彼女と過ごせるだけでも充分心は満たされたような気もするのだが、やはり元気な様子でいつものような言い合いをしていないと調子が狂う。
大人しい彼女もそれはそれで愛らしく見えてくるのはきっと恋の病だろうが、僕が惚れたのは作品に対して誇りを持ち細かな所まで僕と言い合えるあの感性だ。それが失われてしまえば彼女への興味が無くなるのではという一抹の不安はあったが、それが全くの杞憂だったことが今回証明されたわけで。
「……あのさぁ、あんた、あの例の写真の子と何かあったワケ?寮にいる時からそうだけど妙にしんみりしてるし、そんなシケたオーラ出されてたら一緒にいるこっちもたまったもんじゃないんだけど」
不機嫌を隠そうともしない声に顔を上げれば、瀬名がその綺麗な顔に不快感を滲ませてこちらを睨んでいた。
行きも帰りも同じ飛行機になるなんて珍しい。
「別に、なんでもないのだよ」
「なんでもないって顔じゃないから言ってんでしょ」
つっけんどんながらも優しさを見せる瀬名に、やや彼女の姿が重なる。彼女も……リサもいつもそうだ。わあわあと文句を言いながらも優しくて、芸術には妥協がなくて、自分の作品に誇りを持っている、僕の愛しいひと。
「……学生時代は幸せだったなと思うのだよ」
「はぁ?じゃあ今は幸せじゃないわけ?」
「そういうわけでもないがね。……瀬名と話していたらリサに会いたくなってきたのだよ」
「何それ、ノロケ?信じらんない、せっかく人が心配してやったのにさぁ?」
プリプリと怒り出した瀬名を意識から外し、彼女の事を考える。次の帰国の時はいつも通りの彼女に会いたい。彼女の占める割合が自分の中でどうしようもなく膨らんでいるのを自覚して、悪い心地はしなかった。願わくば、彼女も同じ気持ちであれば嬉しいのだけれど。