最低野郎からの忠告


そろりと目を開くと、綺麗な青色。そして一瞬の後に顔が近いと思った。

「大丈夫ですか?」
「あ、えっと!あのごめんなさ…っ!」

慌てて立ち上がろうとしたが、先ほど足を捻ったようで刺したような痛みが主張して、しゃがみこんだ。スタッフさんたちが大丈夫かと駆け寄ってくる前に、これはいけない。そう言いながら七種さんに抱き上げられた。いわゆる、お姫様抱っこ。

「七種さん!」
「自分は頑丈ですから!」
「いやいやいやいや!」

そんなほんとに漫画みたいなやり取りなんだけど!抵抗してもピクリともせず、七種さんはさっさとセットから離れて、安全な場所で私を下ろして救急箱を要請した。的確に動く姿は手慣れてるようにも見える。急いで救急箱を持ってきたスタッフから七種さんは湿布を受け取って、名前さん申し訳ありません。そう一言を詫びてから、ヒールを脱がしてそこに湿布を貼り付けた。独特の冷たさに小さく声が漏れたけれど、七種さんは気にすることなくテーピングを施していく。

「これで、一旦は大丈夫でしょう!」
「すみません、ありがとうございます。」
「こんな最低野郎が抱きかかえてしまったのは申し訳なかったのですが、早急に冷やす必要があると判断したので!」
「いえ、突然すぎて……。」
「捻挫もすぐに手当てをしないといけないと思ったので、女心も理解できない最低野郎が触れて申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「すごく手慣れてるようにも見えたのですけど、七種さんってお怪我とかよく――「名前さん、知らない方がよい世界もありますよ!」……」

同じ笑顔のままで言われてしまった。明らかな拒絶を感じて、一言謝罪の言葉が舌に乗った。彼はハッとするかのように、訂正するような言葉を言ったような気がするけれども、なんだかあんまりしっかり耳に入らなくなっていた。今日の捻ったこともあって、今日一日の撮影をストップすると言われて、申し訳なさのせいなのか、よくはわからない。スタッフさんからお大事に。なんて言われて申し訳なさといたたまれを感じてます。この度は申し訳ありませんでした。
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