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「我がナイト・クラスが新たに開発した
年老いた教員の声が、静かな教室に響く。その声を何となく聞きたくはなくて、私はお兄様の横に座り頭をお兄様の肩に預けて眼を閉じた。
「諸君は我が校の…そして我ら"夜の一族"の誇りだ」
「大したことじゃないわ」
「あんなのはただのグループ勉強ですよ」
教員の言葉に、生徒達が言葉を返す。
「"人間"と共存できるこの環境が開発の大きなヒントになりましたわね…枢様、霞様」
「うん…」
「この学園で学べることを理事長に感謝しているよ…」
私達に向けられる生徒の言葉にお兄様と共に返事をする。ちらりとお兄様を見上げると、優しく笑われた。
「……お兄様、少し外に出てもいい?」
「…良いけど、早めに戻るんだよ」
退屈なだけの授業から抜け出したくて、外に出たいとお兄様に声を掛けると意外にも簡単に許してくれた。お兄様の言葉に頷いて、私は教室を後にした。
「きれい…」
屋上の縁に座りながら、空を見上げる。真っ暗な空には、星がちらちらと輝いていた。
「−−こんな所で何をしてる」
「…零くん、」
背後から聞こえた声に振り向くと、そこには鋭い視線で私を睨み付ける零くんが居た。
「授業中だろ」
「星が見たくなって、っ…ごめんなさい、もう戻るね」
途中、ふと香ってきた血の匂いに少しだけ嫌な予感がして、零くんに謝罪だけして足早に屋上を抜けた。
「−−キミの血だよ…優姫ちゃん…」
「それはどうもっ」
血の匂いの元に近づいていくにつれて聞こえてくる声に、嫌な予感が増していくのを感じた。
「−−ホント…そそるね」
元に辿り着くと、そこには、
「藍堂くん、だめ!」
藍堂くんを止めようと前に踏み出す−−けれど、もう遅かった。藍堂くんの牙は優姫の掌に埋められ、段々と強くなる優姫の血の香り。
「先輩だめです、藍堂先輩…っ」
「…もっと欲しいなぁ…首からいただいていい?」
藍堂くんのその言葉に、大事な家族でもある優姫を傷付けられてしまった怒りは頂点を越えてしまって。
「藍堂くん、やめて」
「学内での吸血行為は一切禁じられている」
私が力を込めて、藍堂くんの腕を掴むのと同時に、零くんが藍堂くんの頭に
「霞様…」
藍堂くんに、怒りが伝わるように強く睨み付けると彼は少しだけ身体を震わせた。
「その
背後から聞こえたとても聞き慣れた声に振り返るとそこにはお兄様が居て、お兄様の声を聞いた零くんは渋々といった感じで銃を下ろす。
「霞も…離しなさい」
「……はい、」
お兄様の言葉を聞き、そっと藍堂くんの腕から手を離した。
「…それと、この痴れ者は僕が預かって理事長のお沙汰を待つ」
そう言って藍堂くんの襟首を掴むお兄様はいいよね、と零くんを見て付け足した。
「……連れて行ってください、玖蘭先輩」
その言葉を聞いたお兄様は、架院くんに視線を向け君も同罪だ、と言う。
「……優姫ちゃん、あそこの二人の記憶はどうする?」
「あっ、いえっ!理事長が今夜の記憶をなかったことに…」
気絶してしまっている
「そうだね…。後はよろしく…」
「恐い思いをさせて悪かったね…優姫」
去り際に最後、お兄様は優姫に柔らかい笑みを向けてそう言った。
「
「藍堂くん。"つい"だけで済まされる事じゃないよ」
停学十日間を言い渡されて尚、そう呟く藍堂くんは全く反省していない様に見えてしまって。強く、怒りが伝わる様にそう言うと彼は俯いた。
「…霞、いいよ」
背後からそんな声が聞こえてきて振り向くと、シャワーを浴びて来たのであろう髪を濡らしたお兄様が居て。お兄様は私の右肩に手を添えて、そして藍堂くんの頬を強く叩いた。ビシ、という音がロビーに響く。すいません、と小さく言葉を零した藍堂くんの頬から、微かに血が流れていた。
chapter 1 - End.
(あの時、去り際に優姫に柔らかい笑みを向けたお兄様と、それを見て頬を赤く染めた優姫−−それを見て少しだけ胸が痛んだ事には、気付かないフリをした)