1、2、Switch♪
楽しそうに小僧が笑う。ぱちん、と指を鳴らして出てきたのは小さな飴玉だった。
「魔力をこめた飴玉だヨ。心から何かを願いながらこれを舐めれバ、その願いは本当になル」
「いつかの星砂糖のように、かね」
「そうだヨ。まだボクにできるのはこのくらいだけド、宗にいさんには「意味」があることだと思ってネ」
「……ありがたく受け取るとしよう」
「うン。幸運を祈っているヨ」
願い……か。自分の願いは何だろうかと、自身に問いかける。
神や魔法に頼らずとも、僕は世界を生み出し広めることができる。足りない部分は自ら学び研鑽し補って進化していける。僕の芸術を広めるのは、僕自身の力でなければ意味がない。
ならば、小僧の魔法で願うべきは。
「……?」
不意に携帯が着信を告げ震える。表示された名前を見て、自然と頬が緩んでいた。
「しゅーくん」
耳触りの良い、聞き慣れた声。少し息が上がっているのは急いで向かってきたからか。
「香織姉さん。そんなに急がなくても僕は逃げない」
「早くしゅーくんに会いたいなって思ったら、気持ちが急いちゃって」
「……それは、嬉しいよ。姉さんに早く会いたかったのは僕も同じだからね」
ドキドキと加速する恋心は、今もとどまるところを知らない。
芸術を競い合い高めあう相手には影片が浮かぶが、羽を休める場所には彼女がいてほしい。
欲張りだと笑われるだろうか。ああ、僕はこんなにも、貴女のことが好きだ。
「あのね、この間の、お返事をしたくて」
「急ぐ必要はなかったんだよ、僕はいつまでも待っていられるから」
「ううん、私が早く伝えたかったの」
息を整えて、彼女がまっすぐに僕を見る。
帝王などと言われていても、彼女の言葉一つでこんなにも揺れる自分を、誰が想像できただろう。
「私も、弟じゃなくて、ひとりの人として、しゅーくんのことが好き。しゅーくんと一緒にいると楽しくて、あったかい気持ちになるの。私の世界がしゅーくんの色で染まるみたいに、しゅーくんの世界も色づくなら、すごく嬉しい」
「姉さん、」
「しゅーくんがくれる気持ちに応えたいし、これからもしゅーくんと大切なものを共有していきたい。これで、答えになってる?」
姉さんは少女のように頬を染めながら綺麗に笑う。
――香織姉さんに恥じない自分になれますように。
震えそうになる唇を堪え、微笑んで見せる。
「もちろんだよ」
「……もう、なんで泣いてるの」
「別に、泣いてなどいないのだよ」
「うそ、だって泣き出しそうな顔は昔と変わらないもの」
「ならばそれは嬉し涙だ。……人は、幸せに満ちると涙が溢れるものなんだね」
目と目が合って、どちらからともなく微笑みあう。
引き寄せられるように、自然と唇は重なった。