No.43
あったかい……。
とても暖かくて心地良いものに包まれながら、眠りから覚めた。
目を閉じたまま、昨日の事を思う。
今のこの眠りが幸せで、なんだか昨日の記憶が夢だったように感じる。
それとも……これが、夢なのだろうか。
心地良いものの正体を見るために、うっすらと目を開ける。
一番に視界に入ってきたのは見慣れた刺青。
ああ……キャプテンの腕だ。
仰向けの状態から横に体を動かすと、彼の顔が視界に入った。
キャプテン、ずっとこうやっててくれたのかな……。
「起きたか。」
瞑っていたキャプテンの瞳が薄く開く。
「頭痛とか……吐き気とかないか?」
キャプテンに問われ、少し考えて軽く首を振った。
なんだか頭の芯に靄が掛かっているような感じがするけど、痛みや吐き気はない。
ぼんやりとキャプテンの顔を見つめる。
「……薬がまだ少し効いているみたいだな。」
キャプテンが私の腰に回していた手で頭を撫でる。
「今日は、何もせず休んでいろ。」
言われて気づく。
「……あ……ごはん……。」
「……腹減ったのか?」
そうではない。小さく首を振る。
「……もう7時だ。あいつらで用意をしている。気にするな。」
そっか……。寝坊しちゃったのか。
今からでも起きて、キッチンを手伝おうか。
ああ、でも、頭がなんだかぼんやりして……。
しかも、撫でてくれるキャプテンの手が気持ち良い……今日は、甘えてしまおうかな……。
この状況が恥ずかしいという気も起きずに、温もりを求めて子供のようにキャプテンの胸に頭を付けると、キャプテンは私の首が苦しくないように体を少しずらして受け入れてくれた。
もう少しだけ……。
ゆっくりと、浅く長い呼吸を繰り返して再び襲う眠気の波に身を委ねる。
−コンコン
もう少しで眠りに付くという所でノックの音が聞こえ、意識が浮上した。
「失礼します。」
「……なんだ。ペンギン。」
キャプテンの胸に頭をつけているので、キャプテンの声が直接頭に響く。
ペンギンさんか。
キャプテンの胸の中でうっすら目を開ける。
「船の外に……ハルの弟が来てます。……ハルに会わせろと。」
ヴィスナーが?!
ペンギンの言葉に急に夢から覚めた気がして身じろぐ。
私を抱きしめていたキャプテンの腕に力がこもり、起き上がることは叶わなかった。
「帰るように伝えろ。ハルは寝ている。」
「伝えましたが、5分で良いから話をさせろと。あいつ一人で来ています。」
キャプテンが私の頭を抱きしめてから、体を起こした。
「俺が行く。」
ベッドから降りようとするキャプテンのパーカーの裾を掴んだ。
キャプテンが、優しい目を此方に向ける。
「ハル……すぐ戻る。」
「キャプテン……私……行きます。」
私の顔を覗き込み、あやすように話すキャプテンに首を振って体を起こした。
「ハル、駄目だ。お前は寝ていろ。」
「……大丈夫。」
私の肩に両手を置き、ベッドから出させまいとするキャプテンを見つめる。
「キャプテン……大丈夫。」
肩に乗るキャプテンの手をはずし、ベッドから降りる。
靴を履き、ペンギンさんの立つドアに向かおうとすると、ベッドに座るキャプテンに腕を掴まれた。
少し驚いてキャプテンの方を振り返る。
キャプテン……そんな顔しないで下さい。
……そんな、泣きそうな顔は
誰より強い貴方には似合わない。
いつもみたいに、意地悪そうに……
笑って、ください。
掴まれていない方の手で、キャプテンの頬に触れ、微笑んだ。
ゆっくりと私の腕を掴んだキャプテンの手が緩められ、その手は私の腕から肘、手の甲までを撫で、最後に指先を軽く握って離れた。
ベッドに座ったままのキャプテンにもう一度微笑んで、ペンギンと一緒に船長室を出た。
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