まるで御伽噺


このご時世にパーティを開くから出席しろと言われて思い切り眉を吊り上げた。
ここでいうパーティというのは友達の家でお誕生日パーティーとかそういうかわいいものじゃない。
思惑を抱えた大人たちの陰謀や諜報が渦巻く、とっても楽しくない場だ。

「おや、貴女も来ていたのですね!こういった場はいつもお兄様方が担当されていたのでは?」
「七種……さん」

慇懃無礼を絵にかいたような男が現れて肩を落とす。得体の知れない大人たちに愛想笑いを振りまくのも疲れるが、こいつの対応もまた滅茶苦茶疲れる。得体の知れなさではその辺の大人より厄介だし、できればいることに気付かないでほしかった。

「本来このような場に自分のような最低野郎がいるべきではないんですけどね!どうしても今回は出席しないといけない事情がありまして。いやぁしかし、貴女がいてくれてよかった!知っている人がいるというだけで随分心強いですな!」

よくもまあ思ってもいないことをペラペラと喋れるものだなぁと眺めていれば、予想外の人物から声をかけられた。

「あっれ〜?お前名前じゃないか?わはははっ、久しぶりだな名前!うっちゅ〜☆」
「……レオくん?」
「おや、これはKnightsの月永氏ではありませんか」
「ん?お前誰だ?あっ待って言わないで考えるから!妄想するからっ!」
「ははは、噂に違わず面白い方ですな!」

突然現れたレオくんに疑問符を飛ばす私に構わず、いつも通りのレオくんと七種茨にどうしたものかと頭を抱える。会話かみ合ってないけど大丈夫なんだろうか……なんて、心配している場合でもないんだけど。

「彼は今日のゲストだよ。今日の主役が随分彼の音楽を気に入ったようでね……月永くんは後でピアノを披露することになっているんだ」
「おっ、出たな皇帝!」
「もう学生でもないんだから、その呼び方はやめてほしいんだけどね」
「これはこれは英智猊下!」

当然のように現れた天祥院英智にぽんと頭をなでられる。髪のセットが崩れるからやめてほしいんですけど、なんて声に出せるはずもなく。しかしこの場を離れるにはちょうどいいと、彼の登場と入れ替わりにぺこりと頭を下げてバルコニーの方へ逃げた。
途中で拝借したドリンク(もちろんノンアルコールだ)を飲んで一息つく。
知らない人に囲まれても知ってる人に囲まれても地獄ってキツいなぁ。

「あ、いたいた」
「……レオくん?」
「名前、大丈夫か?なんか顔色悪そうだったから心配してたんだ」
「え、そうかな」

俺の気のせいならいいんだけど!と笑い飛ばすレオくんを見て、どこかほっとする。正直、気を張りすぎて疲れていたのは事実だしあながち間違いでもない、と思う。

「名前が弱ってるなら、おれもせいぜい『騎士』らしく助けようと思ったんだけどな〜。まあいいや。もうすぐ『王子様』が迎えに来るから、逃げるなよ」
「え?どういうこと?」
「その時になればわかる!」

じゃあな〜、とひらひらと手を振ってレオくんが室内へ戻っていく。
だんだん華やかな音楽がフェードアウトして、ピアノの前でレオくんが一礼するのが見えた。

「こんなところにいたんだなあ、お姫様」

聞き慣れた声に振り返る。
その瞬間、まるで世界には二人だけしかいないみたいに……全部がスローモーションに見えた。
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