微かな違和感


昼休みの少し前の時間に羽風さんは来ていた。芸能界のお約束というべき5分前行動。時計を見るとジャスト5分前だったので、抱えてた仕事達と一旦離れてなるべく支度をする。そんな準備をしていると時間は過ぎていた。

「名字さん。大丈夫?」
「今ちょうど終わったので大丈夫ですよ。」

机の端に持っていた書類を置いて、席を立つ。休憩時間だけれども、連絡はいつ入るかわからないので、外出用ボードに昼休憩。とだけ記載しておくのも忘れない。どこ、とランチの話を聞いてないので、何処に行くかわからないので、そうだけ書いておいた。
じゃあ行こうか。と軽快な声色と共にリズリン事務所を出る。
昼休み連れ出されたのは、ESビルから少し離れた少し古めの洋食屋さん。ESビルの息もかかってない珍しいタイプだな、なんて思いながらドアをくぐる。気の難しそうなおじさんに、羽風さんは人数を伝えると、奥の方でこじんまりとした席を通してくれた。

「ここね、ハンバーグ美味しいんだよね」
「へぇ。」

眼前に広げられたメニューは手作り感あふれる手書きのものだ。あの気難しそうなおじさんが書いたのかとも取れるきっちりしてる文字の傍らに小さくウサギや花が書き込まれてる。どことなくギャップ差にくすぐられてしまう。

「ここのメニュー、親父さんが書いて娘さんがイラストレーターの勉強がてら描くんだって。」

すこし身を乗り出して羽風さんはそうないしょ話を始める、親父さんが描くと思った?と付け足している。
確かにお店には一人しかいないので、てっきりそうなんだとも確かに思ってしまったので、同じトーンでこっそり返した。
だよね。なんて、くしゃりと顔を歪ませて笑った。今のドラマで使ったらすごく数字上がるんじゃないかな。とかふと思ってしまったがすぐに思考を消してメニューを見つめる。
ランチメニューあるんだな、こっちのグラタンも美味しそう。とか溢して思考に集中していることに気がついた。会話をしなければいけない!なんて思考が行き着いたので羽風さんは決めたのか問いかけようとして顔を上げたら、どうしたの?と言うように首をかしげられた。

「羽風さんは、決められましたか?」
「あ、ランチね。決めてるよ。」

すこし歯切れの悪い返答だったが、羽風さんを待たせるわけにもいかないので、すぐに決めようとしたら、慌てなくていいよ。と言われてしまったけれども、こちらも昼休みの都合上、早く決めなければ羽風さんの相談事にも乗れないことに気がついたので、羽風さんのおすすめ通りハンバーグのあるランチにした。
決めたことを伝えれば、スマートに親父さんに注文を頼んでもらって、さてと。ご飯が来るまでに本題に入りたいところ。私は羽風さんの出方を伺った。
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