禁じられた遊びをしよう


…今何を言われただろうかと悠長に考えた。気まぐれで読みたい?何を言っているんだろうか?理解ができない。それと同時に怒りがわいた。誰があんたの手慰みのために渡さなきゃならないんだろうか。昨日顔面に喰らわせてしまった問題も発生したのを思い出したのでなんとか踏みとどまった。さもありなんというような面構えで、癇癪玉はそんな顔してる。イラっとしたし、一発かましてやりたいと思って返事をどうするかと頭を捻ったら名案は思い付いた。あいつも労力をかければいいのだ。そうすれば今のイラっとしたのもある程度軽減されるだろう。

「…部室に行けばあると思うけど。」
「じゃあ取りに行ってくるといい」
「やだね。あんたがとりに来ればいいじゃん。」

アイドル科に入るのにはかなりの労力は居るけど、アイドル科が他の科に入るのには手続きも何もいらないし、先に場所へは行ってるし、それの続き書いておくから。そんな言葉を放って図書室を出る。言い逃げて走る。廊下で行き違った真面目そうな生徒が怒鳴ったがそんなのも気にせず一気に職員室に駆け込んで正規の手続きをして、アイドル科の校舎を抜け出して普通科の校舎に潜り込む。振り返れども、あの癇癪玉の姿はない。見つかったり追い付かれたらこの仕返しに意味がなくなる。身を隠すように普通科の校舎の中に入って、そのまま部室まで直行して今まで自分で書いた本たちを引っ張り出す。エアコン修理業者もまだ来ると連絡は来てないので、開けた中はムッとした熱気が頬を撫でる。このまま中にいると熱中症になりそうだからと少し立て付けの悪い窓を開けると、気持ちだけましになった気がする。結局気持ちの問題。
部屋の暑さに適応しようと玉のような汗をにじませながら過去の部誌を引っ張り出す。今までと作り方も違う過去の文章を机の上に置くとなんだか多少の気恥ずかしさを覚える。自意識過剰かと頭を抱えたくなった。まぁ悩んでも仕方ないので、さっさと持ってきた荷物を開いて続きの世界に入るとしよう。色々書きなぐったノートを開いて、添削の入ったものを開きながらあれやこれやと書き連ねる。添削の添削それが終わって最終的な清書してもう一度確認して賞レースに応募する。秋の終わりの締め切りまで余裕すぎるほどの余裕を持った進行になったことに関しては感謝しかないが、やっぱりさっきのは許せるものではない。文字を追いながらも頭を一度かすめてしまって思考が止まる。すっきりしない思考を都に出してみたが、やっぱり晴れることはない。

「やっぱりもう一発殴っておけば良かったかもね。」
「僕の顔はそう何度も叩いていいものではないがね」
「ん?あれ?本当に取りに来たの?」

ゆるゆると視線を上げたら、不機嫌そうな癇癪玉が目を吊り上げて睨んでいた。多少人にもまれたのか、多少服がよれてくたびれている感も多少におわせているようにも見える。

「泉本、君が取りに来いといったのだろう。言質を翻すな」
「あぁ。そう。本、そこにあるから。もっていくなら貸出履歴に書いてって。」

筆箱を滑らせて渡す。落ちてないことを確認してからまた作業に戻る。前に立つ癇癪玉は筆箱からシャーペンを取りだす気配はうかがえるのだが、書いている気配はない。目線を上にあげると、癇癪玉は深いため息をついて前の席の椅子を引いて自らの身をそこに据えた。

「ここ、エアコンないわよ。」
「それでもいい。ここに二度も足を運ぶつもりはないから、今すべて読む。」
「あっそ。勝手にすれば。」

人の多いところは嫌なんだと、零しながらも一番近いところに置いていた一冊をとり本を開く。ペンネームは何だと聞かれたが、言うつもりはない。反応すらも返さないようにしていたら、癇癪玉はあきらめてか視線を部誌に向けて、なんでもないという風体で口を開く。

「きみのなら、文体でわかる。」
「あっそ。好きにして。違ったら全力で笑ってやる」
「当たっていたら、きみに一つライブの設定でも頼んでみようか。」
「当たったらね。」

部誌は昨年書いた一冊。チャンスは一度。
人の名前を得る。という過去陰陽道とかで言えば真名を得るに近いペンネームあて。設定もなにもかも大幅に違う書き方をしているのだ。ばれないだろうと判断して作業に戻ることにした。


[ Back ] [ Top ]