つむぎくんと両思いになった。この部屋のドアを叩く音が嬉しくてたまらない日々に変わった。毎日ではないけれど、その分その時間が愛しくてどの時間も私の宝物になった。
先日、私の部屋に縛られてやってきた日々樹さんも夏目くん宙くんと一緒にやってきて、賑やかすぎて看護師さんたちに怒られたりもした。彼らからしてみるとささやかなものであるかもしれないけれども、今まで変化のなかった私の世界はあっと驚くものばかりであった。
今日も、つむぎくんが私の部屋にやってきた。ライブの日程が迫ってきて、忙しくなりそうだとか、部活の部長が難しい人だとか。いろいろと話をしていて、ふと思った。いつもDVDで見るのだけど、いつか、つむぎくんが本当に踊って歌ってる姿をみたいな。って思った。病院と家を半年ごとに移動するような生活なので、外なんて移動中ぐらいしか見た記憶がない。だから学校もレポートとか、だけになっちゃってるし、普通。なんていうものは私とは縁遠い存在なのだ。そういう理由もあるけれども、つむぎくんの幼い頃を考えると、歌って踊るような姿が思い浮かばないのも事実である。本好きで、すこし…かなり抜けてるというか天然というべきなのかわからない領域で、確かに幼い頃はお家がアイドルスクールを運営してたとかないとかあるし。確かにライブのCDをもらったりしたけども、実感が湧いてないのだ。

「どうかしましたか?」
「ううん、いつも映像はもらうけど、本当に踊って歌ったりしてるとかっこいいんだろうな。って思って。」

一昨日、夏目くんに肘打ちされてる姿を見ると、信じられない。

「今度、退院したら見に来てください。」
「退院なんていつになるかわからないじゃない」
「骨折だとかなら、なんとかなるんでしょうけれど。」
「さすがに、家にいるときなら完全防御していけば許してくれるかもしれないけど。」

今は病院だし。 抜け出すだなんて持っての他だろう。後のことを考えたら、多分厄介そうだ。

「もし、外に出れるならつむぎくんのライブが見たいな。」
「そのときは夏目くんも宙くんも協力してくれますよ。」

今、なんとなく、夏目くんが不機嫌になって、つむぎくんのみぞおちに肘を入れてる姿が浮かんだ。…手伝ってくれるのか、怪しい気がする。いまだ起こらないことに対して、少し恐怖を抱いていると、大丈夫ですよ。雪華ちゃんのお願いですし、俺は魔法使いですから。任せてください。と胸を張るけれども、その姿が逆に不安を煽る。いぶかしげな眼で見たら、信用されてないですねぇ。と悲しそうに眉を下げるので、慌てて私は否定する。…思ったけども。

「じゃあ、一緒に考えようよ。脱走する気持ちで。ほら、言ってたじゃない。えっとーイタリアに行ったつもりごっこの脱走版。つむぎくんと一緒にどこに行こうってやってみようよ。」
「えぇ!?雪華ちゃんだめですよ脱走は!?」
「いや、つもりだから。しないよ。もしもの話だからね?もしもだから、だめじゃないでしょ?」

そう伝えると、つむぎくんはほっとした様子で、うん、私が実行すると思う?なんて問いかけたら過去の例えを引っ張り出してくるので、そこに関してはほんとうにごめんっていう気持ちになるけど、過去だからね?私はつむぎくんの中でどれだけ小さな子の扱いになってるんだろうか、逆に心配になるし、人の話半分ぐらいしか聞いて無くない?

いけないことなんてないの。




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