エースに連れられて甲板の船尾側に出ると、彼の言った通り、船はすでに海の真上を波に揺られて次の島を目指していた。


ペタリと名前が床に座り込む。
さっきのエースの話では、昨日口にした果実のせいで#名前#はもう泳げない体になっているらしい。
幸い島はまだ肉眼に見えているが、とはいえどちらにせよ泳いで引き返すには随分と無理のある所まですでに船は進んでる。


「…どうしよう」


まさか引き返してほしいだなんて厚かましい願いをするわけにもいかない。
しかし、じゃあこの船に置いてくださいだなんてそんな事はもっと言えるわけがない。
何よりこの船は海賊船。
名前のような無力な女子供が乗るにふさわしくない船である事は海に出たことのない名前でも想像に容易かった。


「一応聞くが、お前は島に帰りたいのか?」


座り込んだ名前に目線を合わせるようにしゃがみこんだエースが、島を見つめる名前の顔を覗き込む。


戻りたいかと問われれば、その答えはイエスでもノーでもない。
ただ、他にいくあてがないだけのこと。
強いて言えばサボってしまった仕事の事が少し気がかりなくらいだ。


「…別に、」
「そうか、なら俺にちょっとばかし身を預けてみねぇか?」
「…?」


まぁ悪いようにはしねぇから、そう言ってエースは床にへたり込んだ名前の手を引いて立ち上がらせると、甲板の中心へと向かう。
そこには昨夜にも顔を合わせた船員達にオヤジと呼ばれる大男が、あの大きな椅子に鎮座していた。


「よお、エース。なんだぁ、その見慣れねぇ小娘は」
「なぁオヤジ、訳あってちょっとばかり話を聞いてくれねぇか」


大男は名前を視界に捉えると、見慣れぬ乗客の姿に少し怪訝な表情を浮かべエースに問いかけるが、戦意のなさそうな女子供である事からかひとまず話を聞こうと耳を傾ける。
そしてエースは大男に事の経緯を話し出した。



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