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(視点 : マルコ軸)

アルドを追ってマルコはロスカ国内に入った。
流石は中央都市国家。街はとても広い。更に、近々戴冠式が行われるだけあって、普段よりも大勢の人が所狭しと連なっている。
この中でアルドを見つけるのは容易では無い。

「はァ……、時期が来るまで待つしかねェか」

宛ても無く探し回るより動きを見せるだろうその時を待った方が良い。
アルドがどう動くのか。恐らくアサシンに対してでも、まずは『情報収集』から始めるはずだ。
ある程度の予測を立てながらその時が来るのをマルコは待つことにした。



戴冠式が行われる当日――。
マルコは人目の無い所で不死鳥と化して空を飛んだ。そして、城塞を越えて城内に侵入した。
物陰に隠れては周辺を伺い警戒する。そうして見回る衛兵の目を盗んでは更に城内奥へと突き進んで行く。

「あ! お、お前ッ――むぐ!!」

中庭に抜ける手前にある一室から男の声が聞こえた。
マルコは足を止めると気配を消して様子を伺った。

――!

如何にも王族と思われる煌びやかな衣服を身に纏った男が、首から血を流して倒れている。そして、窓から白い衣服に赤いサッシュを巻いた人物が逃走する姿があった。

「まさか、暗殺の場に立ち会うとはよい」

逃げたアサシンを追えばエースがいる場所に辿り着くかもしれない。それにアルドも何らかの形でエースの救出に動いているはずだ。エースがいる場所を突き止めればアルドに会える可能性は高い。
さて、アサシンに対してどれだけ気配を消して近付くことができるのか。アスランで一度撒かれている為に自信は無かった。
色々考えた挙句、結局は最も安易で、最も難しい方法を選ぶしか無い。

―― ヒンプ諸島でアルドの後をつけた時の事を思い出せ。

マルコは神経を研ぎ澄まして逃げたアサシンの後を慎重に追った。
そのアサシンは、中庭を超えた先の城壁と城壁の間にある路地を通っていった。人が一人やっと通れる程の細い路地だ。
マルコは少し間を置いてそこを突き進んだ。
角を曲がって直ぐのところにある突き当りで立ち止まったアサシンの姿に、マルコは慌てて足を止めて一歩二歩と下がって息を吐いた。
アサシンは足元にあった出っ張りをコンッと蹴った。それと同時にガコンッという音が鳴り響き、鉄の丸い蓋らしきものがズズズと開いていった。この通路と同じように、大人一人が通れるぐらいの穴の中へと入って行った。

「へェ……、隠し通路ってェやつか」

マルコは関心するように出っ張りを蹴ってその穴へと入った。滑り落ちるようにして着いた先は、暗く湿っていて真っ暗な地下水路だ。
マルコは右手に青い炎を最小限の大きさで灯して辺りを伺った。しかし、そこにアサシンの姿は無い。

―― 視覚変化か何かで見えるのか……?

特異な能力を持つ彼らにとっては、こんな暗闇の中でも悠々と歩けるのかもしれない。
マルコは、通路の感覚を捉えながら壁伝いに先へと進んだ。そうして暫く進んでどん付きを左に曲がる。その道なりの先で、赤い灯りが壁から漏れ出ているのが対面の壁に反射しているのが見えた。

―― あそこか。

マルコが小屋の所在を確認した時、突然そこから大きな物音が鳴ると同時にドアが勢い良く開かれた。数人のアサシンが剣を手にして身構えつつジリジリと後退しながら出て来た。

―― なんだ?

壁を背中にして様子を伺う。
小屋の灯りで映し出された光景は、同じ衣服を纏う者同士が敵対している姿があった。
一瞬、仲間割れかとも思ったが、マルコはクツリと笑みを浮かべた。
数人のアサシンを前にして悠然と立つアサシン。それが誰なのかが直ぐにわかったからだ。

―― 成程……。流石は、元アサシンってやつか。

アサシンの一人が攻撃を仕掛けようと動いた。その時、それに連動して他のアサシンが動こうとした。マルコは、それに呼応するように武装色の覇気を纏い、その内の一人に蹴りを放った。

「!」
「ぐあっ!」
「なっ!? なんだ!?」
「案外おれにも能力があるのかもしれねェなァ」

マルコは対立する彼らの間に立つとアサシンと同じ衣服を身に纏うアルドを見て笑った。

「…………わざとですよ」
「負け惜しみにしか聞こえねェよい」

無表情で機械的な表情が少し気掛かりではあったが、変わりなく言葉を掛けると返事があった。

―― 返事がある分、少し安心したよい。

数人のアサシンはその場から逃走した。
アルドはその後を追う事はしなかった。

「追わねェのか?」

マルコがそう声を掛けたが、アルドは何も言わずに踵を返して部屋へと入って行った。マルコはアサシン達が逃走した先に広がる暗闇を一瞥してからアルドを追うように部屋に入った。
かなり争ったのか、壊れた椅子や机がそこかしこに乱雑に転がっていた。その奥にある柱に目を向けると、海楼石の錠と鎖で繋がれたエースが力無く項垂れていた。

「エース!」

マルコが名を呼ぶとエースは顔を上げた。気恥ずかしさと申し訳無さとが混同した少し情けない表情を浮かべている。

「マルコッ…、悪ィな。ヘマしちまって……」
「鍵は?」
「アサシンが持ってんだ」

マルコの問いにエースが力無く答えた。すると、アルドは何やら鉛色の細い棒状のものを手にして海楼石の鍵穴に差し込んだ。

ガチャンッ――!

解錠される音が響いた。

「なんでもできるんだな」

エースが目を丸くして言った。

「いえ……」

アルドは小さな声でそう答えるに留めた。
そんなアルドにマルコは少し眉を動かした。

―― エースに慣れていないってわけじゃねェと思うが……、一際壁を作ってねェか?

マルコがそう思っている傍らで、海楼石が外されたエースは、漸く解放されたとばかりに立ち上がって蹴伸びをした。

「助かったぜ! アルド、ありがとな!」
「……」
「とりあえず、お前が無事で良かったよい。あとは、ここから脱出するだけだが……」

マルコはそこまで言うと部屋の出口へと顔を向けた。バシャッバシャッと激しく水を弾く音が徐々に近付いて来る。

「そう簡単に逃がしてはくれなさそうだよい」

外の気配を察して溜息混じりにそう零した。

追 跡

〆栞
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