明日になったら消える魔法


自分は存外直情的なのかもしれない、と頭を抱えた。
本日2つ目の姉さんからの贈り物にふわりと浮いた心地のまま、彼女を抱きしめていた。伝えた想いは、重ねてきた想いは決して嘘じゃない。抑え込んでいたはずが溢れるように口をついて出たそれを、なかったことにはできない。せいぜい格好をつけてみたが、彼女には所詮子供の強がりと思われてしまっただろうか。

生ものだからと言われていたそれをいったん冷蔵庫へしまい、昼間に貰ったほうのプレゼントをあける。品のある万年筆に、姉さんからは自分はこんな風に見えているのだろうかと類推する。
少しは弟ではなくひとりの男として見てもらえていたのだろうか、などととりとめのない思考にとらわれそうになる。返事はいつでもいいなんて恰好をつけなければよかった。でも、想い続けてきた年月に比べればまだ少しくらい待てるだろう。なんて自問自答を繰り返す。本当に、らしくない。



幼いころの夢をみた。
自分をかばう、姉さんの背中。
いつだって自分は守られてばかりだった。守られるだけじゃなくて、守れる自分になりたかった。

「……強くなる」
「しゅーくん?」
「やられっぱなしなのは情けないし、悔しいから。誰にも負けないくらい強くなる」
「うん」
「その時は、ぼくが姉さんのお婿さんになって姉さんを守るよ」
「うん、約束ね」

涙でにじむ夕焼け、優しい姉さんの笑顔。懐かしい、約束。



ショコラフェスの当日まであと少し。
姉さんの協力のおかげで準備も順調、手作りのチョコレートもかなりの数を用意できた。
この分なら問題ないだろうと思いながらも細部まで手を抜かない。
そんな風に準備をしているところへ、珍しい来客があった。

「やあ、宗にいさんにしては珍しいネ」
「小僧。どうかしたのかね」
「ミカくんから相談を受けたんだヨ。最近のお師さんはなんか変なんよ〜ってネ」

思いもよらぬ言葉に目を見開く。
影片に伝わるほど、最近の自分はおかしかっただろうか。

「恋は人を変えル。宗にいさんも所詮は人の子だったってことかナ」
「何を今更。僕たちは最初から人間なのだよ」
「……そうだね、ボクたちは人間ダ。怪物になり損ねた愚かな人間」

小僧が噛み締めるように呟いた言葉が胸に刺さる。
過去を思い出して苦い気持ちが蘇った。
……だが人間でいることは悪くない、そう思わせてくれたのも貴様らだろう。

「小僧、」
「前を向けていないのはボクの方なのかもネ。前向きに……変わっていかないト」
「悩みがあるなら相談したまえ。僕は……僕たちは、いつでも貴様の味方なのだよ」
「うン、ありがとウ。なるべくにいさんたちには甘えたくないんだけどナァ」

くすくすと笑う小僧の表情にもう憂いはない。
すう、と一息いれて、「魔法使い」の顔になった。

「恋に悩める宗にいさんに魔法をあげよウ。」


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