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ただいま、その声に混じりお邪魔しますと名前は言うが十四松の大きな声でかき消される。お使いを頼んだ松代は「遅いじゃない」と玄関に顔をだし自分が生んだ記憶のない顔を見つけ「あら」と声を高くする。

「名前ちゃんじゃないの!」
「あ、母さん今日名前も一緒にカレーだべたいって」
「すいません、あ、お邪魔ならすぐ、帰るんで…」
「んもう!邪魔なわけないじゃない!上がっていきなさい!今から作るから少し時間かかっちゃうけど、それでも大丈夫?」
「あ、全然大丈夫です、おばさんのカレー楽しみにしてます」
「うふふ、名前ちゃんたらうまいんだから!」

靴を脱ぎ上がってきた名前に近づきその背中を思い切り叩く松代に苦笑いをする。おそ松は「出来上がったら呼んで〜」と言いながら二階に行ってしまいほかの松もどんどん上がっていってしまう松代に一言言い自分も上に行こうと名前が足を進めたときガラリと玄関が開く。

「…………あ」

名前が振り向くとそこには斜めにサングラスをかけぼろぼろなカラ松が涙を流しながらそこに立っていた。

「カ、カラ松…」
「……名前」
「お、俺が言うのもなんだけど上がってきたら?」

ぐすんぐすんと泣きながら上がってきたカラ松はそのまま二階には行かず入ってすぐの麩を開ける。名前は記憶が正しければあそこは居間だろう、とカラ松の後に続く。部屋の端に重なっている座布団の上にぼすんと頭を乗せ動きを止めるカラ松に名前はどうしようかと頭をかく。

「カラ松?ごめんね、俺も、忘れてた…」
「じどい」
「ごめんて」

名前は隣に座りカラ松のボサボサになってしまった頭を撫でると顔を動かし名前を見上げるカラ松に名前はもう一度謝る。

「カラ松、ごめんね、ほんとに」
「べ、別に名前が悪いわけじゃない、から」
「それでも俺もみんなと一緒にカラ松おいてっちゃったんだし同罪だよ」

頭を撫でていた手を背中に移動しゆっくりとさする名前、それを無言で受けるカラ松だったがゆったりと上半身を上げ名前と向き合う。

「名前はきちんと謝ってくれただろう?それだけで十分さ」
「…ぷは、鼻垂らしながら言ってもカッコつかないから」
「っなん!?」

ごしごし、鼻の下を擦るカラ松に名前は「あ〜あ」と呆れたように笑う。それに気付いたカラ松は名前を睨み「笑うなよ」というが未だ潤んでいる瞳で言われても怖くもなんともないと名前は笑う、それにまたむっとしたカラ松の少し汚れた頬に両手を持っていき包むようにすると驚いたカラ松の眉間のしわがなくなった。

「な、名前…?」
「カラ松くんは優しくていい子ですね、魔法をあげましょう」
「は、え…」

カラ松が知っている名前とは違う口調、違う表情に戸惑いを隠せない。どんどん赤くなる顔に名前は気づいているだろうかとそわそわするカラ松をよそに名前は頬に置いた手をやさしく回し始めた。名前の手に押され唇を突き出す形になったりのっぺりと引っ張られたりとカラ松の顔は大変面白いことになっている。

「痛いの痛いのおそ松のお腹にとんでいけ〜」
「………え?」
「…………ああああダメだ!ダメ!はっず!超恥ずかしい!!!無理!」

ぽかんと見つめられた名前は負けじどカラ松を見つめていたが恥ずかしさの限界でカラ松の頬においていた手で自分の顔を覆いばたんと畳に倒れる。

「カラ松、今の忘れて…」
「…は!?ちょ、忘れられるわけないだろ!あんな…!」

可愛いこと!と言いそうになりカラ松は詰まらせる。一体なぜ名前はいきなりあんな、子供をあやすようなやり方をしたのか、とても疑問に思うカラ松はやっておきながら恥ずかしがっている名前に向かい「どうしたんだ?」とできる限りやさしく聞く。

「…いや、今度学校でこどもと接する…からその練習を…カラ松でやってみようと思ったんだけど…無理!恥ずかしい!」

真っ赤な顔して忘れてと叫ぶ名前に先ほどの顔の距離などを思い出しカラ松はまた赤くなる。

「あは、あはは、カラ松、顔真っ赤」
「名前だって真っ赤っかだぞ!!」
「俺たち真っ赤っか、おそ松かよ、あっはは」

赤い顔した二人が見つめ合い笑っている、この状況だけ見てしまうと二人の関係を疑う者もでてくるだろう、事実ピンク色の男がその状況を見ていたことはカラ松も名前もまだ知らない。


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