No.48-side:LAW




枕を抱えて、ベッドに横になっていた俺は、浅い眠りから目を覚ました。

サイドテーブルの時計に目をやり、苦々しい気分になって目を逸らす。
さっき寝てからまだ1時間も経ってねぇじゃねぇか。
昨夜ベッドに入ってから、浅く短い睡眠ばかりを何度も繰り返している。

身体も疲れていると思うし、頭も疲労困憊の状態なのに、全然深く眠れない。
……今日は……駄目だな。
ハァ……とため息を吐いて、ごろりと仰向けになる。

ハルが起こしに来たら、あいつ捕まえて少し眠ろう。
あいつが居れば少しはまともに眠れそうな気がする。
8時……あいつが来るまであと2・3時間てとこか。

……長いな……。

再度ため息を吐く。


−コンコン

ノックの音に目を開いた。


「船長、おはようございます。」


ノックの後に聞こえた声が期待したものではなくて、落胆する。
少し苛つきながら、暗闇の向こうの幼馴染に返事をした。


「……なんだ。ペンギン。」

「船長、ログが溜まりました。出航の指示を。」

「……そうか。じゃあ、準備出来次第出航しろ。」

「了解。」

「そうだ、ペンギン。」


ドアを閉めようとしたペンギンに声を掛ける。
俺の声で、ペンギンが動きを止めたのがわかった。


「ハルはどうしてる?」

「……ハルは、まだ起きていないようですが。」

「……起きてない?」

「はい……。少なくともまだキッチンには来てませんね。」


ペンギンと話しながら、嫌な胸騒ぎを感じて跳ね起きた。
ドアの所に立っているペンギンを突き飛ばし廊下に出る。

ノックもせずに隣の部屋のドアを乱暴に開ければ、ベッドにも、あいつのお気に入りのソファーにも、ハルの姿はなかった。


「……いねえじゃねえか……。」


俺の剣幕に当てられた様子のペンギンが部屋の中を覗いてくる。


「……船長?」

「いねえじゃねえかよ!!」


声を荒げて叫び、毛皮のソファーを力任せに蹴りつける。
鈍い音を立てて動いたソファーの上に、キラリと光るものが見えた。
近づいてみると、俺があいつに誂えたネックレスが毛皮に埋もれるように置かれていた。


「……お前がハートのクルーである限り必ず身に着けていろ。」

「……はいっ!ありがとうございます。」



ハル……お前……。
小さなペンダントトップを握り締め、思わずその場に崩れるように跪いた。


「キャプテン!キャプテン!!!」


ベポが騒がしく入ってきた。


「ベポ……どうした。」


ソファーの前に跪いて動かない俺の代わりにペンギンがベポに声を掛ける。


「これが……キッチンの引き出しにはいってた……。」

「なんだこれ……レシピ?」

「……これ……全部俺たちでも作れるような簡単なレシピだよ……。ねえ、ハル……出て行っちゃったの?戻ってこないの?」


俺の後ろでベポがへたり込んで、膝を付いた。


「やだよ……ハルのご飯が食べたい……ハルに会いたいよう……また明日って言ったのに……ハル……ハル……わぁぁぁあああん……!」


ついに大きな目からボタボタと音を立てて涙を落とし始めた。
ペンギンが、悲痛な表情でベポの大きな背中をさする。

ゆっくりと振り向き、わあわあと声を上げ、泣いているベポを見た。
板張りの床には、ボトボト落ちたベポの涙で小さな水溜りが出来ていた。


「……ペンギン。」


ペンギンが、ベポから俺に視線を向ける。


「出航は保留だ。この島に大切な忘れ物をした。」


ベポが涙は落としながらも、声を上げるのを止め、俺を見つめた。


「回収次第、出航だ。準備をしておけ。」

「了解。船長。」


にやりと笑ったペンギンに、同じように笑い返す。


「あ……アイアイ!キャプテン!!」


遅れて返事をしたベポが慌てて立ち上がる。
手の中のネックレスを強く握り締め、俺は部屋を飛び出した。


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