向けるとニコリと笑みを浮かべた。
「ほら、覚者様」
ルークはマルコに中へ入るように促した。言われるが儘に中へと通されたマルコは、不思議な文様が刻まれた大きな石碑に気付いて目を見開いた。
これは……!
サッチが見せに来たガラクタの中の石板に刻まれていた不思議な文様とそっくりだ。あの石板との違いがあるとすれば、この石碑は中心から外側に向けて繰り返し不思議な輝きを放っていることぐらいだ。
「声が聞こえておられるはずです」
「ッ……」
入口付近で立ち止まったルークは、マルコにリムストーンの前へ行くように促した。多少警戒しながらマルコがリムストーンの前に立つと、先程聞いた声がより大きく鮮明な音となってマルコの耳に届いた。
『ようこそ…。私の声が、届いていますでしょうか?』
「あァ、聞こえるよい」
『遠い場所からお呼び掛けしています。我々ポーンの民は、あなたを待っておりました。わけあって、まずはこのような形でのご接触となることをお許しください』
リムストーンの声を聞きながらマルコは少し眉を顰めた。まるでこの石を介して連絡をしている風な物言いが気になる。
電伝虫みてェなもんか?
恐らく魔法か何かでこの石を媒介に呼び掛けているのだろう。半ば無理矢理にそう理由を付けて自分自身に納得させながら黙って声に耳を傾ける。
『これは”リム”。我々ポーンが、この世界と繋がる為の、門のようなもの。そして…”覚者”は強い意志と勇気を持って、我々ポーンを従える存在』
「!」
ポーンを従える存在…だって?
ただでさえポーンがどういった連中で、どういう存在なのか明確でないというのに、それを従えるのが覚者であり、その覚者というのが自分で、覚者となったのはドラゴンに心臓を奪われた為であって――。
マルコは腕を組むと眉間に皺を寄せて苦悶の表情を浮かべながら目を瞑った。
わけがわからねェ。
異世界に落ちただけでも大きな事だというのに、どうしてこうも幾重にもなって意味不明な出来事が自分の身に起きるのか。
あまりにも不可抗力なこの状況に、マルコは心の底から辟易して苦い思いを抱いた。
納得できねェ……。と、胸の内でぼやいた時、ふとカサディス村の人々が脳裏を過る。
アダロやキナや子供達等、彼らの平和な暮らしが危険に晒され、ドラゴンという存在に恐怖しながらこれからも生きて行かなくてはならない。
そう思うと捨て置くことはどうしてもできない。恩義だとかそんな理由では無い。
彼らと共に過ごした貴重な時間は、大きな傷を持った心を癒してくれた。より優しく、より温かく、より強く、とても大切なものを貰ったと、確かに実感していた。
それに彼らは言ってくれた――『家族』だと。
白ひげ海賊団は『家族』を大事にする誇り高き集団だ。胸に刻まれていた(傷で消え掛けた)紺色の誇りに手を置いて大きく息を吐く。
オヤジ…。
亡き大恩ある敬愛すべき人を思い浮かべると、確かにその人はニヤリと笑みを浮かべた。
「何かと先々に考えを巡らして迷っちまうのは、てめェの悪い癖だなマルコ。出たとこ勝負も偶には面白ェと思わねェか? 大事なもんができたなら失う恐怖なんてもんはとっとと捨てて守りきる覚悟をしやがれバカ息子!」
ッ……!
