20

マルコはパッキンがいるという島に辿り着いた。
周囲を警戒しながらアルドの気配を探る。しかし、当のアルドはアサシンだ。そう簡単に気配を探られるようではアサシン失格だろう。更に、アルドは人の気配にも敏感だ。此方が近付けば気配を察知して身を隠す可能性が高い。
マルコは自らの気配を極力消して鬱蒼とした森の中へと静かに入って行った。

―― 気配を限りなくゼロに……か。かなり神経がいる。

アルドは普段からこんな状態でいるのかとこの時になって初めて知った。慣れもあるだろうが、やはり自然体で無いことは明らかだ。これでは心身共に休まる時なんてそう無いのではないかとさえ思う。

―― おれは何も……、何も知らねェんだな。

疑いや猜疑心を向ける暇があるのなら、少しでも理解して寄り添い、信じることに労力を注げてやればどれ程良かったか。例え立場がそうさせたとしても、あまりにも無神経で、気付くのが遅過ぎた気がして、悪かったと思う気持ちが自然と湧いた。

―― 今更って思うかもしれねェが……。

心内で一つ決めた。マルコはその思いを強く秘めてアルドを探した。





ファブリナ島、第五支部教団――。アサシン教団の頂点に君臨する大導師の下、『赤』『青』『緑』『黄』と分けられた最高幹部の四人を『四将』と呼び、赤を纏う第五支部教団の彼らは赤の将の管轄下となる者達だ。

赤の将は四将の中で最も地位が高く中心でもある存在だ。実力も知識も兼ね備えた大導師の忠実なる僕であることが必須とされる。
アルドが身に付けているこの赤いサッシュは四将の名残のようなものだ。
ほんの少しだけの期間ではあったが、史上最年少でマスターという最高位の称号を与えられた当初のアルド――#イルマ#は、他の誰よりもその『僕』に相応しい赤の将であった。

―― 見知った顔は無いな……。

脱走した後の空席となったその座に今は誰が就いているのか。気にはなったが、誰であれどのみち倒すべき敵なのだからどうでも良い――と、アルドは思考を切り替えた。

数人程目撃した赤のアサシン達を尾行して人数を確認する。この島にいるアサシンは恐らく多くても二十人いるかいないかだ。
彼らの中心となる男が必ずどこかにいるはずなのだが、何度か追跡を試みるもののそういった人物との関わりが無い者ばかりで未だに辿り着けてはいない。

「腕は確かだ。……だが、」

正直なところ彼らは気配を完璧に消せてはいない。こうも簡単に見つけられて尾行されるようではアサシンとは呼べない。まだまだ訓練が足りていない証拠だ。
次で何人目となるか、新たなアサシンを見つけて追跡を開始する。
例え下っ端だったとしても赤を担う者であればもう少し――と、尾行しながらアルドは思った。

〜〜〜〜〜

「ただ単にお前ェが完璧過ぎんじゃねェのか?」

〜〜〜〜〜

ラクヨウの声が聞こえた気がした。――まさか。そんなことは無い――と、小さく独り言ちながら先を行くアサシンの後を追跡して行く。
暫くすると森を抜けて街道を行くと一際派手で異様な街に辿り着いた。
日が落ちて夜を迎えたというのに、煌びやかに光り輝く街の中をパッキンの様な如何にも金が好きそうな成金達が大勢、煌々と輝く街に負けないぐらいの派手な衣装を身に付けて行き交っている。
これならば赤色の衣服はそう目立つものでは無く、人混みの中に上手く溶け込むことができていた。しかし、例えそうであったとしても【 イーグルアイ 】を駆使すれば、ターゲットとなる人物だけを特定して引き離される事も無くすんなりと後を追うことができる。
アルドは臆すること無く人々の中に紛れ込んで追跡を続けた。
目的のアサシンが裏路地へと入って行く。恐らくそこで他の仲間と落ち合う予定なのだろう。
アルドは人混みを外れると別の路地へと入って静かに屋根へと駆け上がった。
裏路地の先にある小さな広場で周囲を警戒しながら同胞のアサシンと落ち合っている姿を確認した。
屋根の上に潜むアルドは、聴覚に集中して彼らの話を盗聴することにした。

