03

7番隊が予定より遅れて漸く本船に帰還した。船長室では何だか顔色が優れないラクヨウが、帰還途中で予定に無かった相手と遭遇したことも相まって遅くなった、と白ひげとマルコがいる前で報告していた。

「あァ、わかった。だが……」

何かもっと大きな問題があったんじゃねェのか?と眉間に皺を寄せる白ひげに、ラクヨウは顔を俯かせて首を振った。

「な、ん、に"も"……ねェ」
「いや、何かあったろうよい」

俄かに身体を震わせて答えるラクヨウに、マルコも探る目を向けて疑った。

「あ」
「「あ?」」
「あ"あ"あ"っ! もう我慢できねェ!」
「「ッ!?」」

途端に発狂する様に叫び出したラクヨウに、白ひげとマルコは同時にビクッと身体が反応して軽く1センチ弱ぐらい宙に浮いた。

「な、何だよいラクヨウ!」
「ぬおおお!」
「あ、おい! 待てラクヨウ!」

狂乱したラクヨウは脱兎の如く船長室から出て行った。待てと手を伸ばしたマルコは呆然としてバタンと閉まるドアを見つめ、白ひげも呆気に取られて何も言えず、船長室はシーン…と静かになった。
その頃、7番隊の隊員達が「酒ェェェ!!」と叫んで食堂になだれ込み、4番隊の隊長であるサッチに「酒と摘みを哀れなおれ達にお願ェしやす!!」とヒシッと泣き付いていた。

「な、何だってんだよ!? コラ! 服を引っ張るんじゃねェ! おれっちは女に抱き付かれる趣味はあっても男に抱き付かれる趣味はねェってんだよ!」

強制的な禁酒による禁断症状によって真面な隊員が一人とていない。
何がどうなってこうなったのか、酷く戸惑っていたサッチは「サッチ隊長」と軽やかな声を聞きつけて目を向けた。あ、一人いたわ、と群がる7番隊の隊員達をひっぺがして「リーザちゃん! 何これ!?」と声を上げた。

「彼らの言葉に耳を貸すことはお止めください」
「へ?」
「「「!!」」」

疑問符を頭に掲げるサッチの後ろで、7番隊の隊員達は血走った目をこれでもかとひん剥いて愕然とした表情を浮かべた。それはまるでこの世の終わりのような感じだった、と後に4番隊の隊員達が酒の肴に語る程だ。

「エミリア婦長からはくれぐれも――」
「「「うおああっ! 助けてェアルド!!」」」

抑揚も感情も無く事務的に話すリーザに、7番隊の隊員達は涙を流して悲鳴を上げた。
そんな彼らの声を聞き付けたわけでは無いのだが、アルドが食堂にひょこりと顔を出して首を傾げた。彼らは運が良い。丁度この時間帯はアルドが早々と食事に来る頃だったのだ。

「揃いも揃って何を泣いているんですか?」
「「「来た! おれ達の天使!!」」」

7番隊の隊員達はサッチからアルドの元へドタドタと駆け寄った。エグエグと涙を流しながら長く辛い『禁酒生活』の話を語り始め、大好きな酒を未だに飲めないことが苦痛過ぎて精神崩壊一歩手前にまで迫っているのだと切実に訴えた。
ただじっと彼らを見つめて話を聞いていたアルドは、リーザに目を向けるとリーザが深々と頭を下げた。

「……」

リーザがアルドに示す態度は完全に目上に対するものだ。周囲からはリーザがアルドの後輩に当たるから当然の行動だと思って認識している。だがアルドからすればそれは『アサシンたる者の行動』であり、マスタークラスの相手に対して一般のアサシンが当然し得る行動に他ならない。

「た、頼む……。もう、本当、酒、酒が欲しい」
「ヤコポ副隊長、少し痩せましたね。以前より健康的で何よりです」
「アルド〜、以前のポヨポヨな俺の方が可愛いかったよねェ〜!?」
「可愛いかどうかはわかりませんが……、確かに少し寂しい感じはしますね」

