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「ええっと…四男くん」
「一松だけど」
「………四男くん、お茶でいい?」


 ずっと四男四男と呼び続けるので名前を覚えてないかと思ったがどうやら違うらしい。今更余所余所しい態度を取られてもどう反応したらいいの。まぁいいけど。名前ちゃんは荷物を置いてから台所に向かおうとした。縺れそうな足で壁伝いに歩く様は正直見ていられない。


「…そんなふらふらでお茶出せるの」
「……う」
「何か無いの…酔い止めとか。とりあえず大人しくしたら」
「あー……あの、あそこの棚に…あります…ごめんなさい…」


 少し咎めるように言ってみたらあーとかうーとか少し唸って涙目になりながら頭を下げた。多分、自分の情けなさで泣きたいんだろう。そういうのは何となく分かる。
 言われた棚を見ると、確かに薬箱の様なクリアケースがあった。それを引き抜こうとした瞬間。


「―――……あ?」


 バサバサ、と何かが複数落ちる音がした。


「は……?」
「っ!?あ、あ……ちょ、待っ…見ないで…!」


 名前ちゃんの必死な声が聴こえた気がしたけど、僕はその床に広がるものに釘付けになっていた。そこにあったのは写真の束。それも見覚えのありすぎる女の子が被写体だった。


「…何でトト子ちゃんの写真がこんなにあるの」
「あ、あああ、あの、これは、違くて…!」


 トト子ちゃんと名前ちゃんは幼馴染だし深い意味は無いのかもと思ったが、露骨に動揺を見せる彼女をじっと見つめる。


「え、あっ、と、ほ、ほら!トト子ちゃんも今やアイドルな訳だしブロマイドやチェキも珍しくないでしょ!」
「全部カメラ目線じゃないし。そもそも私服でしょこれ」
「あう、え、その、だから…ええっと、う、」


 言い訳を並び立てる名前ちゃんはアルコールで赤くなっていた顔をすっかり青褪めさせ、目にいっぱい涙を溜めて。この世の終わりみたいな顔で視線を彷徨わせた。


「いい顔するねぇ、盗撮魔の名前ちゃん」
「…っう、うう、うぇ、」


 魔が差してちょっと突いてみたら彼女はとうとう泣き出した。成人女性の弱みに付け込んで泣かせているこの状況はなかなかクるものがある。このままもっと貶めるのもアリかとは思ったが、それよりも普通に理由が気になっているからやめた。




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