人間だから仕方ないの


「……これは、香織姉さんが?」
「うん、作ってみたんだけど」

久方ぶりの帰国。愛しい姉さんの元へ足を運べば、手作りと思しきクマのぬいぐるみを手渡された。
姉さんの髪と目の色をしたそのクマはまるで姉さんの代わりだよと言わんばかりの愛らしさで僕の方を見てくる。

「姉さんが作ってくれたものなら、連れていかないわけにはいかないね」
「よかった…!あのね、実は」
「ん?まだ何かあるのかね?」

姉さんがそっと差し出したのは、僕の髪と目の色をしたクマのぬいぐるみだった。渡されたものより少しだけ小さなサイズのそのクマは姉さんの手の中で満足そうに微笑んでいる。

「お揃いで作ってみたの。お互いに持ってたら寂しくないかなって」
「……可愛いことをしてくれるね」
「だめ、だった?」
「まさか」

とても嬉しいよ。素直にそう告げれば、花開くように姉さんが笑う。本当は姉さん本人を連れていきたいくらいなのだけど、しばらくはこの子を代わりに愛でることにするよ。なんて優しく頭を撫でれば、姉さんは不思議な表情になった。

「姉さん?」
「なぁに?」
「……何か気に入らなかったのかね?」
「え?そんなことはないんだけど……」

クマを横に置き、もごもごと口篭る姉さんの頬をそっと撫でて額にキスを落とす。

「不満があるなら遠慮なく口にして欲しい。僕は姉さんのことなら何でも知りたいと思うからね」
「……不満ってわけじゃ、ないの。ただ……ちょっと、羨ましいなって」
「羨ましい?」
「自分が作ったクマに嫉妬するなんて可愛くないって分かってるんだけど……」
「……姉さん」

この可愛らしいひとを、どうしてくれようか。
そっと抱き寄せて、唇を奪う。
姉さんが目を見開くのがわかった。

「僕の一番は香織姉さんだよ。それはずっと変わらない。……クマにまで妬いてくれるのは嬉しいけれどね」
「幻滅しない?」
「この位で幻滅するような恋心ではないのだよ。僕は昔からずっとずっと、姉さんを愛してきたからね」
「あ、あい……」

恥ずかしそうに頬を紅色に染める姉さんが愛しくてたまらない。
もう一度口付ければ、今度はそっと瞳を閉じて受け入れてくれる。
幸せとはこういうことを言うのかもしれないな、とぼんやり考えた。


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