アルドは人差し指でヤコポのお腹を軽く突いた。以前に比べてズムッと食い込む具合が弱い。さらにボヨンッと弾く強さも弱く感じた。それだけ体脂肪が落ちたのだと思うが、ヤコポはそれが嫌なようで、アルドの服の裾を掴んでオイオイと涙を流している。

「アルド様」
「リーザさん、その敬称はいらないと何度も」

アルドの言葉を止めるように首を振ったリーザは、片膝をついて頭を下げると言った。

「私は貴方様の足元にも及ばない者です。貴方様こそ私めに対して”さん”等と敬称を付けることをお止めください。こうして話をすることさえ本来ならば許されぬものなのですから」
「――ッ……」

そんな形式ばった振る舞いで話さなくても……、とアルドは口にはしないが流石に困った。視界の先に食事を乗せたトレーを持って厨房から出て来るサッチの姿を捉えて目を向けた。苦笑を浮かべたサッチは、コクリと頷いてアルドの定位置であるテーブルにトレーを置くと、アルド達の元へとやって来て手を叩いた。

パンッ! パンッ! パンッ!

「ほい! 終わり!」

サッチはそう言うと厨房に向けて声を掛けた。

「おーい、7番隊の奴らに酒と摘みを出してやれ!」
「「「了解!」」」
「「「うおお! サッチ隊長!!」」」

7番隊の隊員達は涙に暮れた目に光を宿して「神だ!」と声を揃えて讃えた。表情を明るくして嬉々とする7番隊の隊員達を前にリーザは無表情だが、アルドは心無しか目を細め口元が弧を描いているように見える。

「サッチ隊長、私の話を聞いて――」
「良いんだって。任務先で酒を飲んで失敗することを心配してエミリアが禁酒を申し付けたんだろうからよ、今日がその解禁日だ。な?」
「ですが、」

反論しようとするリーザに首を振ったサッチは、「それからなァ」と言ってアルドの肩に腕を回した。それに思わず目を見張るリーザにサッチはニッと笑って言葉を続ける。

「アルドもリーザちゃんも今はアサシンじゃ無くて白ひげ海賊団の一員で家族だ。長年染み付いちまったもんを取っ払うには時間が掛かるかもしんないけど、目上も目下も無いんだから親しく対等に話そうね。アルドはそうして欲しいって思ってるだろ?」

同意を求めるサッチに「はい」とアルドは頷いた。

「ッ……」

それにリーザは口を噤んで静かに顔を伏せた。

「アルド、冷めねェ内に食って来い」
「すみませんサッチさん。頂きます」

リーザを見つめていたアルドは、サッチに軽く頭を下げてからいつもの席へと向かった。アルドが定位置の席に座るのを見計らったサッチは「よし、もう立てるでしょ?」とリーザの肩をポンポンッと叩いた。

「……」

漸く顔を上げたリーザはゆっくりと立ち上がった。そこには感情の『か』の字も無い。どこか機械的な表情が張り付いている。
やれやれと言わんばかりに溜息を吐いたサッチは、リーザちゃんも食うか?と訊くとリーザは即答する。
アルド様がお食事を済ませてからでなければ許されません――と。

「はァ……、だーかーらー、おれ達は家族だって」
「はい、わかっています。ですがアルド様は別です」
「――えー…、別って、何で?」
「あの方は我々アサシンにとって最も崇高なお方。決して対等になど扱ってはいけない。そのようなことをしようものなら我々は自らの命を絶つことを選びます」
「おおう……、それマジで言ってる?」
「はい。共に同じ場に立つ事すら畏れ多いお方です」

リーザは頭を下げて食堂から去って行った。ポリポリと頬を掻いて見送ったサッチは、踵を返して酒を浴びるように飲む7番隊の隊員達の元に寄って空席に腰を下ろした。

「船に乗った当初のまんまであんまり変わり無いの?」
「リーザっすか?」
「そう」
「ラクヨウ隊長がいりゃあ多少は変わりますよ」
「へェ……、いなかったら前と同じってこと?」
「「「そっすね」」」
「それってお前らが全然信用を得てないってことじゃ……」

