42
(視点 : マルコ軸)
複数人の足音が聞こえた。どうやら逃走したアサシンが仲間を引き連れて戻って来たようだ。
「望むところだ。反撃してやるぜ」
エースはそう言って屈伸をした。戦う気満々だ。
「エース、今は逃げることを考えろよい」
マルコが窘めるように言うとエースは小さく首を振った。
「シルヴァーノって奴をぶん殴らねェとおれの気が収まらねェんだ」
「!」
エースの科白にアルドの身体がピクッと大きく反応した。
「アルド……?」
それに少し驚いたマルコが声を掛けた時、「あ、そういや」とエースが何かを思い出したように口を開いた。
「アルド、お前って――」
しかし、会話はそこで途切れた。
ヒュンッ――!
何かが投げ入れられる音に反応した三人はその場を飛び退いた。
ボフンッ!!
投げ込まれたそれが爆発を起こすと瞬く間に白い煙が辺りに充満した。
「クソッ! また煙幕かよ!」
エースは怒気を込めて声を荒げた。
その声を耳にしながら軽く咳き込んでいたマルコは、ハッとして咄嗟に身を引いた。正面から白い衣服を着た男が自分に向かって攻撃を仕掛けて来たことに気付いたからだ。
―― こいつは!
マルコはこの男がアスランで見かけたアサシンだと直ぐにわかった。
「流石は不死鳥マルコ。火拳とは反応が違うな」
「チッ!」
他のアサシンがエースやアルドに複数で襲い掛かる中、この男だけがマルコへと攻撃を仕掛けて来る。二手目を躱すも頬を掠った。チリッと痛みが走る。
―― 武装色の覇気か!
武装色の覇気を纏わせた短剣を躱しながらマルコはお返しだとばかりに武装色の覇気を纏った足で反撃に出た。腹部を狙って蹴りを放つ――が、男は容易にそれを躱してマルコから距離を取った。
「こいつ……」
身の熟しと反応の速さは、他のアサシンとは明らかに違った。―― 強い ――そう思った。
「シルヴァーノ!」
白い煙が消えて視界が開けると同時にエースが炎を纏った拳でシルヴァーノに襲い掛かった。
「火拳か」
シルヴァーノは身を翻してエースの攻撃を容易に躱すと同時に口元をニヤリと孤を描いた。
「!」
マルコがシルヴァーノの口元の歪みに気付いた時、エースに注意を促そうとした。だが、直ぐ傍でシャキンと鈍い音が聞こえた。別のアサシンがマルコに襲い掛かった。
「くっ! 邪魔すンなよい!」
その攻撃を躱して蹴りを放つも別のアサシンが襲い掛かって来る。
マルコは彼らの攻撃を躱しながら尻目にシルヴァーノが左のアサシンブレードでエースに向けて攻撃を仕掛けるのを見止めて叫んだ。
「エース! 避けろ!」
「ッ!?」
「遅い」
マルコの声に弾かれるようにエースはシルヴァーノの攻撃を躱そうとした。しかし、シルヴァーノの刃はエースの首筋を容易に捉えて振り下ろされた。
その時、アサシンの身体がシルヴァーノに向かった吹き飛んで来た。
シルヴァーノは、エースへの攻撃を止めてそのアサシンの身体を受け止めた。
そのアサシンは息絶えていた。首元を見事に切り裂かれて即死だったのか、目は見開かれたまま力無くズルリと地面に崩れ落ちた。
「ッ……、貴様……!」
シルヴァーノが視線を向けた先には自分達と同じ衣服を纏うアサシンが複数の同胞を相手に戦っている姿があった。偶然かと思ったが、その身の熟しからして狙って吹き飛ばしたのだと直ぐに理解した。
―― そうか、海賊と変わらぬ服装をしていたあの男……ッ!?
シルヴァーノは同胞と戦う者を見つめてハッとした。フードの隙間から覗く顔が蝋燭の灯りによって一瞬だけ露わになった。
漆黒の瞳がはっきりと見えた。その瞬間、心臓が鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
―― どういうことだ……!?
確かに見覚えのある……いや、決して忘れることの無かった忌々しいもの。
―― 本当に……コルティノーヴィス・アルドだというのか!?