死しても尚こうして叱咤してくれるのか。
思わずクツリと小さく笑ったマルコはゆっくりと目を開けた。
『あなたが覚者であると、そうだとおっしゃられるのなら…、その証、示していただけますでしょうか』
リムストーンの言葉に少しだけ目を丸くしたマルコだが、胸元に当てていた手をギュッと握って拳を作ると、片眉と口端を上げた笑みを浮かべてコクリと頷いた。
「あァ」
難しいことは正に出たとこ勝負で全て後回しだ。何を持って戦うのか、何を源に『強い意志』とするのか。
答えは簡単だ。
自分の胸に刻んだ誇りを汚すようなことは決してしない――そう、それが全てだ。その思いを胸に、明白に、心の底から覚悟ができた瞬間だった。
『わかりました。私が案内を務めます』
「案内?」
『これから議題をお伝えします。”覚者”の力があれば、達成は容易いでしょう』
何をさせる気だ?と、マルコは少し眉を顰めた。
『覚者たるもの、かかる脅威に立ち向かい、万事を避けなくてはなりません』
「……」
『”弛まぬ向上心”こそ、我々を繋ぐ絆。その証、是非お示しください』
リムストーンはその言葉を最後に不思議な輝きを抑えて静かになった。
「弛まぬ向上心ねェ……」
その脅威が何かってェのは教えてくれねェのかと思いながら踵を返したマルコは、入口で待っていたルークの元に向かった。
「覚者様!」
「どうした?」
「何やら皆が騒いでおいでで、外で何かあったようです!」
「!」
マルコはルークと共にテント外に出ると、鎧兜を身に纏った領都の兵士達が宿営地の門から急いで外へ出て行く姿があった。
「やつが来る、急ぐんだ!」
兵士の一人が声を張り上げて叫んだ。
「近くに凶暴な魔物がいるのかもしれません」
緊張した面持ちで背中の鞘に収まる杖を引き抜いたルークを前に、マルコは調べるまでもねェかとポツリと呟いた。
存外あっさりと答えを出してくれるんだなと拍子抜けしつつ剣を引き抜いたマルコは、兵士達の後を追ってルークと共に向かった。
話をはぐらかすまたと無い好機だとばかりに逡巡する間も無くマルコは剣を引き抜く。
「ルーク、あいつを助けるよい」
「あ、お待ちください覚者様!」
制止する声に従うわけも無く駆け出したマルコに、ルークは慌てて後を追った。
「くそっ! こいつら!」
ゴブリンに囲まれていた男は、身体を守るように両腕を交差して身動きが取れずにいた。それを良いことにゴブリン達は「グギャギャッ!」「キーキー!」と意気揚々に棍棒を振り回して男に襲い掛かっていた。
大きな棍棒を振り翳して男に殴り掛かろうとするゴブリンに殴られる激痛を覚悟した男は、全身に力を入れて身を屈めて目を瞑り歯を食い縛った。
ガキィィン!!
「グギャッ!?」
「え……?」
想像していた痛みが襲うどころか金属質の音が直ぐ側で鳴り響いたことに不思議に思った男は恐る恐る顔を上げた。
自分に向けて振り下ろされたはずの棍棒は、剣によって受け止められ、それどころか「ガキンッ!」と大きな音を上げて弾き飛ばされていた。
棍棒を持っていたゴブリンは、弾かれる勢いのままにバランスを崩してゴロンと後ろに倒れた。慌てて体勢を取り直そうとしたゴブリンだったが、男の前に立ちはだかる者の姿を見るや否や顔色を変えた。
「オマエハ!」
「ったく、お前ェらは相手が弱けりゃとことん強気だな」
「「「バケモノ!!」」」
「え?」
「はァ!? てめェらに化け物呼ばわりされたかねェよい!!」
化物呼ばわりするゴブリン達に声を張ってマルコは反論した。そして、襲われていた男がゴブリンと助けてくれた男とを交互に視線を向けていると、
「覚者様の敵は我が敵なり!!」
「グギャッ!?」
「!」
新たな男が杖を翳してゴブリン達に容赦無く攻撃を仕掛けた。杖先で蓄えられた魔力によって放たれた炎の弾丸がゴブリン達を襲う。
「ニゲロー!」
ゴブリン達は堪らずに蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
杖を持った男が「ふぅ…」と息を吐くと背中にある鞘に杖を納め、襲われていた男を助けた男の元に駆け寄って「覚者様、お怪我はございませんか?」と凛々しい顔付きで問い掛けていた。
