今度こそ間違わないように


なかなか寝付けないのは遠くで聞こえる人の気配のせいだろうか。それとも、好きな人が近くで自分のために、なにかを作る音がするからだろうか。熱、といっても微熱程度で頭も比較的はっきりしてるからか眠る雰囲気でもない。こっそり後ろ姿を覗いてやろうかと思ったが、そこは自重した。怒らせるとやっかいだし。諦めて肩まで布団を被って眠気がやってくるのを待ってみる。遠くの物音を聞いていると意識がふわりと浮かんで眠りへと誘われる。
心地いい音を聞いていたらいつの間にか眠りについていたようだ。部屋のドアを叩く音で目が覚めた。寝起きの覚醒してない意識で返事をしてたら部屋に宗が入ってきた。その手に今作りたてと言うようなおかゆが盛られていた。

「起こしたかね?」
「うとうとしてたから、気にしないで。」

眠たい意識を覚醒するように目をこすってから、あくびを一つ殺していると宗は椅子を引っ張り出そうとしている姿が見える。完全プライベートの部屋に宗がいる。何時も絶対に入れない空間に入ってるのがなんだか不思議な感じがする。きっとそう思ってしまうのは、風邪のせいだと判断する。いいや、したい。そんなことを考えてたら、ベッドサイドに宗が腰を下ろした。

「どうしたんだい?顔が赤いよ」
「この部屋で宗を見るのが珍しいから。なんか違和感が、あって。」
「そこまで言えるなら問題はなさそうだね。食べれそうかい?」
「あぁ、うん。今起きるよ。」

上体を起こしたところで、宗は膝の上におかゆを乗せたトレイを置いて、蓋を開けた。作りたてを主張するようにほかほかと湯気を立てている。

「リサ、口を開けたまえ。」
「え?自分で食べるよ」
「僕がそうしたいんだ。」

間。
一瞬動揺を出してしまったが宗は気にもせず、小さめの一匙を掬ってこちらに向ける。多分これが平常時ならば、喧嘩腰になっていたのだろうけれども、抵抗する気にもならずそっと口を開くと、まるでガラス細工を触るかのように、匙を扱う。大きな人なのに、細やかな動作を得意としているその指先になぜかときめきを覚えてしまうのは、彼を好きだからなのか、はたまた熱が見せる一瞬の幻か。

「自分のペースで食べたいんだけど。」
「ペースに併せてやるから、安心しろ」
「上からやめろ。」
「きみの声に多少元気が戻ったようだね。」

嬉しいのか定かでないが、口許をにやりとして次の一口を差し出そうとするから、その匙を奪ってたべた。残念ながら、お前は私の親鳥じゃなくて彼氏なんだよな。そんなことを思いながら、脇腹を力なく殴ったら、次の催促かと勘違いして、人から匙を奪って次を掬い差し出した。むかつくが甘んじて受けたら、めちゃくちゃいい顔された。くそ顔面がいい。


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