No.24
結局キャプテンの手を振り解くことができずに、手を繋いだまま歩く。
目的のない散歩のはずなのに、キャプテンは躊躇なく一件の店に入っていった。
そこはシルバーやライターなどが置いてある男性物のアクセサリーショップ。
重そうなチェーンのネックレスやスカルの指輪など、ワイルドな男性が好みそうなものばかりだ。
キャプテンは、カウンターに立っていた肩から指先までドラゴンの刺青が踊っている浅黒い店員に話しかけた。
「よお。頼んだものはできているか。」
「はい、今朝丁度出来上がったところですよ。ご確認いただけますか。」
見た目からは想像できないほど丁寧に答えた店員はカウンターの中から細長い箱を取り出しキャプテンに中身を見せる。
キャプテンが何かアクセサリーを頼んだのだと理解した。
特注なんて流石キャプテンはお洒落だ。
感心しながら店の中を興味深く見渡す。
自分じゃ絶対に入らないような店内は見たことのない雰囲気で単純に面白い。
ガラスケースに入っていたゴールドのピアスがキャプテンがしているピアスに少し似ていて目に留まった。
キャプテンのは少し艶があるが、ケースの中の物はマットな仕上げになっていて、雰囲気が柔らかい。
「それは、お前にはゴツ過ぎるだろ。」
「わっ!」
いつの間にか、私の斜め後ろに立ってガラスケースを覗いていたキャプテンに急に話しかけられ思わず大きな声を出してしまった。
「いえ。これは、自分でってわけじゃ……ホールも空いてないですし。」
「そうか。したいなら空けてやる。」
「いえ!怖いのでいいです。」
「ククッ。遠慮するな。うまいぞ?俺は。」
「遠慮させてください……。」
「ククク。」
「バチンッ」と言いながら親指と人差し指を合わせるキャプテンに思わず青ざめた。
私の様子にひどく楽しそうにしながら「行くぞ」とキャプテンが店を出たので、慌てて続く。
その後本屋に寄って、キャプテンは辞書のような分厚さの医学書を買い、私は編み物の本と小説の文庫を買ってもらった。
花屋の前にハーブの苗が並んでいて、欲しいけど日の当たらない潜水艦じゃ長生きはさせられなそうだ。と思っていると
キャプテンが、それはナントカの薬の調合に使えるからキッチンで育てとけ。と苗を3つ買ってくれた。
「お前と歩いてると平和だな。」
一休みに入ったオープンカフェで注文を終えると、道を眺めながらキャプテンが言った。
意味がいまいち分からず返答をしかねていると、こちらを見てクスリと笑ったキャプテンが続けた。
「他の奴らと歩くと、すぐ絡まれる。いちいち足を止めて面倒なんだよ。」
「ああ。そういう意味で平和……。なんで私が一緒だと絡まれないんですか?」
「さあ。気づかないんじゃないか?お前みたいな女を連れた男が賞金首だと思わないのかもな。ゆっくり歩きたいときはお前を連れて行くことにするか。」
「でも、もし気づかれたら、私キャプテンを守れません。」
「ククッ。お前にそんな事、期待しちゃいねぇよ。ただ自分が攫われないようにだけ気をつけとけ。」
当然と言うようにキャプテンが返す。
情けないなぁ……私も一応クルーなのに戦う術を持たなくて本当にいいのだろうか。
無力な自分に小さくため息を吐くと、キャプテンが小さな細長い箱を私に差し出した。
「お前サイズのつなぎを作ろうかと思ってたんだが、気が変わってこっちにした。」
「……なんですか?これ」
開けてみろと言うように、顎で箱を指し示したので、丁寧な梱包を解き箱を開けた。
そこに入っていたのは、華奢な細いチェーンの先に直径1cm位のハートの海賊団のジョリーロジャーと小さなハート型のチャームが付いている可愛いネックレスだった。
「わ……これ……。」
「さっきの店で作ってもらった。それは2つ共うちのシンボル。ユニフォームの代わりだ。お前がハートのクルーである限り必ず身に着けていろ。」
「……はいっ!ありがとうございます。」
早速着けて、テーブルの上のステンレスのナプキンケースを持ち上げて首元を見る。
ステンレスに歪んで映った私の首元には、可愛いジョリーロジャーとハートが鎖骨の上で仲良く揺れていた。
嬉しくなって笑顔でキャプテンを見ると、彼も片手で頬杖を付きながら口角を上げてこちらを見ていた。
「可愛い。嬉しいです。キャプテン。」
「ああ。」
「あのお店、男性用のアクセサリーだけかと思ったらこういうのもあるんですね。」
「まあ、仕事だからな。頼めば何でも作るさ。下手なジュエリーショップに頼むより早く出来る。」
「……失礼いたします。」
目の前にダブルのエスプレッソとカフェラテを置いた店員が少し訝しげに私を見た。
ナプキンケースを顔の前に掲げたままだった事に気づき、慌ててテーブルに戻すと、
目の前のキャプテンが俯き頬杖の手で目元を隠して「くっくっく」と笑った。
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