もっと知りたいと願った


冬の気配が濃くなってきた。衣装作成の校内アルバイトや自身のユニット用衣装などを作る傍ら、気まぐれにマフラーを編んでみようかなどと思い立ったのはほんの少し前のこと。
気がつけば息抜き代わりに編んでいたマフラーは既に3本編み終えていた。

「なあお師さん、それ、誰かに渡すん?それともどこかのユニットからの依頼なんやろか、」
「いや……」

影片に興味深そうに尋ねられ言葉を探す。
毛糸もタダではないし、僕は一体何をやっているんだろうか。

「……これは影片が使うといい」
「えっ、おれ、もらってええのん?」
「防寒もせず風邪などをひかれても困るしね。せいぜい気をつけたまえ」
「うん、お師さんありがとう!」

編み終えたマフラーのうち、瑠璃色のものを差し出せば影片は嬉しそうに笑った。
残るマフラーは2本。臙脂色のものは自分で使うとして、残りは藤紫色。
ふと、香織姉さんの顔が浮かんだ。
あの人はいつもお姉さんぶりたがるけれど、こういうプレゼントは喜ぶだろうか。
……いや、弟分からのプレゼントならば普通に喜びそうだ。ならば。

「んぁ?お師さん、にやにやしてどうしたん?」
「にやにやなどしてないのだよ」



***



「香織姉さん、これ」
「突然どうしたの?」
「あげるのだよ」

バス停で香織姉さんと顔を合わせるなり、ラッピングしたマフラーを手渡した。
きょとん、とした表情で受け取る香織姉さんに特別な意味はないのだと説明する。

「手慰みに作っていたのだが、作りすぎてしまったからね。もらって貰えるとありがたい」
「あっ、マフラーだ、かわいい」

じゃあさっそく、と言って香織姉さんがマフラーを首に巻く。
淡い藤紫は香織姉さんによく似合っていた。

「ふふ、あったかい。ありがとうね」
「お礼を言われるようなことでもないのだよ」

ほころぶように笑う横顔はやっぱり綺麗で、その表情を引き出せたのならばこのマフラーにも価値はあったのだろう、なんて考える自分がいた。

「しゅーくんには、最近もらってばっかりだねぇ。」
「どういう意味かね?」
「ほら、ライブのチケットもくれたでしょう。何かお礼をしたいなって考えてたのよ」
「僕がしたくてしていることだ。気に病む必要はないよ」
「でも、嬉しかったから。しゅーくん、何か欲しいものはある?」

単刀直入な質問に苦笑する。
欲しいものは自分で手に入れるし、わざわざ香織姉さんの手を煩わせるのは本意じゃない。
しかし、香織姉さんの好意を無碍にするのも悪いかと、何か不足しているものはなかったか考えてみる。

「……すぐに浮かぶようなものはないのだよ」
「そう?じゃあ、何か浮かんだら教えてね」

ああもう。
「約束ね!」なんて無邪気な笑みを見せるから、また僕の中の恋心が煩い。
赤くなっているだろう頬を誤魔化すので精いっぱいで、不機嫌な表情になっている自覚があった。



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