「あ、あァ……、ご、ご苦労さん」
「いえ、覚者様をお守りするのが私の務めでございます。早速、お役に立てて光栄でございます」
微かに笑みのようなものを浮かべた魔法使いの男。夕日に照らされてか歯がキラリと輝いたように見えた。
一方、覚者と呼ばれた男は頬をヒクリと引き攣らせた微笑を浮かべるだけで、それ以上何も答える気は無いようで、小さくかぶりを振って溜息を吐いていた。
覚者と呼ばれた彼はどうもこの魔法使いの男が苦手なようだ――ということを、襲われていた男は何となく察した。
相手がかなり引いてることを気付いてすらいない哀れな状況にある魔法使いの男。
それはまるで一方通行の片恋のようで……。
襲われていた男は魔法使いの男にちょっぴり同情した。
「怪我は無ェか?」
「あ、あァ、これぐらい、大したことないさ」
唇を切って血を流していたが、手の甲でそれを拭いながら男は答えた。そして、少し汚れた衣服をパンパンと叩きながら荷物を肩に担いだ。
「おれはレイナード。行商をやってるんだ」
「行商?」
「あァ。だが今日は生憎売り物は無いがね……。あいつらにブッ壊されたからな」
レイナードはそう言って少し悔しそうな表情を浮かべたが直ぐに笑みへと変えた。
「でも…、まァ、あんたが来てくれて助かった。ありがとよ」
「偶々通り掛かった所で良かったよい」
「礼は直ぐにできないが……」
「いや、礼なんて気にする必要は無ェよい」
「そうか? あ、なら、今度会った時には良いアイテムや武器を提供するよ」
「あァ、そりゃあ助かるよい」
「じゃあ、おれは行くよ」
レイナードはマルコやルークに軽く頭を下げるとマルコ達が来た方角――カサディス村に向けて歩き出した。が、レイナードの足取りは重たそうに見える。
その背中をしばし見つめていたマルコは、何となく心配して声を掛けた。
「一人で大丈夫かい?」
「あァ、説得力が無いかもしれないが、これでも旅には慣れてる方だから同じ轍は踏まないさ! 安心してくれ!」
レイナードは振り向いてそう答えた。
微笑を浮かべたマルコが「気を付けてな」と声を掛けると、レイナードは手を振ってそのままカサディス村へと歩いて行った。
「では、我々も宿営地へ参りましょう」
ルークがマルコにそう声を掛けると振り向いたマルコは少し考え込んでから口を開いた。
「ルーク」
「はい、何でしょう?」
「さっきのあれは魔法ってやつか?」
「えぇ、そうです」
「確か魔法を使うのは……」
「あ、はい。ジョブにより戦闘における能力が変わります。私の場合はメイジになります」
「メイジ?」
「はい。杖を主な武器として攻守両方の魔法を操る魔法使いの基本職を『メイジ』と呼びます」
「へェ…。基本職ってェことは他にもあるってェことかい?」
「はい。ある程度の修練を得れば上級職であるソーサラーに就くことが可能となります」
ルークがゴブリンに放った魔法は、ファイアーボールと呼ばれる炎属性の基本魔法だ。
腕を組んで片手を顎に当てながら先程見た光景を思い返したマルコは、何となく末弟の姿が瞬間的に脳裏に浮かんで懐かしい記憶が蘇り微笑を零した。――っと、暢気に浸ってる場合じゃ無ェ。
直ぐにハッとして我に返ったマルコは、「コホンッ!」と一つ咳払いをして気を取り直した。
「ジョブってェと、おれは何になるのかわかるかい?」
「はい。覚者様は現在『ファイター』でございますね」
「ファイター?」
「はい。剣と盾を携え、カウンターを駆使した接近戦を得意とし、攻守のバランスに長けた戦場の要となる戦士です」
少し眉を顰めたマルコは、戦士ってェ柄じゃねェんだがと無意識に首筋に手を当てて小さく息を吐いた。
「おれはその辺のことがあまり詳しく無ェからよい、何なら宿営地までの間に簡単で良いから教えてくれねェか?」
「あ、はい、喜んで!」
異世界の人間とは言えこの世界で生きている以上はこの世界の理は絶対で、それは異世界の人間にも適用されるものなのだと察した。
