こういう仕事は値段も高くなく応募も少ないため通りやすい。
他人と接しなくていいし、自分のペースでできるからよく好んでやっていた。
資金稼ぎは大切や、でも、小さなことからこつこつと〜なんてお師さんには似合わん。そんならおれが率先してやるべきやんね。
そんなわけで、ゴミ袋片手に校内のゴミ拾いをしていると、女子生徒がアイドル科の校舎へ入っていくのを見かけてしまった。
通常アイドル科に女子生徒はいないし、プロデュース科の転校生でないことは遠目でもわかる。
「……迷いこんできたんやろか」
もしそうなら、ここに入ってはいけないと助言くらいはしたほうがいいんやろか。
いや別に、自分には関係ない人物だろうけど、今教えればあとから叱られることもないだろうし……逆に、ここで見逃して後で怒られている場面にでも出くわしたら自分がいたたまれへん。
そこまで考えて、声をかけることにした。
「お〜い、そこの人〜」
「……私?」
「あんなぁ、アイドル科の校舎は勝手に入ったらあかんのん……って、」
呼びかけに振り向いたその人の姿を見て、思わず眉をひそめた。
昨日、お師さんを殴った人やん。
「何?」
黙ってじっと睨むような形になってしまった俺に、キツめの視線が向けられる。
あかん、こいつは敵や。助言なんてしよう思うんじゃなかった。
「……なんでもあらへんよ」
「そう。……あんた、昨日かん……斎宮と一緒にいたやつだよね」
「かん?」
「そこは気にしないで」
いや、お師さんのどこに「かん」が入っているのかわからん。気になるやん。
とはいえその疑問を口にする間もなく、女はつづけた。
「今日、あいつがどこにいるか知ってる?」
「なんでそんなことあんたに教えなあかんの?」
お師さんをあいつ呼ばわりされてかちんときた。
売り言葉に買い言葉の勢いで返せば、キッと睨まれた。
「小説の初稿。あいつが持って来いって言った。」
「お師さんが?」
いや初耳なんやけど。いつの間にお師さんと仲良くなっとったん?
「……今はたぶん、図書室で調べものしてると思うで。集中しとるとこ邪魔したら怒るから、おれは終わるまで待っとるつもりやけど」
「図書室ね、ならちょうどいい」
「って、ちょっと!?」
女はお師さんの場所がわかるとすぐ歩き出した。
いや、だからアイドル科の校舎には気軽に入ったらあかんねんて。
「図書室に入る正規の手続きは踏んでる。ごちゃごちゃ煩い」
「っはああ?」
言い切ると女はさっさとその場を後にしてしまった。
……おれ、やっぱあの女嫌いやわ。