全身全霊で伝えるよ
結論として。ご飯が運ばれてくるまでに本題に入ることは出来なかった。
会話がなかったわけじゃないし、むしろそこそこ楽しい会話はしていたが、彼はなかなか本題に入る気配がなかった。
そうこうしているうちに親父さんが運んできたハンバーグをちみちみ食べながら、ちらりと彼の方を見てみる。思い切り目があって微笑まれた。え?
「美味しいでしょ、ハンバーグ」
「それは、はい。美味しいですけど」
「よかった。名字さんの好みとかあんまりわかんなかったからさ」
ああ、こういう所が女の子慣れしてるんだなぁとしみじみ実感する。なんでこれをあんずさん相手にやらないんだろう……って、そこまで言ってしまうのは失礼か。本命だからこそ上手く対応できないってあるあるだよね、たぶん。
「相談っていうのは、大したことじゃないんだけど」
羽風さんがそう切り出したのは食後のドリンクが運ばれてきた頃だった。
ようやく本題か、と、少し姿勢を正して先を促す。
「率直に言うと、名字さんに俺はどんな風に映ってるか知りたくて」
「えっと……」
私に羽風さんがどんな風に映っているか?
これはアイドルとしての対外的な評価とか感想が欲しい、ってことでいいんだろうか。
たしかに身内だけだと意見も偏るだろうし、P機関のあんずさんもなんだかんだ夢ノ咲から彼を知っているから新鮮な意見とは言い難いんだろうし。
変な肩入れもなく、彼のアピールのメインターゲットである女性っていうと私くらいなんだろう。
「そうですね……特にこれと言って問題は無いと思いますよ。最近はバラエティ色強めなのが少し勿体無いかなって感じはしますけど、その分ライブでのパフォーマンスなんかでギャップも出てますし女の子ウケはいいと思います。もっと羽風さんの強みを活かした売り込み方っていうと」
「ああ、ちょっと待って。ごめんごめん、俺の伝え方が悪かったよ」
彼の仕事を思い出しながら意見を述べてみれば、途中で思い切り遮られた。
疑問符を浮かべながら彼の方を見ると、真っ直ぐな瞳に射抜かれる。
「アイドルとしてじゃなくて、羽風薫個人として。名字さん個人の目にはどう映ってるのか知りたかったんだ。……名字さんが、好きだから」
「……え?」
思わず間抜けな声が漏れる。
私が、好き?羽風さんが?でも、じゃあ、あんずさんは?
「急にこんなこと言われても困るよね……でも、俺は本気だからさ」
「いやあの、困るというか……もしかしてからかってます?」
「からかってるわけじゃないよ、ほんとほんと。……だから、名字さんに俺のことを意識して欲しくて。今はまだ事務所のひとりでもいいからさ、たまにまたこうやってランチとかできたら嬉しいんだけど」
すらすらと告げられていく言葉に思考が追いつかない。前提が違っていた衝撃というか、まさかこんな展開になるなんて思っていなかったというか。
呆然とする私に羽風さんは優しく微笑む。
「どうかな?」
「か……考えてみます」
私がようやくひねり出せたのは、何とも平凡な逃げの言葉だった。