この先、必ず必要となるだろう知識を予め蓄えておく必要があると考えたマルコは、苦手だとしながらも聞けば素直に何でも教えてくれるルークに、基本的な知識を学ぶべく積極的に話を聞きながら宿営地を目指すことにした。
「このジョブってェのは変更できるのか?」
「えぇ、可能です」
「へェ…。どうやってそれができるんだい?」
「例えば宿屋の主人にジョブの変更依頼をすれば簡単に変更可能でございます」
「な…!? そ、そんな簡単に変更できるのかよい!?」
「はい、そうですが……。そこまで驚かれることなのでしょうか?」
「……」
どこか訓練施設のようなところで基本的な知識や経験を積んで初めて職を変えることができるものじゃないのか――と、キョトンとするルークを前にしてマルコは困惑した。
「宿屋の主人と言ってもライセンス管理を任された方に限るみたいですが」
「ライセンス管理?」
「特殊な力を持ったアイテムを管理されているそうで、それにより能力の成長レベルを変更調整できるそうです」
そう、だよなァ……。と、何かよくわからないがホッとしたマルコは納得したように頷いた。
でなければ、この世界における宿屋の主人って何者なんだという話になる。ある意味で王や兵士より最重要人物は宿屋の主人だなんて可笑しいにも程がある。
「変更は直ぐにできるのか?」
「いえ、基本職となるレベルをある程度まで上げなければできないそうです。私はまだ下級職のメイジを極めておりませんので、人伝に聞いた話ぐらいにしかお教えできませんが……」
「成程な……」
暫くは『ファイター』としての基礎能力を上げることになるのか。元より格闘が基本だから別にそれは良いかとマルコは思った。
「なら、ライセンス管理を任された宿屋の主人ってェのは」
「領都の宿屋にいらっしゃいます。そこでは荷物も預かって頂けますし、この先の旅路では色々と重宝することになるかと。ですので、宿屋の主人とは友好な関係を築いておいて損はございません」
「そ、そうかい……」
最重要人物は宿屋の主人だなんて可笑しいにも程がある――は、どうやら可笑しくは無いようで、この世界における宿屋の主人なる位置付けは、重宝がられる程に高い位にあるのだと、これまでの認識を変える必要がある。
旅に出る直前にカサディス村の宿屋の主人をぞんざいに扱った記憶が蘇ったマルコは眉間に皺を寄せた。
恐らくライセンス管理なんて任されてはいないだろうが、それでも――と、若干ではあるが罪悪感を抱いて頭をカリカリと掻いた。
とりあえず宿営地で情報を集めた後、とりあえず領都に向かう。で、とりあえず竜王なる者と会って話をする。それが終ったら一先ずカサディス村に戻ろう。
そんな旅路プランが頭の中で自然と組み立てられた。
そして――
日が落ちて辺りが暗くなる頃に宿営地に到着した。
「目的地に着きました。ご苦労様です」
ルークが労いの言葉を掛ける一方で、宿営地の門前で見張りをしていた兵士達がマルコに気付くと、何も言わずに門を開けたことにマルコは少し驚いた。
何も言わずに兵士達を一瞥して宿営地の中へと歩を進めると、
「あの男が例の……?」
「ドラゴンと戦ったらしい」
「胸に大きな傷……噂どおりだ」
「不思議な力を持ってるらしい」
等々、背中越しにそんな会話が聞こえて来た。
カサディス村で起きたドラゴンの襲撃の件は、どうやら瞬く間に広がったらしい。それはドラゴンを相手に逃げずに戦いを挑んだ男の風貌も込みだったようで、マルコを見るや否や直ぐに「覚者である」と判断して門を開けたのだと納得した。
宿営地の中はテントや櫓等が多く設営されており、武器を持つ者達がそこかしこに居る。ただ、鎧兜を身に付けている兵士だけでは無く、ルークと同様に旅路の様相をした者達が性別関係無くちらほら見掛ける。
恐らく鎧兜を身に付けた者達は領都の兵士で、それ以外はルークと同じポーンだと認識して間違いは無さそうだ。
『ようこそ…。私の声が、届いていますでしょうか?』
周りを見渡していたマルコは、大気を震わせるように大きく響く声が聞こえて足を止めた。
何だ?と、少し眉を顰めたマルコは、傍を歩くルークに目を向けた。