アサシンに最も遠い男。戦うことを嫌い無能とされたアサシンの見習い程度で終わった裏切り者。
そんな下等な男が、自分の部下と対等に戦うどころか、攻撃を躱して反撃している。そして、逆に同胞達が次々と倒されていく様に、シルヴァーノは目を見開いた。
この時、シルヴァーノは初めて『動揺』というものを覚えた。だが、それがどういうものなのか知りもしないシルヴァーノは、自身の心内の変動に何が起きているのか理解できなかった。それによって、益々混乱が生じた。
「――! ――ッ!」
遠くの方で僅かに人が騒ぐ声が聞こえた。恐らく地上部隊の同胞達に王族が殺害されたことで民衆が騒いでいるのだろうと思った。そして、その報告に来たのか、足音が聞こえた。しかし、その気配がおかしいことに気付いた。
―― 何を慌てて……まさか!
シルヴァーノの脳裏に浮かんだのは『白ひげ海賊団』の存在だ。
想定外続きだ。
任務遂行時に白ひげ海賊団が島に寄港。その白ひげ海賊団の1番隊隊長が自分達アサシンの存在を知っていた。そして、その理由は――
―― 全て……、この裏切り者の……!
全てコルティノーヴィス・アルドの所為
白ひげ海賊団に加担する最も嫌うその存在に、シルヴァーノの心内に怒りにも似た感情が渦巻き始めた。
「撤退する」
「「「!」」」
シルヴァーノの言葉に同胞達は動きを止めた。そして、マルコ達の攻撃を往なして距離を取ると部屋から逃走し始めた。その後に続いてシルヴァーノも踵を返した。
しかし、それを逃すまいとエースがシルヴァーノに向けて拳を放った。それは見事に彼の頬を捉えてバキッと鈍い音が部屋に反響した。
エースはニヤリと笑みを浮かべた。
シルヴァーノは口内を切ったのか、口端からツゥッと血が零れ落ちるのを感じた。
「舐めんなよ?」
「あァ、そうか……」
シルヴァーノは、目の前のエースを見つめて何を思ったのかそう言葉を零した。その時、シルヴァーノの纏う雰囲気が一瞬にして変わったことにマルコは気付いた。
―― ただの武装色の覇気使いじゃねェってことか……!?
マルコは咄嗟に動いてシルヴァーノとエースの間に割り込んだ。鋭い覇気を纏った剣がエースに振り下ろされるのをマルコが武装色で固めた腕で受け止めた。
「くっ!」
「マルコ!!」
―― なんてェ重い攻撃だ!
武装色で固めていてもシルヴァーノの太刀筋はそれを凌駕した。マルコの腕は皮膚を切り裂かれて血を流した。
シルヴァーノは無言で再び攻撃をしようとした。だが、シルヴァーノに向けてそれに負けない太刀筋が彼を襲った。
ギィンッ!
金属音が部屋に反響した。ギチギチと剣同士が交差して力と力で押し合う。同じアサシンの衣服を纏う者同士の対立だ。
「この男と逃げたアサシンはおれが殺す。マルコ隊長はエース隊長を連れて船に戻ってください」
抑揚の無い声でアルドは言った。
「くそ、わかった。こいつはお前ェに任せておれは逃げた奴らを追う!」
エースは声を荒げてそう言った。
「はっ!? なに言ってんだよいエース!」」
「やられたまんまじゃおれの気が済まねェんだ!」
マルコは怪我を負った腕を手で抑えながら眉間に皺を寄せてギリッと歯を食い縛って苦い表情を浮かべた。
―― どいつもこいつも勝手ばかり抜かしやがって!
「アルド! おれは一切許可してねェ! エース! てめェは大人しく船に」
「先に行くぜ!」
「――あ”!? こら! 待てよいエース!」
エースはマルコの言葉を聞かずに逃走したアサシン達の後を追って出て行った。
―― エース! てめェは船に戻ったらマジで説教だよい!
腸が煮え繰り返る思いを抱いたマルコの額に青筋が張った。
「ククッ……」
「!」
「……」
シルヴァーノはそんな三人に笑い声を零した。口元に孤を描きながらフードの陰に隠れた瞳がアルドをじっと見つめている。
そんなシルヴァーノに対してマルコは怪訝な表情を浮かべて警戒した。
―― こいつ……、感情が無いわけじゃねェってことか? 何を考えてやがる。
「――――」
シルヴァーノの口元が動いて何かを言った。その声はあまりにも小さくて何を言ったのかマルコにはわからなかった。
「!」
しかし、アルドにはわかったのか肩がビクリと大きく反応した。それにマルコは目を丸くした。
―― アルド……?