「海軍は既に潰された。流石は白ひげ海賊団と言わざるを得ん」
「そうか。で、報告はそれだけではあるまい?」
「何度か伺ってみたが隙は確かにある。白ひげまでは難しいかもしれんが、隊長連中なら可能だろう」
「その中でも核となる者を狙えば瓦解する可能性はあるのか?」
「さァな、五分五分といったところか。1番隊隊長を殺せるならそれが最も効果的だろうが、白ひげ以上に警戒心が強くなかなか手強い」
「悪魔の実の能力は我々には通用せんが……、不死鳥は確かに厄介だな。覇気を纏いつつ暗殺を仕掛けるには骨が折れる。警戒心が強い相手なら尚更慎重さと集中力がいる。四将ならいざ知らず、我々では少し荷が重いか」
「万が一にでも近付き首を掻っ切ったとしても、気配を消したまま武装色の覇気を纏うなど我々には到底できん。……長なら可能かもしれんが」
「わかった。その件は長に直接伝えておく。不死鳥以外を標的とするなら誰を狙う?」
「4番隊辺りが無難だろう。食を担う連中だ」
「そうか。ならば部下を数名連れて4番隊の殲滅に掛かるとしよう。あァ、アジトはそれぞれに分けて配置した。これがその配置図だ。頭に入れておけ」
「わかった」
「ぬかるなよ? 相手は海賊でも世界最強の海賊団だ。本部が暗殺対象に挙げても革命の日まで対象外とした奴らだからな」
「あァ」

会話を終えた二人は周囲を警戒しながら何事も無かったかのように別れた。

―― 革命の日……?

アルドは少しだけ眉間に皺を寄せた。
遠い過去に一度だけ顔を合わせたことのある大導師の顔が脳裏に浮かんだ。
誇らしげな笑みを浮かべる老齢の顔が印象的だったが、その笑みの裏に潜む高慢さと果てしない強欲さが見え隠れしていて、こんな男の為に自分は戦うのか――と、到底敬愛の念を持つべき対象とは思えなかったことを覚えている。

―― 心を殺してまで……? ――

『マスターアサシン』の称号と『赤』の地位を授かる時に、心の奥底で芽生えた疑念はずっと消えることは無かった。指令を下された仕事を黙々と熟していく中でも疑念はどんどん大きくなっていった。
どういう理由で『暗殺対象』が決められるのか等――そんなことを考えてはアサシンが勤まらないのはわかっていたが、どうしても沸き起こる疑念は払拭できずにいた。感情なんて持っていなかったはずなのに、心がザワザワとざわつく度に疑念が生じて胸を圧迫する。

アサシンとはどうあるべきなのだろうか。
アサシンとは一体何の為に存在するのだろうか。
人の命を、運命を、左右できる程に偉いものなのか――。

感情の起こりと心の変遷があったからこそ、あの逃亡劇を生んだのかもしれない。
弟(アルド)が見抜いた姉(#イルマ#)の『真実』が大導師の知る所になれば、恐らくそれは握り潰されて殺されただろう。
ただでさえ情を持たない人間離れした存在だ。芽生え始めたあらゆる心が殺され感情が消えるようなことになれば、それこそ機械仕掛けの人形と変わらない生きた屍となって大導師の都合の良い道具となるだけだ。
今思えばそうなってもおかしくは無かった――と、アルドは溜息を吐くと小さくかぶりを振って現実に意識を戻した。

二手に別れたアサシンのどちらを追うかは既に決めている。
先に尾行したアサシンだ。
アルドは慎重に人込みに紛れてそのアサシンに近付いた。
落ち合ったもう一人のアサシンから受け取った『配置図』を収めたポーチに手を伸ばしてそっと引き抜く。そして、足早にその場から離れると雑踏の中を颯爽と抜けて人の少ない落ち着ける場所にあったベンチに腰を下ろした。

