ぱたん、と部屋の扉を閉めて室内に入ってきたエースは昨晩と同じ姿で、右手に大きなジョッキと左手に白い皿を持っていた。
室内に見ず知らずの女児がいるというのにその様子は案外冷静で、手に持った2つの器をテーブルの上に置くと、首を掲げながら腕を組んで何かを考えるような仕草をする。


「あの…」


恐る恐る名前が声を発すると、怪訝な顔でまじまじと名前の顔を覗き込むエース。


「(ち、近い…)」


全身を穴が空くほどに見つめられ、どうすればよいかわからない名前がエースの顔を見つめると、2人の目が合った。


「…お前、ミルクか?」


「は、はい!」


エースの的確な推理に思わず背筋を伸ばして返事をする名前。
すると、先程まで眉間に皺を寄せていたエースの顔の緊張が解け、眉をハの字にして困ったような安心したような笑顔になる。


「あー、やっぱりな。そうかお前がミルクか」
「は、はい。えーっと…私も自分でよくわかっていなくて…」
「あぁまあ、そりゃあそうだろうなぁ」


何か知っている様子で一人納得するエースについていけない名前が不思議そうに首を捻ると、まあ座ってくれとでも言うようにベッドに腰掛けて隣をトントンと叩くエース。
今はとりあえず従おうと促されるままに名前もベッドに腰掛けると、エースは先程持ってきていた大きなジョッキに注がれた並々の水を豪快に飲み干して話し始めた。



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