10

桃鉄を10年やり先ほどやっと終了した。結局チョロ松と十四松は来ずお腹がすいたからと皆で家を出る。わいわいと当たり前のように居酒屋に向かおうとしているニート達に名前は待ったをかけた。

「金、金あるの?」

名前がそう言うと4人同じ顔が振り向ききょとんとした後「え?」と首を傾げた。

「や、さすがにこの人数は奢りたくない…し」
「え〜でもタダ飯食えるとこなんてチビ太のとこしかないし〜俺もちょっとくらいなら金あるよ?ホラ」

そう言っておそ松はポケットから小銭を取り出し名前に見せるがそこには鈍い色をした小銭達しかいなかった。

「うまい棒しか買えないっ!」

他の松もおそ松と同じくらいのお金しか持っていないことがわかり名前はますます顔を歪める。大学生の名前が大人4人も奢るとなるとそれはとても大変なのだ。先日バイトも辞めてしまったと言うのもある。どうするどうすると言いながらも足は居酒屋に向かっているニート達に名前は諦めつつとぼとぼと歩いていると前から「兄さーーん!!」と大きな大きな声と共にカラ松に激突をした黄色い物体。

「あ、十四松」
「一松兄さんちわっす!どこ行ってたの!今日カレーだって母さん言ってたよ!」

黄色の人物を見て一松が言った言葉に名前は黄色を見つめ「十四…松?」とぼそり小さな声で呟く。カラ松は道路でピクつきながら横たわっているが誰も構わないどころか一松は踏付けつつ十四松と話していた。

「ちょ、十四松いきなり走んないでよって…名前!?」
「…あ、えっと…チョロちゃんだあ?」

スーパーの袋を両手に抱え走ってきた同じ顔、名前を見て驚きのあまり袋を落としてしまった。

「え!名前?!どこ!ドコドコドコ!!」
「こ、ここ…」

十四松の問いに戸惑いながらも手を挙げるとにぱぁと輝く笑顔のまま十四松は名前の両手を取りぶんぶんと振り出した。

「名前!!名前だ!久しぶり!!名前だ!会いたかった!元気だった??野球しよう!」
「お、おう?十四、松?なの?え?ちょっとなんでこんな、え、十四松どうなってんの」
「名前…十四松兄さんについては触れないで…」
「高校デビューでこうも変わるの?俺ついていけない…」
「触れないで、これはもう十四松というジャンルだから」
「なにそれ一松俺わかんない…けど受け入れるしかないのね」

名前は十四松に向き直り「久しぶり、元気だよ」と微笑みかけた。

「ところで十四松、今日松野家はカレーなの?」
「そう!カレー!今日は牛肉ゴロゴロカレー!」
「で、今僕たちが買い出し中。名前ホント久しぶり」
「久しぶりだねチョロちゃん、ドルオタなんで聞いてたけどあんまり変わってなくて安心した。というか十四松ショックのがやばいわ俺」
「ドッ!?誰に聞いたの!?って言われなくてもなんとなくわかるけど…ってそうだ、これからどっか行くつもりだった?」
「ご飯食べに行こうって話なんだけどみんな金ないからどうしよっかって。でも松野家カレーならみんなそっちで食べなよ」
「なんかカレーカレー言われたら食いたくなってきたわ!ひっさびさのカレー!しかも今日肉ゴロゴロなんでしょ!ラッキー!」

カレー!カレー!とおそ松と十四松は肩を組み歩き出す。なんとか4人分払わなくて済んだ名前はホッと安堵した。

「じゃあ俺帰るね、みんなまたね〜っと?」

軽く手を振り背を向け歩き出そうとした名前のリュックを掴み歩みを止めさせたチョロ松は「え?名前食べに来なよ」ときょとん顔で言う。

「そうだよ、名前はご飯どうすんの?うちで食べてきなよ」

ひょこっとチョロ松の隣きたトド松も名前を引き止める。

「え〜でもなんか悪くない?」
「いや、むしろ母さん喜ぶんじゃないかな、この間来た時嬉しそうだったし」
「ホントに?えへへ〜じゃあ行こうかな」

お言葉に甘えて、と向きを変え皆と同じ方向へと歩き出す。少し先にいたおそ松が「名前も早く来いよー!」と叫ぶ。

「あれ近所迷惑になるって分かってやってんのかね」
「おそ松兄さんに限ってそんなこと考えてるとは思えないね」
「トド松に同感」
「右に同じ〜」

上からチョロ松、トド松、一松に名前。名前達の方に手を振る愉快な2人に手を振りつつゆったりと歩く。「カレーなんて俺も久しぶりかも、しかも家庭の味」と名前がぼそりと呟くと小さい頃から名字家の親の帰りが遅くご飯も家族一緒に食べる事がままならないと知っているチョロ松達は一瞬言葉を詰まらせた。

「っ、名前またいつでもうちに来ていいんだからね?」
「チョロ松兄さんの言う通り!名前が寂しいのなんてなんか耐えらんないから!」
「…6人も7人も変わらないし」

先ほどよりも距離を詰めてきた3人に照れ笑いをしながら礼を言う名前。そんな幸せそうな後ろ姿を地面に伏せながら見つめているカラ松は涙を流していた。

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