しかし、ルークには聞こえていないのか「私の知る通り――」と相変わらずマイペースで喋っている。だがそれはルークだけでは無い。宿営地にいる誰もが平然としていて、誰もこの声に気付いていない様子だ。
おれにしか聞こえてねェのか……。
ドラゴンの類か何かかと一瞬思ったが声音が違う。とりあえずこの現象についてどう思うか聞こうとルークに声を掛けようとした時、喋りつづけていたルークは「付近に”リム”があったはずです」と言った。
「……リム?」
その言葉に妙な引っ掛かりを覚えたマルコは思わず反芻した。
「覚者様、ご案内致します。私に付いて来てください」
「あ、おい!」
マルコの問いに答えないままルークは足早に歩き出した。眉間に少し皺を寄せて小さくかぶりを振ったマルコは、ルークの後を追って宿営地の真ん中に位置する一際大きく立派なテントの前に辿り着いた。
ルークは迷う事無くテントの中に入ろうとした。それを待てとマルコが咄嗟に手を伸ばしてルークの腕を掴み引き留めた。
「どうされました?」
さも不思議そうに首を傾げるルークに、マルコはどうもこうも無ェと首を振った。
このような如何にも公の兵士宿地なる場所に、海賊である自分がいること自体あり得ないことだ。
この世界に『海軍』は無いが、領都の兵士達を見ていると似たような立場の者達であることは明白で、ここ宿営地は言うなれば海軍基地といったところだろう。
わかっていたとは言えども元来海賊であるマルコは、やはり気持ちがザワついて落ち着かないのだ。『声』の件も気にはなっているが、あまりここで目立つような行動はしたくないと思うのは当然で、当たり前のようにテント内に足を踏み入れようとするルークの行動に焦ってしまうのは仕方が無いことだ――が、ルークはそんなマルコの心境など知る由も無い。
「ですから、中に」
「いや、中に何かあるんだろうが、勝手に入ったりしたら色々と不味いんじゃねェのかよい」
制止の言葉にも構わずに中に入ろうとするルークに説得を試みていたマルコに「覚者様でございますね?」と声が掛かった。
「!」
振り向いて見れば、兵士のように鎧兜を身に纏うわけでも無く、ポーン(と思われる)のように旅の様相をしたわけでも無い。どこか王宮で卓上の仕事をしていそうな出で立ちをした男がマルコの元へと歩み寄って来た。
「お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください」
「ッ…、良いのか?」
「えぇ、ここは指令本部となりますが…、中央にあるリムストーンが覚者様を呼び掛けておいでです」
「!」
男の言葉にマルコは目を丸くした。そして、ルークに顔を向けるとニコリと笑みを浮かべた。
「ほら、覚者様」
ルークはマルコに中へ入るように促した。言われるが儘に中へと通されたマルコは、不思議な文様が刻まれた大きな石碑に気付いて目を見開いた。
これは……!
サッチが見せに来たガラクタの中の石板に刻まれていた不思議な文様とそっくりだ。あの石板との違いがあるとすれば、この石碑は中心から外側に向けて繰り返し不思議な輝きを放っていることぐらいだ。
「声が聞こえておられるはずです」
「ッ……」
入口付近で立ち止まったルークは、マルコにリムストーンの前へ行くように促した。多少警戒しながらマルコがリムストーンの前に立つと、先程聞いた声がより大きく鮮明な音となってマルコの耳に届いた。
『ようこそ…。私の声が、届いていますでしょうか?』
「あァ、聞こえるよい」
『遠い場所からお呼び掛けしています。我々ポーンの民は、あなたを待っておりました。わけあって、まずはこのような形でのご接触となることをお許しください』
リムストーンの声を聞きながらマルコは少し眉を顰めた。まるでこの石を介して連絡をしている風な物言いが気になる。
電伝虫みてェなもんか?
恐らく魔法か何かでこの石を媒介に呼び掛けているのだろう。半ば無理矢理にそう理由を付けて自分自身に納得させながら黙って声に耳を傾ける。
『これは”リム”。我々ポーンが、この世界と繋がる為の、門のようなもの。そして…”覚者”は強い意志と勇気を持って、我々ポーンを従える存在』
「!」
ポーンを従える存在…だって?