ファブリナ島とは大小の島々が連なるここヒンプ諸島の中の一つだ。
現在いるのは諸島の中心地となるルナネカ島。白ひげ海賊団が寄港したのはファブリナ島とは対角線上に位置し、ルナネカ島から最も離れた間反対側のウボンビ島という小さな島だ。
ルナネカ島に住まう人々は金と権力を持ったパッキンが中心となって税の限りを尽くし、ウボンビ島の人々はパッキンを始めとするルナネカ島の者達の為だけに働き、金と食料を吸い上げられて苦しい生活を続けている。
ルナネカ島の人々からすればウボンビ島の人々はまるで家畜同然の扱いを受けていた。同じ人間でありながらこうまで醜く差別できるものなのか。ウボンビ島の人々にとって白ひげ海賊団の寄港は最後の希望だったに違いない。

世界に名を轟かせる四皇の一角。世界最強の海賊。

いくら高名であっても海賊は海賊だ。普通なら恐れ、嫌い、遠ざけたいはずだ。それでも彼らはその海賊に縋りつくのだから余程追い詰められていたに違いない。

「そうだ。これが……、これがアサシンの本来あるべき姿だ」

強者や権力者により自由を奪われ虐げられる人々を解放して自由を与えること。力無い人々の為に、そういった人々を食い物にする愚かな者達を罰する為に、最初のアサシンが生まれたのだ。

コルティノーヴィスという名のアサシン――。

遥か古き時代に生きた最初のアサシンと同じ名を背負う自分が、本来あるべきアサシンの精神から逸脱した裏切りの同胞達を殲滅することこそが、最後の真のアサシンとしての課せられた務めだ。

配置図を見つめながらアルドは改めて強く決意した。

「広範囲だな」

突如として声が聞こえてアルドは我に返った。

「え……?」

振り向いて見上げると「なっ!?」――と、素っ頓狂な声を漏らした。まさかの人物に珍しく瞠目して停止する。

―― どうしてあなたがここに!?

予想だにしていなかったマルコの登場だけでは無く、その存在に全く気付かなかったことがアルドを大きく動揺させた一因でもあった。

気配は一切感じなかった。
音すらも聞こえなかった。
どうやって近付いたのか。
いつからいたのか――。

酷く動揺しつつも表情はあくまでも『無』だ。しかし、アルドの奥底に揺らぐ心情は確かに存在し、それを感じ取ったマルコは配置図から視線を外してアルドに向けると片眉と口角を上げた笑みを浮かべた。

「なかなか手際良くスリをするもんだ」

驚くアルドを他所にマルコは隣に腰を下ろしてアルドが手にしている配置図を奪ってじっくり見つめた。

「い、いつから……?」
「尾行する辺りからだよい。見様見真似で”アルドを”尾行してみたんだが、今まで全く気付かなかったってェことは、おれもなかなかのもんだな」
「……」

マルコはクツリと笑うと配置図を畳んでアルドに返した。そうしてアルドの頭に手を置いて軽く二、三回程ポンポンと弾ませた。
アルドは黙ったままマルコをじっと見つめている。フードの陰に隠れたその表情が何を模しているかはわからない――が、口元だけは月明りにより曝されてポカンと開いたままだ。呆気に取られて整理ができていないのだろうということが容易にわかる。

―― どうして……? どうしてそんな……、あの時と同じ笑みを”おれに”向ける……?

チクリと胸に痛みが走る感覚にアルドは僅かに眉を顰めた。自ずとマルコから視線を外して遠くの方で行き交う人々をじっと見つめた。

心が明らかに動揺していることがわかる。
ここまで揺さぶられるものなのか――。
落ち着きが無く今にも走り出して逃げたい衝動に駆られる。
けど、動かない。動けない。何故?

