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「先ずは板チョコ2枚を溶かして−−」
予め調べておいた作り方を見ながら、その手順を呟き手を進める。
「−−何をやっているの?霞」
「…っ!お、お兄様っ」
背後から聞こえた声に振り向くと、そこにはキッチンの扉に凭れ掛かりながら腕を組むお兄様が居た。作るのに集中し過ぎて気配に気付けなかった。お兄様にはどうにか内緒で作りたかったのだけれど、見られてしまったのなら仕方ない。正直に話そう、と思い口を開く。
「…今日、ショコラトル・デーでしょ?だから、チョコレート…作りたくて」
「君がわざわざ作る必要なんて無いんだよ」
「でもっ…どうせなら手作りを渡したい…」
私がそう言うと、お兄様は小さく溜息を溢した。
「……分かったよ、それなら僕も手伝おう。その代わり…」
私の隣まで来たお兄様の手が私の腰に回されて、そのままお兄様の方に引き寄せられる。僕にもチョコ、くれるよね?と耳元で囁かれて、心臓が跳ねるのが分かった。
あれから、お兄様に手伝ってもらいながら作ったチョコレートは見事成功して、校舎に向かう前にいつもお世話になっている
そして、宵の刻。いつもより騒がしい女の子達の声を聞きながら開かれた門の前には、名前が書かれたゲートが幾つか並んでいた。
「何、これ…」
「いやぁ…凄いよねぇ毎年」
「私のもある…」
「霞ちゃん、密かに人気あるからね」
私の呟きに反応したのは、小さい頃からお世話になっているまるでお兄ちゃんの様な親友、一条拓麻だった。
「今年はなんだか皆気合い入ってない!?すごい!楽しそう!」
「俺は寝不足…」
相変わらず元気な藍堂くんと、眠そうな架院くんを横目に見ながら、自分のゲートに並んでいる人達をぼーっと眺める。優姫はルールなどをざっと説明して、最後に女の子たちは真剣ですから!と元気な声で言った。
「一つ残らずもらってあげなきゃねーっっ」
そんな声を上げながら自分のゲートへ走り始める藍堂くんは、お兄様から掛けられた行儀よくするんだよ?の声を聞いて大人しくなる。それが何だか面白くて笑っていると、横からあの、!と声を掛けられた。
「チョコ、良ければ受け取ってください!」
そう言って小さめの箱を差し出して来たのは、
「…ありがとうございます」
そう言って差し出された箱を受け取ると、それを見た後ろに並んでいた子達からも次々と渡され始めた。そろそろ持てなくなる、それでも貰わないと…どうしよう、と思っていると背後から優しい声が掛かる。