No.40




「そういえば、お前の弟は海軍に入ったんだったな。うっかりしていた。」


ソファーに座っていたキャプテンが長い足を組み直した。

ここは船長室。
あの後、ペンギンさんが電伝虫を使い、キャプテンを含め島に出ているクルー全員を船に戻した。
現在この船は沢山のクルー達で厳戒態勢が敷かれている。
キャプテンと向かい合い、私の隣に座ったペンギンが、ハァ……とため息を吐いた。


「俺は、知りませんでしたよ。ハルの家族が海軍だなんて。……てっきり全員死んでるものかと……。」

「す、すみません。たぶん、ベポにしか言ってないので……。」

「ああ、俺はベポに聞いた。」

「私が14の時…彼は12歳で海軍に入ったんです。」

「……なるほど。それであの若さで中佐か。」


ペンギンが、納得したような表情を見せた。


「ペンギン、ログはあとどれくらいで溜まる?」

「……3日なので、明後日の朝には……。」

「チッ。それまで動けねぇ訳か。面倒だな。」

「とりあえず、船の見張りを強化して明後日の朝まで、なんとかやり過ごすしかないですね。」

「……そうだな。」


冷静に話をやり取りする2人を前に私は言葉を発せないでいた。

ヴィスナー……どうか、この船を見つけないで。
この人たちを傷つけないで。

キャプテン……どうか、弟を……ヴィスナーを……傷つけないで。

私は、今初めてこの船に乗った自分を呪った。
私が何の考えもなしに安易に海賊団なんて入るから……。
こんなに大切になってしまった人たちと、世界でたった一人の弟が敵対しているなんて。
気づかなかったわけじゃない。

広い海で出会うことなどないと……甘く見ていた私が愚かだったんだ。

膝の上で拳を握り、ぎゅっと目を瞑ってうつむいた。


−バタンッ!!!


「キャプテン!!!」


ベポが、ノックもなしにドアを勢い良く開けた。


「なんだ、ベポ。」


部屋の空気が張り詰める。


「……海軍が……来たよ。」


ああ、神様。


「迎え撃て。」


貴方はなんて残酷なの。


「ハル。」

「…………はい。」


ソファーから立ち上がれない私の前にキャプテンがしゃがむ。
小刻みに震える私の手を、両手で握った。


「お前は……出てくるなよ。」


握られた手から、キャプテンの顔へ視線を向けた。

キャプテンの深い青色の瞳が強く私の瞳を捉え、彼はもう一度ぐっと私の手を強く握ってから立ち上がる。
そして壁の刀掛けから長い刀を手に取り、とっくに船長室を出て行ったベポとペンギンの後を追った。


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