サッチの疑問はどうやら彼らの核心を突いたようだ。7番隊の隊員達は酒を飲みながら「あ痛ァァッ! 辛辣っす!」とペシンと頭を叩いて笑った。
呆れた溜息を吐いたサッチは席を立ってアルドの元に向かった。アルドは相変わらず一人で黙々と食事をしている。
近頃は言葉数が少し増えて存在感が増したように思える。船員達の中でもアルドが認知されてきて漸く家族らしくなった感じはするが、オヤジである白ひげを筆頭に、ラクヨウやマルコ、船医のナキムとナース婦長のエミリア以外の者とは相変わらず距離を置いている。
正面の空席に腰を下ろしたサッチは頬杖をしてアルドを見やった。アルドが食事を進める手を止めて視線をサッチに向けると、サッチはニコリと笑みを見せた。アルドは一見して無表情ではあるが、それに応えるように僅かに口角を上げた。これだけでも大きな進歩だよなァ、とサッチは思う。

「うまい?」
「はい」
「そっか、なら良かった」
「サッチさん」
「ん?」
「先程はありがとうございました」
「あー、困ってるっぽかったからよ」
「えェ、困ってました」
「お、おう、ちょっとは助けになったみたいで良かったぜ」

少し戸惑いながら笑みを浮かべたサッチが軽くポンポンとアルドの肩を叩くと、アルドは今度こそちゃんとした笑みを見せた。

「!」

頬杖をずらして大きく目を見開いたサッチは、驚きのあまり言葉が出なかった。

「おれの笑みは可笑しいですか?」
「あ、い、いや、違う。滅多に見ないっつーか、その、は、初めて見たからよ……」

しどろもどろに答えるサッチにアルドは成程と小さく頷いた。

「おれにとってサッチさんはとても大事な人です」

あなたが思っている以上に、と最後に付け加えたアルドは口角を上げたまま「だから笑えるのだと思います」と答えた。

「ッ……」

思いもしなかったアルドの言葉に胸が熱くなるのを覚えたサッチは、視線を外して俯くと「そっか……、そうか」と呟きながら小さく何度も頷いた。

「アルド」
「はい」
「ありがとな」
「いえ、こちらこそ。いつも相手をしてくれて、美味しい食事も含めて感謝しています」

深々と頭を下げるアルドに、サッチは後頭部に手を回してガシガシと掻くと頬を少し赤くしながら望外の喜びに口元が緩んだ。
改めて礼を言われると恥ずかしい。でも、何だか凄く嬉しい。白ひげを筆頭にラクヨウやマルコに次いで近い存在だけでなく、また違った親しさを持つ間柄に置いてくれているのだと初めて知ったのだから。
食事を再開するアルドを見つめながらサッチはいつものように他愛の無い話を始める。それに時折相槌を打っては食事を進めるアルド。至って無表情ではあるがアルドなりに楽しい一時なのだろう。いつもと変わらない食事風景がそこにあった。





船長室を後にしたラクヨウは大きく息を吐き、酷く顔を顰めて急ぎ食堂を目指した。眼光がどこか少し逝った状態で食堂の扉を開けると「ぬああ!?」と声を上げて瞠目した。

「てめェらおれを差し置いて飲みやがってクソが! 酒だ酒だァァァッ! 酒を持って来ぉぉぉい!!」

限界ギリギリ一歩手前を超えて崖っぷちなラクヨウは吠えた。とにかく吠えた。しかし、7番隊の隊員達は素知らぬ顔で酒をかっ食らう。彼ら以外の隊員(主に4番隊)達は狂乱染みたラクヨウの勢いに恐れ慄いて返事ができなかった。
誰もが触らぬ神に何とやら状態の中で「お疲れ様ですラクヨウ隊長」と声を掛ける勇者が一人いた。

「おう! アルド!」

振り返るラクヨウの顔はまるで悪鬼の様。しかし、アルドは平然としている。他の隊員(主に4番隊)達は「あいつ凄ェな」とアルドに敬服した。

「ラクヨウ隊長が不在の間、立ち寄った島々でお酒を適当に仕入れてラクヨウ隊長の部屋に」
「マジかアルド!?」
「「「うおおっ!? 何だそりゃ!? 隊長だけかよアルド!!」」」
「――……いや、7番隊の皆さんの部屋にも買っておいたのですが、もう疾うに気付いて飲まれた上で切実に語られているのだとばかり……。足りなかったのかと思って話を聞きながら反省していたのですが、どうやら違ったみたいですね」