シルヴァーノは力でアルドの剣を押しやった。
ギイイン!!
けたたましい金属音と共にアルドの身体は弾かれるように吹き飛んだ。マルコが咄嗟にその身体を受け止めると同時に、シルヴァーノはその場から逃走した。
「アルド、大丈夫か?」
「殺す……!」
「なに……?」
「シルヴァーノ! あいつを……!」
「おい! 待て!」
マルコはアルドの腕を掴んで止めた。
「離せ!!」
アルドはマルコの腕を振り解こうとしたができずに声を荒げた。
「お前! どうしたってんだ!」
フードの隙間から見えたのは殺気を漲らせた目。そして、そこにあるのは明らかな『怒り』の感情だ。
―― 何を言われた? 何がお前を!!
「アルド!」
「違う!!」
「落ち着け!」
「アルドはッ……」
「なに……?」
アルドが自分自身の名を口にした。感情に揺れて震えた声音だった。
それにアルドの腕を掴むマルコの手が僅かに緩んだ。
アルドはその隙を突いてマルコの腕を強引に振り払うとシルヴァーノの後を追って走り出した。
「アルド!」
マルコは舌打ちをしてアルドの後を追った。
心臓が異様な程に早く脈打って心が騒ついた。
あんなに怒りの感情を露わにしたアルドを初めて見た。
恐らく我を忘れて自制が利いていない。このままシルヴァーノに追い付いたとしても冷静さを欠いた状態では、流石にアルドであっても返り討ちに遭う可能性が高い。
今は兎に角アルドを追うことが先決だ。
通路を抜けて外に出た。目先の森を駆け抜けて広い場所に出ると崖下でエースが複数のアサシンを相手に苦戦していた。
アルドの後を追わなければならない。しかし、エースをこのままにしておくこともできない。
―― どうする?
「あァ! クソったれが!!」
そんな自問に悠長に考えてる暇は無い。
「さっさと片付けりゃ良いだけだろい!?」
マルコはエースを助けてからアルドを追うことに決めた。そして、崖下に飛び下りてエースの加勢に入った。
複数人の足音が聞こえた。どうやら逃走したアサシンが仲間を引き連れて戻って来たようだ。
「望むところだ。反撃してやるぜ」
エースはそう言って屈伸をした。戦う気満々だ。
「エース、今は逃げることを考えろよい」
マルコが窘めるように言うとエースは小さく首を振った。
「シルヴァーノって奴をぶん殴らねェとおれの気が収まらねェんだ」
「!」
エースの科白にアルドの身体がピクッと大きく反応した。
「アルド……?」
それに少し驚いたマルコが声を掛けた時、「あ、そういや」とエースが何かを思い出したように口を開いた。
「アルド、お前って――」
しかし、会話はそこで途切れた。
ヒュンッ――!
何かが投げ入れられる音に反応した三人はその場を飛び退いた。
ボフンッ!!
投げ込まれたそれが爆発を起こすと瞬く間に白い煙が辺りに充満した。
「クソッ! また煙幕かよ!」
エースは怒気を込めて声を荒げた。
その声を耳にしながら軽く咳き込んでいたマルコは、ハッとして咄嗟に身を引いた。正面から白い衣服を着た男が自分に向かって攻撃を仕掛けて来たことに気付いたからだ。
―― こいつは!
マルコはこの男がアスランで見かけたアサシンだと直ぐにわかった。
「流石は不死鳥マルコ。火拳とは反応が違うな」
「チッ!」
他のアサシンがエースやアルドに複数で襲い掛かる中、この男だけがマルコへと攻撃を仕掛けて来る。二手目を躱すも頬を掠った。チリッと痛みが走る。
―― 武装色の覇気か!