「で、どれだけ時間を掛けて殲滅するつもりでいるんだ?」
「え……?」
「倒すんだろい?」
「ッ……、はい……」

アルドが声を詰まらせながら辛うじて返事をするとマルコは膝に片肘を突きながらその手を首筋に当てて微笑を零した。いつになく穏和で優しい笑みだ。それは遠いあの日に見た笑みと同じだった。
とても懐かしくて、でも、嬉しいと言うよりもどこか寂しさに似た悲しい気持ちがアルドの胸に去来する。
アルドはグッと呼吸を詰まらせながら静かに俯いて目を瞑った。

「とりあえずアサシンの頭を見つけねェとな。そいつを倒せばここにいるアサシン共は自然と瓦解するだろうよい」
「!」

マルコがそう言って立ち上がると同時にアルドは勢い良く顔を上げてマルコを仰ぎ見た。

「ま、待ってください! まさか、戦うつもりですか? あなたが?」

片眉を上げて見下ろすマルコはキョトンとしている。

「そのつもりで来たんだが……、都合が悪ィのか?」
「あ、いえ、そういうわけでは……」
「なら問題無ェ」
「ですが、マルコ隊長は船にいるべきなのでは? 纏め役のあなたがいなければ」
「おれが少々抜けて崩れるような奴らじゃねェよい」
「――ですが!」
「アルド、それはお前ェが一番よくわかっていることだ」
「!」

マルコは再びポンとアルドの頭に手を置いて笑みを浮かべた。
アルドは目を丸くして押し黙った。

大きく心が揺らぐ。
大きな波がうねりをあげて『覚悟と決意』を飲み込み消し去ろうとしている。

―― やめてくれ! おれはまだッ!

悲鳴にも似た気持ちを持ってその波に抗おうとする。だが、それは止まるどころか勢いが増した。

「アルド」
「……」
「最低限にしろよい」
「何を……?」
「殺す相手の数だ」
「え……?」
「殺す相手は頭だけ。それ以外は”殺すな”って言ってんだ」
「な、何故……?」
「人を殺す度に自分の心も殺しているからだよい」
「そ、そんなことは」
「見てられねェんだ」
「――ッ!」

眉尻を下げて少し困ったような表情を浮かべたマルコは、アルドの頭に置いた手で軽く小突くように押した。
軽く揺れる頭に自らの手を置いたアルドは顔を俯かせた。そうして何も話さなくなると、ふいにふわりと頬に触れるように手が添えられた。

――!

心臓が大きく跳ねた。

―― な、なに……?

顔を上げると真剣な顔をしたマルコと目が合った。

「オヤジから簡単にだがアルドに関する話を聞かせてもらったよい」
「!」

今度はピクンと身体が僅かに跳ねた。

―― 話した……? 何をッ、どこまで……!?

アルドの反応は明らかに『拒否』を示している――そう思ったマルコは表情を和らげた。

「嫌かい? 殆ど大雑把な説明だけで細かいところまでは話してねェよい。そう心配するな」
「ッ……、そう…ですか……」

アルドが自ずと胸を撫で下ろすようにホッとしているのがわかる。マルコは少しだけ眉をピクリと動かした。微笑を湛えた優しい表情が一転して悪い顔へと変わる。

「それでよい」
「え?」

ぐいっ!

「うぐっ!?」
「おれが手伝うから、三日じゃなく一日ちょいで終わらせるよい」

頬に添えられた手が顎下に伸びたと思った途端に顎を掴まれてぐいっと引き上げられた。
直ぐ目の前に青い目があって驚いたが、その目は鋭く自分を見据えていて、ドキンと心臓が跳ねることは一切無くて――。それはそれで良かったと思う自分がいて――。

「い、いえ、手伝わなくても」
「五月蠅ェ、口答えすんな。最後まで聞きやがれ」
「――ッ……!」
「全部片付けて帰ったら説教だ」
「な、何故?」
「一隊員風情が隊長に逆らって口答えするからだ。上の命令に反論するなんざァそれこそ規律違反じゃねェのかよい。え? アサシンさんよい」
「はい!?」

ラクヨウ相手にすら出したことの無い間抜けな素っ頓狂な声を上げてしまいアルド自身も驚いた。ここに来てまさか『立場』を口にされるとは思っていなかったからだ。しかし、目の前のマルコは一切それに反応を示さずにアルドを睨み付けたままだ。

「アサシンっつぅのは、そんな簡単に規律を侵す集団なのか? だとしたら少しがっかりだ」
「なっ……、なに?」
「大体お前ェ、”全ては家族の為に”って言うなら、もう少し身内に心を開いて話せっつぅんだよい」

マルコはそう言うとアルドの顎から手を離した。その手がゆらりと不穏な動きを見せる。

―― ?