安心しました、とアルドは言った。

「「「何!? マジ!? 気付いてねェ! だからさっきはあんなに反応が鈍かったのか!!」」」
「カァァァッ! できた部下を持っておれァ幸せだぜアルド〜!」
「癖みたいなものです。あと、今のおれはラクヨウ隊長の部下ではないですよ」
「「「最高の癖だ!」」」
「素敵過ぎる癖は大事にしろよ! そんでもって、お前はどこの部隊に所属しようがいつまでもおれ様の部下だ!!」

ガッハッハッ!と高らかに笑うラクヨウは、アルドの頭をガシガシと強く撫でまわして7番隊の隊員達の元へと蟹股の大股で歩いて行った。
ボサボサになった髪を手で適当に直しながらラクヨウの背中を見つめるアルドは、少しだけクツリと笑うと踵を返して自室へと戻っていった。
一方その頃、船長室では白ひげとマルコが少し難しい表情を浮かべて話し込んでいた。

「まさかアサシンと遭遇して戦っていたとはなァ」
「リーザが率先して戦ったってェ話を聞いた時には流石に驚いたよい」

あれは恐らく#イルマ#に対する忠誠心がそうさせた可能性が高いぜ、とラクヨウの報告を思い出しながら白ひげは、ラクヨウもよく見てやがる、と吐露するように口にした。

「長年アルドを部下に置いていただけあって、アサシンの機微に対する勘の鋭さには感心するよい」

素直に認めるマルコに僅かに片眉を上げた白ひげは、お前がラクヨウを褒めるなんざ珍しいじゃねェかとばかりにグラグラと笑った。

「リーザはアサシン癖が治らねェようだが、良いのかよいオヤジ?」
「それは#イルマ#よりも長く教団に属していたから仕方がねェことだ。だが、非常識さに関しては#イルマ#の方が格段に厄介だ。なァ、マルコ?」
「まァ……、そこは否定できねェよい」

首筋に手を当てながらマルコは、ラクヨウの報告を反芻するように頭の中で思い浮かべた。

***

ラクヨウ率いる7番隊が本船のモビー・ディック号と合流する為に航行している最中、一般商船と思われる船と途中で遭遇した。
ラクヨウを始め7番隊はスルーを決め込むつもりだったのだが、甲板に立ち尽くして商船をじっと見つめていたリーザがアサシンブレードの刀身を出してフードを被ったことで誰もが顔を見合わせた。

「おい、リーザ」
「あれはアサシンの船です」
「あァん? あの商船がか?」
「はい」
「あー……、仮にそうだとしてだ。何でまたそんなやる気になってんだ?」
「私は白ひげ海賊団に身を置くアサシンです。白ひげ海賊団にマスターアサシンのアルド様がおられる以上、私はアルド様の駒として動くことが使命。ただそれだけです」

当然のように答えたリーザに、ラクヨウと7番隊の隊員達は目を丸くしてポカンとした。

「おい、待て。それってェと何か? リーザの忠誠心はオヤジでもおれでも誰でも無い、アルドにあるってェことか?」
「アルド様はアサシン教団を壊滅すべく強い意思を持っております。故に私もその為に働くのみ。アサシンを見つけたら全て倒すことを信条と――」
「だァァ! それ間違い! 考えを改めやがれリーザ! 大体アルドがお前にそんなことを望んだことねェだろうが!?」

困惑しながら怒鳴って説得するラクヨウだっだが、マスターアサシンは絶対的存在です、とリーザは制止を聞かずに海に飛び込み商船への侵入を開始した。
7番隊の副隊長のヤコポは念の為に戦闘準備をするよう隊員達に告げると、頭を抱えたラクヨウは舌打ちをしながら仕方が無ェと腹を括り、商船に向けて先制攻撃を仕掛けることとなった。

その商船は確かにアサシン集団が乗る船であり、黄色の腰帯を巻いたアサシン達だった。
彼らはリーザの腰帯の赤を見て驚きの声を漏らしていたが、後に続いてラクヨウ率いる7番隊も乗り込んで全面交戦となった。
7番隊はアルドのおかげで対アサシンに対して滅法強く、船を制圧するのに時間は掛からなかった。そして、この船内中心部の部屋には様々な情報があった。