ただでさえポーンがどういった連中で、どういう存在なのか明確でないというのに、それを従えるのが覚者であり、その覚者というのが自分で、覚者となったのはドラゴンに心臓を奪われた為であって――。
マルコは腕を組むと眉間に皺を寄せて苦悶の表情を浮かべながら目を瞑った。
わけがわからねェ。
異世界に落ちただけでも大きな事だというのに、どうしてこうも幾重にもなって意味不明な出来事が自分の身に起きるのか。
あまりにも不可抗力なこの状況に、マルコは心の底から辟易して苦い思いを抱いた。
納得できねェ……。と、胸の内でぼやいた時、ふとカサディス村の人々が脳裏を過る。
アダロやキナや子供達等、彼らの平和な暮らしが危険に晒され、ドラゴンという存在に恐怖しながらこれからも生きて行かなくてはならない。
そう思うと捨て置くことはどうしてもできない。恩義だとかそんな理由では無い。
彼らと共に過ごした貴重な時間は、大きな傷を持った心を癒してくれた。より優しく、より温かく、より強く、とても大切なものを貰ったと、確かに実感していた。
それに彼らは言ってくれた――『家族』だと。
白ひげ海賊団は『家族』を大事にする誇り高き集団だ。胸に刻まれていた(傷で消え掛けた)紺色の誇りに手を置いて大きく息を吐く。
オヤジ…。
亡き大恩ある敬愛すべき人を思い浮かべると、確かにその人はニヤリと笑みを浮かべた。
「何かと先々に考えを巡らして迷っちまうのは、てめェの悪い癖だなマルコ。出たとこ勝負も偶には面白ェと思わねェか? 大事なもんができたなら失う恐怖なんてもんはとっとと捨てて守りきる覚悟をしやがれバカ息子!」
ッ……!
死しても尚こうして叱咤してくれるのか。
思わずクツリと小さく笑ったマルコはゆっくりと目を開けた。
『あなたが覚者であると、そうだとおっしゃられるのなら…、その証、示していただけますでしょうか』
リムストーンの言葉に少しだけ目を丸くしたマルコだが、胸元に当てていた手をギュッと握って拳を作ると、片眉と口端を上げた笑みを浮かべてコクリと頷いた。
「あァ」
難しいことは正に出たとこ勝負で全て後回しだ。何を持って戦うのか、何を源に『強い意志』とするのか。
答えは簡単だ。
自分の胸に刻んだ誇りを汚すようなことは決してしない――そう、それが全てだ。その思いを胸に、明白に、心の底から覚悟ができた瞬間だった。
『わかりました。私が案内を務めます』
「案内?」
『これから議題をお伝えします。”覚者”の力があれば、達成は容易いでしょう』
何をさせる気だ?と、マルコは少し眉を顰めた。
『覚者たるもの、かかる脅威に立ち向かい、万事を避けなくてはなりません』
「……」
『”弛まぬ向上心”こそ、我々を繋ぐ絆。その証、是非お示しください』
リムストーンはその言葉を最後に不思議な輝きを抑えて静かになった。
「弛まぬ向上心ねェ……」
その脅威が何かってェのは教えてくれねェのかと思いながら踵を返したマルコは、入口で待っていたルークの元に向かった。
「覚者様!」
「どうした?」
「何やら皆が騒いでおいでで、外で何かあったようです!」
「!」
マルコはルークと共にテント外に出ると、鎧兜を身に纏った領都の兵士達が宿営地の門から急いで外へ出て行く姿があった。
「やつが来る、急ぐんだ!」
兵士の一人が声を張り上げて叫んだ。
「近くに凶暴な魔物がいるのかもしれません」
緊張した面持ちで背中の鞘に収まる杖を引き抜いたルークを前に、マルコは調べるまでもねェかとポツリと呟いた。
存外あっさりと答えを出してくれるんだなと拍子抜けしつつ剣を引き抜いたマルコは、兵士達の後を追ってルークと共に向かった。
覚者たる覚悟
【〆栞】