禁じられた遊びをしよう


今度のライブに必要なものがあるんだが、女性の意見を聞きたい。と玄関先までわざわざご挨拶と約束を取り付けに来たのだから断る理由もない。その場で日時と近所の繁華街の入口で待ち合わせをする。あれやこれやと考えて、そういえばこの間のマフラーのお返しをしていないことに気が付いた。何が欲しい?と聞いても、あんまり答えてくれる子でもないので、こちらから勝手に動いてしまおう。手作りのもの――とも考えたけれども、いただいたマフラーは立派なもので私が作ったらかなりの貧相なものになってしまうだろう。そう判断して私は当日に買いに行くことを決めた。
開店と丁度に百貨店に潜り込む。
何がいいだろうなぁと考えながらよく使う日常のものがいいな。とか考えが行きついた。何を贈っても喜んでくれるだろうけれども、身に着けて不相応じゃないもので、答えを出すようにしてたどり着いたのが文具品であった。何処に行ったって、書く。という行為はどこにでも発生する。少しひねくれてるのにまっすぐだから、きっと傍らにおいてくれるんじゃないかと思ってしまう。
そう決めたら行動早い。目的地も決まっているので、迷わずまっすぐ目的のフロアに向かう。書きやすさとか胸ポケットに入れてもおかしくないものを、なんて考えてると一つで目が留まった。正直言って一目ぼれともいえるぐらいにこれだ。と直感的に思ってしまう。値段だって当たり障りない金額で、贈り物にも安すぎず高すぎないちょうどいい金額。特に印象的なのはそのボディの色。ラベンダーよりも明るくなく、青み少し強いパープル。しゅーくんの目と同じ色のボールペンとセットの万年筆。
キャップトップには深紅の石を模したものがはめられていて、初めて見たライブを思い出した。これに似合う色のインクを思い浮かべながら近くの店員に声をかける。きっと喜んでくれるんじゃないかな。そう思いながらもラッピングの指定をしていると名入れのサービスをしているというので、しゅーくんの本名を入れておいてもらう。きっとサンセリフだとチープだと怒り散らしている未来も想像できたので高級感のある方向でお願いしておく。
人のよさそうな女の店員さんは慣れた手つきでラッピングを施してくれて、頑張ってね。なんて言って応援してくれているのだが、実にそうじゃない。…季節柄何と間違えられたのかは考えないでおこう。受け取って、ちらりと時計を見る。約束まで30分。どこかに入るにしては短く、立って待ってるにしては長い。でも、しゅーくんは早めに来てそうだと思うので、受け取った足で集合場所にたどり着く。渡したら喜んでくれるだろうか、渡すタイミングとかどうしよう。だとか下を見ながら考えてたら視界に見たことのない靴が目に入った。ふっと目を上げればしゅーくんが何か言いたげに立っていた。

「おはよう、しゅーくん。」
「姉さん、なにかあったのかい?」
「ううん、なんでもないよ。ちょっと早くに来ちゃったんだけど。しゅーくんも早かったね。」
「女の人を待たすのはよくないからね。さぁ、姉さん。お手をどうぞ。この先足場も少し悪いからね。」

差し出された腕にそっと手を乗せて、さぁ行こうか。の声掛けで、町の中を歩き出す。今日歩くルートの話をしながら、どこの店に入るのかと話をしている。予定の段階でとても楽しそうに話をしているので、それに相槌を打ちながら人を避けながら歩く。

「しゅーくんって、こんな気楽に街中を歩いて大丈夫なの?アイドル…なんでしょう?」
「大丈夫だよ。香織姉さんが心配する必要はないんだよ。」
「なんだか、駄目なことをしてるみたいだね。」
「お天道様に顔見世できないようなことはしてないよ。なにを恥じているのかね。」
「うん、そういうことじゃないんだけどなぁ。しゅーくんが言うならいいのかな?」
「勿論、様々な手は打っているのだよ。」

得意げに言うのだから、問題はないのだろう。そう思いながら、しゅーくんの目的地をめぐる。今度のライブのための意見が欲しい。というのだから素直に思ったことを伝えると、関心深そうに聞いてくれる。どこか今までとは違うような感じがして心の端っこに何ともいえない寂しさだけが灯った。


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