白ひげ海賊団が辿る航路上で、いずれ必ず寄港する事になると思われるオルバナ領中心地ディグストンに、商船に乗っていたアサシン達が属するアサシン支部が存在していること。さらにその領地を治めるキルバリーという男と駐屯する海軍スタング中将と、それぞれに何らかの密約を結んでいる趣旨が記された『極秘書類』があった。

恐らく商船に乗ったアサシンが殲滅された情報は、そこの支部に直ぐに届くだろう。オルバナ領の領主と海軍とアサシンの繋がりも、どうにもきな臭い匂いがぷんぷんして気に入らない。
白ひげにそれらの書類を渡して報告すると共に、ラクヨウはオルバナ領ジャハ港には要注意すべきことを告げた。

「ラクアナの時みてェにならなきゃ良いがな」

両手をポケットに突っ込んで投げやり気味にぼやいたラクヨウは、顔色が優れずソワソワとして落ち着きがなかった。
白ひげとマルコは怪訝な顔をして、何かもっと大きな問題があったんじゃねェのか?と問う白ひげに、ラクヨウは顔を俯かせて首を振った。

***――で冒頭の展開となるわけだが、狂乱染みたラクヨウを思い出したマルコは、報告内容に含まれていない何か重大な案件があったのではないか?と白ひげに言った。

「あァ、確かに普通じゃあなかったな。それに関しては後々ラクヨウが落ち着いた頃に聞くとしよう」
「オヤジがそれで良いなら問題無いよい」
「何にせよ、まずはリーザに教育が必要だな」

どこを見るでも無く言葉を零した白ひげだが、その表情はどこか険しいものがあった。
何を考えているのか、白ひげが口にしない以上は確かなものとはできないが、マルコはその表情から何となく察するものがあった。

リーザのアサシンとして染み付いた思考は健在のままであることを考慮しておく必要がある。
#イルマ#を崇拝しての行動理念は全てアサシンが故のもの。それが果たして#イルマ#の為になるものなのか、それとも――。
警戒とまでしなくとも注視しておく必要はあるだろう、とマルコは思った。

「ところでオヤジ」
「……何だ?」
「とりあえず7番隊を中心にして各隊に対アサシンの訓練を強化することにするが、それで良いかい?」
「あァ」
「オルバナ領はまだ当分先だから、それまでに少しでも順応できるようにしねェと」

特に末弟エースは若干トラウマ的に引き摺っているみてェだしよい――とマルコは苦笑して言った。
白ひげもそれには同感だとグラグラと笑った。

「マルコ、リーザの件だが」
「注視はするよい」
「――察しが良くて助かるぜ」

口端を上げて頷いたマルコは、じゃあ失礼するよい、と船長室を後にした。自室に戻ろうと思っていたが、方向転換して何となく食堂に向かうことにした。
食堂付近に来ると、またえらく上機嫌な声が通路先にまで聞こえてくる。眉を顰めたマルコが食堂を覗けば、酒瓶を片手にガッハッハッ!とバカ笑いをしている酔いどれ野郎――ラクヨウの姿を発見した。まだ日が高い時分だというのに、よく見れば酔っ払っているのは7番隊の連中だけだ。
注意をしようと食堂半ばまで来ると、厨房から摘みを乗せたトレーを手にしたサッチが「ストップ!」とマルコの腕を掴んで制止した。

「何だよい、サッチ」
「今日だけ許してやってくれる?」

7番隊の連中に変わって合掌しながら許しを請うサッチにマルコは怪訝な顔をして、わけを話せと言った。

「実は――」
「……………はあ!?」

普通でなかったラクヨウを不審に思って僅かばかり、本当にちょっとだけ、心配した。それがまさか単なる『禁酒問題』が原因であっただけなんて――。
ふざけんなよい!!
急性アルコール中毒になったとしても診てやらねェぞい、とマルコが酔いどれ集団を前にしてボソッと苦言を呈し、サッチは苦笑したのだった。

報告と疑問

〆栞
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