武装色の覇気を纏わせた短剣を躱しながらマルコはお返しだとばかりに武装色の覇気を纏った足で反撃に出た。腹部を狙って蹴りを放つ――が、男は容易にそれを躱してマルコから距離を取った。
「こいつ……」
身の熟しと反応の速さは、他のアサシンとは明らかに違った。―― 強い ――そう思った。
「シルヴァーノ!」
白い煙が消えて視界が開けると同時にエースが炎を纏った拳でシルヴァーノに襲い掛かった。
「火拳か」
シルヴァーノは身を翻してエースの攻撃を容易に躱すと同時に口元をニヤリと孤を描いた。
「!」
マルコがシルヴァーノの口元の歪みに気付いた時、エースに注意を促そうとした。だが、直ぐ傍でシャキンと鈍い音が聞こえた。別のアサシンがマルコに襲い掛かった。
「くっ! 邪魔すンなよい!」
その攻撃を躱して蹴りを放つも別のアサシンが襲い掛かって来る。
マルコは彼らの攻撃を躱しながら尻目にシルヴァーノが左のアサシンブレードでエースに向けて攻撃を仕掛けるのを見止めて叫んだ。
「エース! 避けろ!」
「ッ!?」
「遅い」
マルコの声に弾かれるようにエースはシルヴァーノの攻撃を躱そうとした。しかし、シルヴァーノの刃はエースの首筋を容易に捉えて振り下ろされた。
その時、アサシンの身体がシルヴァーノに向かった吹き飛んで来た。
シルヴァーノは、エースへの攻撃を止めてそのアサシンの身体を受け止めた。
そのアサシンは息絶えていた。首元を見事に切り裂かれて即死だったのか、目は見開かれたまま力無くズルリと地面に崩れ落ちた。
「ッ……、貴様……!」
シルヴァーノが視線を向けた先には自分達と同じ衣服を纏うアサシンが複数の同胞を相手に戦っている姿があった。偶然かと思ったが、その身の熟しからして狙って吹き飛ばしたのだと直ぐに理解した。
―― そうか、海賊と変わらぬ服装をしていたあの男……ッ!?
シルヴァーノは同胞と戦う者を見つめてハッとした。フードの隙間から覗く顔が蝋燭の灯りによって一瞬だけ露わになった。
漆黒の瞳がはっきりと見えた。その瞬間、心臓が鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
―― どういうことだ……!?
確かに見覚えのある……いや、決して忘れることの無かった忌々しいもの。
―― 本当に……コルティノーヴィス・アルドだというのか!?
アサシンに最も遠い男。戦うことを嫌い無能とされたアサシンの見習い程度で終わった裏切り者。
そんな下等な男が、自分の部下と対等に戦うどころか、攻撃を躱して反撃している。そして、逆に同胞達が次々と倒されていく様に、シルヴァーノは目を見開いた。
この時、シルヴァーノは初めて『動揺』というものを覚えた。だが、それがどういうものなのか知りもしないシルヴァーノは、自身の心内の変動に何が起きているのか理解できなかった。それによって、益々混乱が生じた。
「――! ――ッ!」
遠くの方で僅かに人が騒ぐ声が聞こえた。恐らく地上部隊の同胞達に王族が殺害されたことで民衆が騒いでいるのだろうと思った。そして、その報告に来たのか、足音が聞こえた。しかし、その気配がおかしいことに気付いた。
―― 何を慌てて……まさか!
シルヴァーノの脳裏に浮かんだのは『白ひげ海賊団』の存在だ。
想定外続きだ。
任務遂行時に白ひげ海賊団が島に寄港。その白ひげ海賊団の1番隊隊長が自分達アサシンの存在を知っていた。そして、その理由は――
―― 全て……、この裏切り者の……!
全てコルティノーヴィス・アルドの所為
白ひげ海賊団に加担する最も嫌うその存在に、シルヴァーノの心内に怒りにも似た感情が渦巻き始めた。
「撤退する」
「「「!」」」
シルヴァーノの言葉に同胞達は動きを止めた。そして、マルコ達の攻撃を往なして距離を取ると部屋から逃走し始めた。その後に続いてシルヴァーノも踵を返した。
しかし、それを逃すまいとエースがシルヴァーノに向けて拳を放った。それは見事に彼の頬を捉えてバキッと鈍い音が部屋に反響した。
エースはニヤリと笑みを浮かべた。
シルヴァーノは口内を切ったのか、口端からツゥッと血が零れ落ちるのを感じた。
「舐めんなよ?」
「あァ、そうか……」
シルヴァーノは、目の前のエースを見つめて何を思ったのかそう言葉を零した。その時、シルヴァーノの纏う雰囲気が一瞬にして変わったことにマルコは気付いた。
―― ただの武装色の覇気使いじゃねェってことか……!?
