No.22




−コンコン

中から返事はない。
それは彼が起きていてもそうなので構わずドアノブを回す。


「キャプテン、おはようございます。お食事お持ちしましたよ」


部屋に入ると部屋の主はまだベッドの中のようだ。
ソファーテーブルにトレーをのせ、丸い窓を覆うように掛かるカーテンを引いて光を入れる。
まだ天辺まで上りきらない太陽は、朝日の強さを損なわず、容赦なくキャプテンの顔の上に光を注いだ。


「……ん」

「キャプテン、お目覚めですか?」

「……ハル?」


眉を顰めて光から逃れるように枕に顔を埋めたキャプテンに声を掛ければ、枕からこちらに顔を向け薄く目を開けた。
寝ぼけ眼のキャプテンが少し可愛くて微笑みながら再度声を掛けた。


「キャプテン?そろそろ起きてください。」

「……ハル……」


いつもよりさらに低く掠れた声で私の名前を呼び、片手をこちらに差し出してきた。
???
なんの手か分からなかったが、握手をするように私の手を重ねてみた。
手を引いて起こせということかと思ったのに、ぐっと勢い良く手が引かれ、逆に私の上半身がキャプテンのベッドに乗った。


「わ!え?わぁっごめんなさい!!」


慌ててベッドから降りようと体を動かすと腰を引かれ、ベッドに完全に乗り上げてしまった。


「キャ……キャプテン??」

「……まだ眠い。」

「そう言わず起きてください〜。なんで私まで……。」

「……少し黙れ。お前も寝ろ。」


そんな事言われても、心臓の音がキャプテンに聞こえてしまいそうなくらい煩い。
キャプテンは、片手は私の腰に回したまま、もう片手で私の髪を撫で、キャプテンの頬が私のおでこにくっついている。
私の顔はキャプテンの肩に埋められている状態で、顔も熱いし、なんだか息苦しい。
寝ろったって……寝られるわけない……。


「キャプテンて……ベポともこうやって一緒に寝るんですか?」

「馬鹿言え。あいつがベッドに乗ったら俺の居場所なくなるだろうが。歯軋りすげぇし。」


眠いと言った割には私の問いにしっかりお返事をくれるキャプテンを見上げようと少し動くと、髪を撫でていた手で頭を押さえられ、耳の近くの頬にキスを落とされた。
もう駄目だ。心臓壊れる……。


「……ベポにもキスを……?」

「ククッ。してやってもいいが、あいつも大人の男だからなぁ……。」


そう言って私の頬を撫で、また耳にキャプテンの息を感じ、たまらずに無理矢理上体を起こした。


「もう、いい加減からかわないで起きてください!!」


私の頬を触っていたキャプテンの手を掴んでそう言うと、掴んだ手を握り返され、キャプテンも上体を起こした。


「からかってなんかねーよ。」


キャプテンに腕をつかまれ、私を見つめるキャプテンの目は寝起きのせいか酷く色っぽく見えた。
顔が熱い……頭の天辺から湯気が出そう。心臓も自分のものじゃないみたいに大きく動いているのが分かる。
キャプテンの目を見ていられなくて俯き、やっとのことで声を振り絞った。


「ホ……ットサンド、作ってきたんです……。」

「……ああ。」


パッと私の腕を放し、ベッドから降りて船長室内のシャワールームにキャプテンが向かった。
やっと開放されて、ベッドからヨロヨロと降り、ほう、と息を吐く。
戻ってきたキャプテンにトレーに乗せていた新聞とホットサンドとコーヒーを差し出した。

新聞をひらき、ぬるくなってしまっただろうコーヒーを一口飲みながらキャプテンが口を開く。


「ハル。午後、出かけるか。」

「え?でも私、船の仕事が……。」


思わずそういうと、キャプテンはギロリとこちらを一瞥してから席を立ち、書類の散らばった大きなデスクの方へ歩いて行った。
そして、小電伝虫を手に取ると、誰かと話し出した。


「……俺だ。ああ、さっき起きた。今日、夜バーベキューで宴をするから午後からクルーに用意をさせろ。
ああ、ハルが出かける用事があるらしい。……いやいい。俺が行く。ああ、頼んだ。」


目を瞑ったままの電伝虫の横に放リ投げるように小電伝虫を置き、ソファーへ戻ってきた。


「これでいい。昼飯終わったら出かける準備しろよ。」

「……今の、ペンギンさんですか?」

「ああ。」

「あの小電伝虫、ペンギンさん直通だったんですね……。」

「お互い便利だからな。」

「……バーベキューって……。」

「うちのクルーが唯一自分たちで出来る宴のメニューだ。お前も楽しみにしてろ?」


新聞から目を上げて私に笑いかけたキャプテンは、すっかり冷めたホットサンドにかじりついた。


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