戸惑っていたアルドの視界がフッと暗くなる。――え?――と思った瞬間にガシッと顔を鷲掴まれる感覚にアルドは目を丸くした。

「あと、この島に着いてから色々と書類が溜まってんだ。殲滅を手伝ってやるから、船に戻ったらおれの仕事を手伝え。わかったか?」

ミシミシミシ......。

マルコの指先に力が込められるとアルドの蟀谷が軋み始めて激痛が襲った。

「いっ〜!? 痛ッ〜あぐ!!」
「返事はどうした?」

意地の悪い笑みを浮かべながら問い掛けるマルコに対して声にならない声を上げてもがくアルドは胸の内で叫んだ。

―― この状態で返事なんてできるわけが無い!

あの傍若無人なラクヨウですらこんなことはしなかった。あまりの暴挙に驚いた。ただ痛みに耐えることしかできなかった。咄嗟に自分の顔面を掴むマルコの腕を両手で掴むとパッと離された。

「うぅ……」

涙が滲んで視界がぼやける。

「…………安心した」

アルドは両手で痛む蟀谷を軽く摩りながら右腕でグイッと目元を拭ってマルコを見上げた。

―― ッ……!

再び向けられたあの時と同じ笑みに反論する言葉は霧散して消えた。

「オヤジがラクヨウをお前に当てた理由がなんとなくわかった」
「……」
「殺す度に死ぬ心を揺り動かすにはラクヨウみてェな奴が打って付けだ。おれから見てもそう思う」

マルコはクツリと笑うと軽く溜息を吐いた。そして、どこを見るとも無く視線を逸らして表情を曇らせた。

「癪に障る」
「な、なんのプライドですか?」
「おれがラクヨウを認めることが癪に障んだよい。それがプライドなのかはわからねェが」
「ラクヨウ隊長はそれなりに頑張っていると思いますが……」
「それなりかよい。お前も結構な毒を吐く奴だな」

ケラケラと軽く笑うマルコにアルドもつい釣られて口元を孤にして笑みを浮かべた。そんなアルドにマルコは心の底からホッとした気分になった。

―― おかしな話だよい。つい先刻までおれはこいつを疑ってたってェのに……。

本当はどう声を掛ければ良いのか迷っていた。どう話してどう対応すれば良いのか迷いに迷った。その結果、対サッチの感覚で少し乱暴に出てみることにした。
これが意外にも功を奏して上手く対話することができた。おかげで胸のつかえが取れて心が軽くなるのを実感した。

――おれもまだまだ青いなァ。

マルコは軽く自嘲した。

「あの」
「なんだい?」
「おれは、その、7番隊の隊員です。1番隊の隊長であるマルコ隊長がどうして他の一隊員であるおれを助けるのですか?」
「関係無ェよい」
「関係…無い……?」
「同じ船に乗った家族なら隊とかそんなもん関係無く助けるもんだ。おれはお前が気になって仕方が無ェから、こうして後を追って来たんだよい」
「な、何故そんな……、こんなおれを気に掛けてくれるのですか?」
「さァなァ……。理由……いるか?」
「え?」
「家族を気に掛けて助けるのに理由なんてもんはいらねェだろうよい」

マルコはそう言うとアルドの両肩を軽く掴んで真っ直ぐ見つめた。

「勘違いするなアルド。おれ達は家族であって同胞じゃねェ」
「ッ!」

まるで何も知らない子供に教えるように、言い聞かせるように、一言一句丁寧にはっきりとした口調だった。

―― 今までずっと距離を置いて接していたのにどうして急にこんな……。おれはアルドで、決して#イルマ#じゃないのに……。#イルマ#じゃッ……マル…コ…さん……。

「そこを忘れるな。良いねい?」
「ッ、……は…い……」

――胸の鼓動が早く脈打つから、こんなにも胸が苦しくなるんだ――

アルドはただ素直に頷いて返事をすることしかできなかった。

本来あるべき姿は…。

〆栞
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