マルコは咄嗟に動いてシルヴァーノとエースの間に割り込んだ。鋭い覇気を纏った剣がエースに振り下ろされるのをマルコが武装色で固めた腕で受け止めた。
「くっ!」
「マルコ!!」
―― なんてェ重い攻撃だ!
武装色で固めていてもシルヴァーノの太刀筋はそれを凌駕した。マルコの腕は皮膚を切り裂かれて血を流した。
シルヴァーノは無言で再び攻撃をしようとした。だが、シルヴァーノに向けてそれに負けない太刀筋が彼を襲った。
ギィンッ!
金属音が部屋に反響した。ギチギチと剣同士が交差して力と力で押し合う。同じアサシンの衣服を纏う者同士の対立だ。
「この男と逃げたアサシンはおれが殺す。マルコ隊長はエース隊長を連れて船に戻ってください」
抑揚の無い声でアルドは言った。
「くそ、わかった。こいつはお前ェに任せておれは逃げた奴らを追う!」
エースは声を荒げてそう言った。
「はっ!? なに言ってんだよいエース!」」
「やられたまんまじゃおれの気が済まねェんだ!」
マルコは怪我を負った腕を手で抑えながら眉間に皺を寄せてギリッと歯を食い縛って苦い表情を浮かべた。
―― どいつもこいつも勝手ばかり抜かしやがって!
「アルド! おれは一切許可してねェ! エース! てめェは大人しく船に」
「先に行くぜ!」
「――あ”!? こら! 待てよいエース!」
エースはマルコの言葉を聞かずに逃走したアサシン達の後を追って出て行った。
―― エース! てめェは船に戻ったらマジで説教だよい!
腸が煮え繰り返る思いを抱いたマルコの額に青筋が張った。
「ククッ……」
「!」
「……」
シルヴァーノはそんな三人に笑い声を零した。口元に孤を描きながらフードの陰に隠れた瞳がアルドをじっと見つめている。
そんなシルヴァーノに対してマルコは怪訝な表情を浮かべて警戒した。
―― こいつ……、感情が無いわけじゃねェってことか? 何を考えてやがる。
「――――」
シルヴァーノの口元が動いて何かを言った。その声はあまりにも小さくて何を言ったのかマルコにはわからなかった。
「!」
しかし、アルドにはわかったのか肩がビクリと大きく反応した。それにマルコは目を丸くした。
―― アルド……?
シルヴァーノは力でアルドの剣を押しやった。
ギイイン!!
けたたましい金属音と共にアルドの身体は弾かれるように吹き飛んだ。マルコが咄嗟にその身体を受け止めると同時に、シルヴァーノはその場から逃走した。
「アルド、大丈夫か?」
「殺す……!」
「なに……?」
「シルヴァーノ! あいつを……!」
「おい! 待て!」
マルコはアルドの腕を掴んで止めた。
「離せ!!」
アルドはマルコの腕を振り解こうとしたができずに声を荒げた。
「お前! どうしたってんだ!」
フードの隙間から見えたのは殺気を漲らせた目。そして、そこにあるのは明らかな『怒り』の感情だ。
―― 何を言われた? 何がお前を!!
「アルド!」
「違う!!」
「落ち着け!」
「アルドはッ……」
「なに……?」
アルドが自分自身の名を口にした。感情に揺れて震えた声音だった。
それにアルドの腕を掴むマルコの手が僅かに緩んだ。
アルドはその隙を突いてマルコの腕を強引に振り払うとシルヴァーノの後を追って走り出した。
「アルド!」
マルコは舌打ちをしてアルドの後を追った。
心臓が異様な程に早く脈打って心が騒ついた。
あんなに怒りの感情を露わにしたアルドを初めて見た。
恐らく我を忘れて自制が利いていない。このままシルヴァーノに追い付いたとしても冷静さを欠いた状態では、流石にアルドであっても返り討ちに遭う可能性が高い。
今は兎に角アルドを追うことが先決だ。
通路を抜けて外に出た。目先の森を駆け抜けて広い場所に出ると崖下でエースが複数のアサシンを相手に苦戦していた。
アルドの後を追わなければならない。しかし、エースをこのままにしておくこともできない。
―― どうする?
「あァ! クソったれが!!」
そんな自問に悠長に考えてる暇は無い。
「さっさと片付けりゃ良いだけだろい!?」
マルコはエースを助けてからアルドを追うことに決めた。そして、崖下に飛び下りてエースの加勢に入った。
怒 り
【〆栞】