皮肉なことに、夏目くんと奇妙な関係になってからつむぎくんが病室を訪れる頻度が増えた。
つむぎくんは夏目くんと一緒に現れて、私と夏目くんを2人きりにした後にまた夏目くんと帰っていく。
最初は耳慣れなかったつむぎくんより少し低めの優しい声も、いまではそっちを聞いている時間の方が長いくらいだ。語尾に引っかかりを覚える不思議な話し方だけど、耳触りが良くて心地いい声。……つむぎくんの声の方が好きだけどね、なんて口にしたことは無かったけど。

「じゃア、問題点をおさらいしよウ」
「うん」
「まずキミ、雪華ちゃんはセンパイのことが好きダ」
「……はい」

改めて他人から言われるのも何だかおかしな感じだ。でも残り時間は多くはないし(たぶん)、現状の歪みまくった関係性は解決した方がいい、と、思う。

「恋人が欲しいと強請ったとこロ、センパイはボクを紹介しタ」
「そうです」
「ボクに対して特に恋愛感情はないけド、ボクと付き合ってることにしてル」
「……うん」

いやだって、初対面のひとにいきなり恋愛感情を抱けってなかなか難しい話だ。もちろん夏目くんが嫌いなわけじゃないけど、恋愛感情で好きかどうかなんて分からないし、恋人になるならつむぎくんがよかった。

「ほんと二、センパイに気を使いすぎだよネ」
「……だって、私のためにってつむぎくんが動いてくれたのに」
「好意を捨てたらセンパイから嫌われると思っているのかナ。"そんなに無理をしなくてもセンパイは雪華ちゃんを嫌いにならないよ"」
「……え?」
「"キミはもっと我儘になっていい"」

すとん、と言葉が耳に通って、心に落ちた。
目を丸くして夏目くんを見つめる。夏目くんはへぇ、と呟いた。

「雪華ちゃんはセンパイと違って魔法にかかりやすい体質のようダ。」
「魔法?」
「……こっちの話だヨ。それよりそろそろ直接本人に話したらいいんじゃないかナ」

失礼しますね〜と緩い声がして、ドアが開く。夏目くんはひらひらと手を振って出ていってしまった。

「あれ、夏目くん、もう帰っちゃうんですか?」
「うン。じゃあネ、雪華ちゃんは頑張っテ」
「え、うん、?」

夏目くんに置いていかないでくださいよと言うつむぎくんを慌てて呼び止める。

「待って……待って、つむぎくん」
「雪華ちゃん。もしかして、夏目くんと喧嘩でもしましたか?」
「そうじゃないよ」

心配そうに私に問いかけるつむぎくんに相変わらずだなぁと苦笑した。他人のことばかり考えて、やさしいつむぎくん。そんなつむぎくんに……わがままを言うのは、少しだけ気が引けるけど。

「あのね、つむぎくん」

私の精一杯のわがままを、ぶつけてみようか。


がらくたさえも愛おしい




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