そうして始まった謎の夏目くんとのやり取りは、なんだか違う気はする。――というか絶対に違う。まともに私に恋人なんていないし正確にはいなかったのだが、今目の前の彼氏という箱にいれるのは違う気がする。確かに彼氏が欲しいといったが、世界のどこを探して自分の幼馴染が彼氏候補だよ。と幼馴染の知り合いを連れてくるのだろうか。犬でも拾ってきたかのようにいえるのか、その精神がわからなくて頭痛がしてきた。情報が多すぎる。というか幼馴染のつむぎくん――なんでこうも、察しが悪いのか。悪いで済ましていいのかも定かでない。というか、幼馴染と謎の今彼が一緒にお見舞いに来るという話があってたまるか。
そして、無駄に気を回したつむぎくんは俺は飲み物買ってきますね。と部屋を先ほど出ていったのだが、まぁ顔もまだ数度合わせた程度の私たちには高度な会話のやり取りなんていう文明は持ち合わせていない。向こうも頼まれたから暫定の立ち位置に立とうとしているし。どうしたらいいんですかね。私は。

「雪華ちゃん、君はこのままでいいノ?」
「…ですよねぇ……」

ベッドサイドテーブルの上に肘をついて頭を抱える。どうやら、この眼前のなんちゃって暫定の今彼夏目くんはどうやら彼としての役割を果たすつもりはないらしい。まぁ、見事に幼馴染は騙されているわけだ。

「だめだとは思ってるですけど。」
「というカ、この立場と現状が問題だと思うんだけド?」
「うーん…。」

どうもこの夏目くんは私の気持ち自体を会ってすぐの状態でくみ取った様子で、私がつむぎくんに好意を抱いてるのも悟られているのです。初対面――病室乱入事件じゃない方、つむぎくんが連れてきたあの初回で幼馴染は私たちを置いて現状と同じく飲み物を買いに出て行かれて、罵りに近い呆れを吐き出してくれたのもつい最近のことだ。もうこの時点で、彼は彼氏の役割として果たすつもりはないご様子だ。

「さっさとセンパイとひっつけばいいのにネ」
「できてたら、そうなってるって。」

いつ来てもおかしくない死をもってつむぎくんのところに飛び込みたくはない。万が一死んでしまって、これ以上の悲しみを彼に抱かせるのはしたくない。なんて弱い私なんだろう。一緒になりたいと願うと同時に悲しみたくないと思ってしまう。頭を抱えたまま首を横に振って、あーだのうーだのうめいていると、ため息をつかれた。ぐずぐずしてる私も問題なんだけどさ、あのつむぎくんもそうなんだよね。人の事言えないんだよね。

「そういうところも似てるよネ。きみたちハ。不器用で人には甘すぎル。」

人が動く気配を感じた。そして、頭を撫でているぬるい熱。夏目くんが慰めようと頭をなでる。つむぎくんとまた違う頭の撫で方に、なんだか悲しくなって涙がにじむ。もうすぐでつむぎくんも帰ってくるのに、泣いてる顔を見せるわけにはいかない。夏目くんにばれないように近くのタオルに涙を押し付けた。

イミテーションなら、いらない。




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