No.38




食事をしながら医学書に時折目をやるキャプテンを、ぼんやりと眺め終わるのを待つ。

キャプテンの濡れた襟足から雫が落ちてTシャツの首元がじわじわと濡れているのが目に入った。
立ち上がって彼の後ろに回り、首に掛かったバスタオルで食事に水滴が飛ばないようポンポンと首筋と髪の水気を取っていく。
キャプテンは少し驚いたようで顎を上げて背後の私を見上げたが、ニッと口角を上げてまた食事に戻った。

そのうち食事も終わったようで、本もテーブルの上で閉じられ、ソファーの背もたれに体を預けたキャプテンの髪を拭く私だけが動いていた。

どうしよう……食事が終わったならドライヤーつかってもいいかな……。
気持ちよさそうに目を瞑り頭を預けるキャプテンに声を掛け損ねていると、キャプテンが目を閉じたまま口を開いた。


「なぁ、ハル。」

「はい?」

「そういえば、お前、俺らが何を目指しているのか知ってたか?」

「はい。以前他のクルーから聞きました。新世界の先の最果ての地。……ですよね。」

「ああ。」

「……。」

「ハル。」

「はい。」

「お前も……そこまで俺に付き合ってくれるか。」


キャプテンが目を開ける。彼の真剣な眼差しに髪を拭く手を止めた。


「今までは、ペンギンの操縦で嵐や敵船、海王類を出来る限り避けながら、なんとかここまで進んできた。」

「……はい。」

「この先は、何が起こるかわからない。お前を危険に晒すこともあるかもしれない。」

「ええ。」

「それでも、付いてきてくれるか。」


真剣な彼の目をしばらく見つめ返し、微笑みかけた。


「連れて行ってくださるのなら。」


キャプテンが背もたれから体を起こし、体を捻って此方を向く。


「いいのか?ここまま進めばそのうちお前をあの島へ戻してやることはできなくなる。」

「戦闘も出来ず逃げ足も遅い私を、それでも、連れてってくださるのですか?」


キャプテンの問いに、問いで返す。
キャプテンがじっと私を見つめる。

目を離さないまま、私の腕を引いた。
ぐっと下に引っ張られ私の肩にキャプテンの頭が当たり、ソファーの背もたれを挟んで抱きしめられた。


「ああ、連れて行ってやる。」

「お前に見せてやる。ラフテルの地を。」

「俺が……海賊王になる瞬間を。」


「付いて来い。ハル。」


抱きしめられても、なぜか恥ずかしくならなかった。
キャプテンの低く強い声がお腹に響き、神聖な気持ちですらあった。


「……はい。キャプテン。」

そっとキャプテンの腕に手を添えると、一層強く抱きしめられた。


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