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「で、何でトト子ちゃん盗撮してんの。陥れようとでもしてるなら容赦しないけど」


 落ち着くまで少し待ってからそう聞くと、名前ちゃんはえぐえぐしゃくり上げながらも頭を振った。まぁトト子ちゃんの写し方からして特に悪意は感じなかったし、純粋にトト子ちゃんの可愛さを記録に残そうとしている感じというか。犯罪には違いないけど。


「売りさばいて金儲けとか?」


 これも否定。


「…じゃあ、まさかトト子ちゃんの事が」


 可能性の一つとして考えられるかな、ぐらいに思ったその言葉に名前ちゃんはばっと顔を上げた。


「……好き、なの。友達としてじゃない方で。ラブの方で」


 半ばやけになってそう吐露する。まさか幼馴染の女の子が幼馴染の女の子にレズってるとは。


「…へー、そうなんだ」
「…………」
「…………」
「…それだけ?」


 意外そうに声を漏らせば名前ちゃんはぱちぱちと瞬きをする。拍子抜けしました、と言いたげな顔。


「…ああそっか、盗撮はもうやめときなよ」
「え?…通報とか、トト子ちゃんにバラしたりとかしないの…?」
「どっちもめんどくさい」
「えー…」


 納得行ってない様で肩を落として首を傾げた。彼女からしたら他人に知られたら人生詰むレベルの秘密だったらしい。僕達兄弟からしたら笑い話で済む程度なんだけど。


「…その、女が女を好きってもっと軽蔑したりするもんじゃ…?」
「蔑んで欲しいならしてあげるけど。あ、でも僕どっちかと言うと逆だから」
「ち、違うから!何さらっとそういう事言ってるの!?」
「レズって言っても自立して社会回してる真人間を蔑む資格なんて僕みたいなクズには無いよ」
「……そ、そんなもん…?」


 まぁ、名前ちゃんがブスの癖にトト子ちゃんを好きな身の程知らずだったらもっと口汚く罵ってたかもしれない。可愛い子が可愛い子を好きっていうなら特に嫌悪感は無い。僕は見ないけどレズAVとかあるぐらいだし。その事も言ってみれば彼女はまた複雑な表情になる。


「…男の人の方が抵抗無いのかぁ…」
「おそ松兄さん辺りは偶に見てるし。レズAV」
「そ、その情報は特に必要としてなかったよ…」
「まぁあの人結構何でもいけるから」
「…兄弟揃って元気そうだね」


 疎遠になっていた幼馴染みの近況に感慨深い顔でもするのかと思えば、苦い顔で床を睨み付けていた。


「…そういや母さんとはまだ付き合いあったんだね」
「あー…まぁ、ご近所さんだし…」
「そのご近所さんの息子ですけど」
「…生活リズムの違いで会わなかったんじゃないかな…私朝早いから」
「こっちは六人全員ニートだしね」
「ほんとに全員ニートなんだ…」


 名前ちゃんの顔が分かりやすく引き攣る。真っ当なOLからしたらニートの男が一世帯に六人は有り得ないんだろう。


「言ったでしょ。レズってだけの名前ちゃんを罵る資格は無いよ」
「んー…レズってだけ、で片付けられるのもそれはそれで複雑」
「めんどくさ」
「それも辛いなぁ…」


 辛いとか言いながらも、憑き物が落ちたみたいで。さっきより気の抜けたふにゃふにゃした笑顔だった。


「……あのね、四男くん…いや、一松くん。ちょっと話聞いて貰ってもいいかな。酔いどっか行っちゃったし今度こそお茶入れられるから」
「…別に、どうせ暇だしいいよ」


 呼び方が変わった。どうやら壁作るのはやめたらしい。




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