No.15
みんなが戻ってきたので、やっと安心して眠ろうと新しい自室へ向かう。
船長室の隣の部屋なので、当然キャプテンと一緒に向かっていた。
自分の部屋へ向かって通路を曲がると何故か私の部屋から何人ものクルーが出てくる。
ペンギンが私の頭に手を置いてニッと笑って去っていった。
キャスケットも擦れ違い様にヒヒヒッと悪戯っぽく笑い私の肩をポンと叩いていく。
な、なに?
……というか、女の子の部屋に男が集団で勝手に入るってどうなのよ。
まぁ、特別見られて困るものはないが……。
複雑な気持ちでキャプテンを見ると私の表情に肩を竦めて見せた。
「みんな、どうしたんでしょう。」
「ああ、お前に土産があってな。少しばかりでかいから運んでもらったんだ。」
そういえば、すごく大きくて重そうな荷物と、それよりほんの少し小さい荷物を力持ちのクルーが4・5人がかりで船に運び入れていた。
ペンギンがお楽しみといっていたが……まさかあれがお土産?!
「お土産って、まさか、あのすごく大きい荷物のことですか??」
「ああ、察しがいいな。」
「……え?なんですか?みんな悪戯っぽく笑ってるしちょっと怖い。」
「まぁ、いいから見てみろ。」
そういって、キャプテンは私の部屋の扉を開け、掌を上下に振って私を招いた。
恐る恐る自室を覗き込んだ私は思わず息を飲んだ。
「キャプテン……これ……。」
「ああ、どうやらお前とは気が合いそうだ。」
ニヤリと笑ったキャプテンが、背中をトンと叩き私を部屋へ押し入れた。
びっくりしすぎてヨロヨロと近寄ったそこには、昼間ペンギンと訪れた家具屋にあった、キャプテンの帽子の模様でベポの触り心地のあのソファーがあった。
なんで、これがここに?
確かこれは、何かの動物毛皮が張ってあってすごく高かったはずなのだ。
「なんで……このソファー……。」
「酒場に行く途中にあの家具屋があってな。俺も一目見て気に入った。そしたらペンギンからハルも気に入っていたと聞いた。」
「キャプテンがお気に召したならキャプテンが使ってください!」
「なんだ、気に入らないのか?」
「まさか!そうじゃないんですけど、このソファーはすごく好きなんですけど、でもキャプテンも気に入られたのならキャプテンの部屋に……。」
「置くさ。あたりまえだろ?」
「え?」
「当然、俺の部屋にも置く。ただし俺の部屋には既に馬鹿でかいソファーが2台もあるからな。それと同じソファーの一人用を置いた。」
このソファーにまた会えてうれしい。でもこんなに高いもの……。
うれしいけど、困って言葉を失っていると、キャプテンが不機嫌そうに口を開いた。
「そんなに貰うのが気に病むってんなら、もう、お前になんかやらねーよ。」
「え?」
「そのソファーは俺のだ。この部屋に置くのは、俺の部屋に入らねーからだ。ただお前には特別にこのソファーに座ることを許可してやる。いいな。」
「……はい。」
「それ、俺のだからな。汚したり他のやつ気安く座らせたりすんなよ。」
「……はい。」
「分かればいい。」
キャプテンが「じゃあ、早く寝ろよ」と部屋を出ようとしたので、彼のパーカーの裾を思わず掴んでしまった。
キャプテンが動きを止め、少し驚いたような顔でこちらを見た。
「なんだ?」
「あの……嬉しいんです……すごく。でも私慣れてなくて。せっかく買っていただいたのに失礼な態度をとってしまってごめんなさい。」
「そんな顔すんな。わかってるから。」
裾を掴んだまま眉を下げて謝る私の髪を撫でながら、キャプテンも困ったような表情になった。
「ただ、……そうだな。がめつい女は好かないが、お前はもう少し奢られ慣れたほうがいいな。男に金を使わせて素直に喜ぶのもいい女の条件だ。」
「そういう、もんですか。」
「ふっ。まぁ、追々慣れていけばいい。もう寝ろ。休めといっても明日も早く起きるつもりなんだろ?」
「はい。」
口角を上げて私の髪をポンポンと叩くように撫で、キャプテンは部屋を出て行った。
フワフワのソファーに近寄って、それを撫でた。
心の中にじんわり温かいものを注ぎ込まれたような感じがする。
ベッドから掛け布団を引っ張り出し、電気を消してソファーの上に横になった。
スプリングは堅すぎず柔らかすぎず横たえた体を支え、フワフワと柔らかい毛皮が私の体をやさしく包み込んでくれた。
すぐに訪れた気だるい眠気に身を委ねながら「おやすみなさい。キャプテン。」と呟いてゆっくりと瞼を閉じた。
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