No.12




それからしばらくして、先に偵察に行った3人が戻り、キャプテンとペンギンに報告していた。
ログは2日で溜まるらしい。すぐにクルー全員が集められ、ペンギンの口から船番が伝えられて、それぞれ解散した。

お菓子が目的のベポは、市場へいくキャスケットと行き先が被るため真っ先に荷物持ちに指名されていた。
先に島に降り立ったベポが何回も振り返ってこちらに手を振るのに、笑いながら振り返しているとペンギンがやってきた。


「ハル。じゃあ、俺らも行くか」

「はい。」

「待て、ペンギン。」


ペンギンに手を取ってもらって船を下りようとすると、キャプテンが顔を覗かせる。


「ペンギン、こいつの買い物が一通り終わったら最後に家具屋に寄ってベッドとクローゼット買って来い。」

「え、ああ。はい、分かりました。どの部屋にするか決めたんですか。」

「俺の隣の部屋だ。なんだかんだで一番安全だろう。」

「……んー。一番危険だったりして。」

「ククッ。馬鹿言うな。じゃあ、お前の部屋の隣にしてやろうか。」

「俺はどっちでもいいですけどね。まぁ船長室の隣の方が広いし都合いいでしょう。」

「デザインは、本人に好きなもの選ばせろ。丈夫なやつだ。安物はやめろよ。」


2人が何の話をしているか分からずボーっと突っ立って待っていると、2人がこちらを見た。


「ハル、お前の部屋の話だぞ?」

「え?ええ!そうだったんですか?え、部屋……頂けるんですか。」

「ああ、何時までも医務室のベッドを使われるといざという時不便だからな。」

「あ……ですよね。」

「ベッドとクローゼット以外で必要なものがあったら遠慮なくペンギンに言えよ。」

「……。」

「どうした?」

「個室……なんですか?」

「当たり前だ。いくらなんでも男と同室にはできないだろ。」


掃除をしていてこの潜水艦の部屋の位置は把握したが、確かこの船で個室を持っているのは船長とペンギンとベポだけだ。
それ以外のクルーは2人〜6人の共同部屋で生活している。


「なんだか申し訳ないです。一番下っ端なのに。」

「お前を下っ端グループの部屋に突っ込んだりしたら、同室にされた奴らも俺らも安眠できなくなるだろ」

「お前は気にせず、自分の買い物の事だけ考えてろ。」

「……はい。」

「じゃあ、ペンギン、頼んだぞ。」

「了解しました。いこう、ハル。」


今度こそ、ペンギンさんに手を取られて船から白い砂浜に降り立った。
街へ向かって歩きながら、先ほどの会話の中で疑問に思った事を聞いてみた。


「そういえば、ベポは共同部屋じゃないんですか?」

「共同部屋の寝床は、ハンモックだ。あいつの体でハンモックは無理だろう?」


寂しがりのベポが一人部屋なのが不思議だったが、その謎はいとも簡単に解決した。

きっとベポがハンモックに乗ったら床についちゃうな。と思いながらクスクス笑うとペンギンもニコリと笑った。
不意打ちの笑顔はかっこ良くて、仄かに頬が熱くなるのを感じながら、やっぱりこの人はキャプテンに似ているところがあると思った。

街に着いて、先ず予め言われたとおり服屋に直行した。

ペンギンに、とりあえず1着決めて着替えておけと言われ、店に入る時ショウウィンドウに見えた白いシフォンのワンピースをペンギンに見せる。
彼は値札も確認せず「ああ、似合うんじゃないか?」と言い、さっさと店員に品物を持ってこさせ私を試着室に突っ込んだ。

着替えて出てきた時にはその服の会計は済まされていて、サササと寄ってきた店員によって首元タグが切り取られて、私の着ていたつなぎは袋に入れられた。


「さあ、ゆっくり選べ。」


とペンギンは言い、自分は店内のソファーに座って店員のお姉さんにお茶を出してもらっていた。
ペンギンが腰を落ち着けてしまったので、店内を回る。

とりあえず着まわしできそうなTシャツ・キャミソール・カットソーを色違いでそれぞれ数枚ずつ。
スカートと動きやすそうなパンツを2.3本、ワンピースとカーディガンを1枚ずつ選んでペンギンの所へ行った。


「あの……ペンギンさん、なんだか沢山になってしまいました。」

「どれだ。」

「あそこに重ねてある服です。」

「……あれと?」

「いや、あれ……です。」

「いや、お前、絶対足りないだろ。もっと真剣に買えよ。」

「ええ!真剣て……。」


ペンギンの言葉に驚き固まっていると、「ったく……」と言いながら立ち上がり、店長のお姉さんを引き連れて服を選び始めてしまった。
店長さんと、私を見ながら「この形なら無地より花柄の方が……」とか話しているのが聞こえる。
私本人そっちのけで、どんどんお店のカウンターに服が重ねられていった。

たまに腕をつかまれ引き寄せられたかと思うと、ハンガーごと洋服が体に当てられ「これはなしだ」「これは買う」と、スピーディに私の洋服が決められていく。
ペンギンが「こんなもんだろ」とようやく満足した時には、買い物1件目にして到底2人では持って帰れる量ではなくなっていた。

彼はお金を払い、店員さんに「あとで人を寄越す」と伝え、電伝虫で誰かに取りに来るよう伝えていた。
店を出てからペンギンにお礼を言った。


「いや、構わないが、お前は物欲が薄いのか?」

「え?そんなことないと思いますけど、一度にこんなに沢山買い物をしたことがないんです。」

「そうか。しかし、今はお前の持っているものはほぼゼロなんだから島に置いてきた量を取り返すくらい買っとけよ。」

「で……でも、今選んでくださった服、絶対元々私が持っていた量より多いと思います。」

「ふっ。そりゃ結構なこった。それを聞けば船長も満足だろう。……ああ、ここはお前ひとりで行け。ちゃんと買えよ。」


ランジェリーショップの前で立ち止まったペンギンは釘を指すように言いながら、私の手に財布からベリーの束を抜き取ってのせ、自分は隣のカフェへ入っていってしまった。
……ていうか、下着買うだけでこの大金、どうしろっていうの……。
どんだけ働いたら今日のお金返せるんだろう……。
少し気が遠くなりながらランジェリーショップに足を向けた。

初めて値段を気にせず下着を買った。しかも10セットも!
これだけ買えばしばらくは下着に困ることはない。
あとは、サニタリー物や靴下やタイツ、パジャマやヨガパンツ等を買って店を出た。

オープンカフェで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいたペンギンに声を掛け、ドラッグストアやコスメショップ、雑貨屋等をまわって生活道具や化粧品類をそろえた。
ペンギンは、行く先々で増える荷物を、当然のように持ってくれた。
私の荷物なんだから私が持つと言っても一つも私に持たせてくれないのだ。


「ペンギンさん、それ、私持ちますよ!」

「いや、いい。」

「よくないです!持たせて下さい!!」

「お前も、しつこい女だな。あ、あの店で昼飯食うぞ。」

「あっ!ちょっとまってください!!もーーー!」


長い足でサクサクとレストランに向かうペンギンの後を小走りで追いかけて行った。


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